FC2ブログ
このサイトは管理人「霧也」によって経営されるオリジナルショタオンリーイラスト漫画サイトです。
■お知らせ | ■同人情報(R-18) | □漫画 | □イラスト | □キャラクター | □TOPイラスト | ◇ゲストコーナー | ☆ゲーム第一弾 | ☆ゲーム第二弾 | ☆ゲーム第三弾 | 
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク

■お友達サイト■
リア友コウエイのサイト::昂永 あきらのサイト 友達あきら君のサイト:京太 C3のサイト 同サークルC3君のサイト:C3 立志伝製作ブログ:ラヴィル ヨーグルトプリンス様:とも
■検索サイト■
ブルーガーデンブルーガーデン様 コミックルーム[WEB漫画検索サイト] コミックルーム様
■同人販売サイト■
デジケット様 デジケット様 DLsite様 とらのあな様
  • 管理画面
  • QRコード
    QR
    2eme Gymnopedie
    ≪2017.10  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  2017.12≫
    プロフィール

    30kiriya09

    Author:30kiriya09
    こんにちは“霧也(キリヤ)”です。
    同人サークル『gymno』で
    オリジナルショタ漫画等を
    描いています。
    よろしくお願いします。

    最新記事
    最新コメント
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    2011.06.02 Thu
    穂海作哉の恋愛事情~みんなでバスケ!~
    ナカやん様からいただいた、
    穂海作哉×一ノ瀬つばさの小説です。



    -①

    ここは日本のどこかに位置する中高一貫教育を成す私立の男子校「御咲学園」。
    ここ数年生徒数は増加傾向にあり、毎日盛んに授業が行われている。
     

    中等部2年1組と2組の今日の4時間目の授業は、両クラス合同で行われる体育。
    その授業中、1組vs2組で1ヶ月後にスポーツ対決を行う事が決まった。
    スポーツ対決は両クラスにとってはお馴染みのイベントであり、これまで様々な種目で勝負してきた。
    今回の競技種目はバスケである。ここで早くも、両クラスで火花が散る。

    「前回のバレー対決はお前らのアホな作戦のおかげで勝てたし、今回も楽に勝てそうだな。
    何せバスケは得意だからな。今回も俺たち2組がちゃんと勝ってやるからな~。」

    と、1組を煽っているのは2組の穂海作哉。彼はバスケ部所属である。

    「な、なんだとー!! バスケだったらこっちにはまっつんがいるもん、簡単には負けないからな~!!」

    と、2組の挑発に乗っているのは1組学級委員長の森海友。
    まっつんというのは1組で唯一バスケ部に所属している松田のことだ。
    また、遠くから友を好意の眼差しで見つめているのが2組学級委員長の一ノ瀬つばさ。
    作哉はそんなつばさの視線に気づくと、高慢な態度から一転、急に不機嫌になった。

    「ったく、どいつもこいつもやってらんねー。」

    「はぁ!? 先に仕掛けてきたのはそっちじゃんかー!」

    「まあまあ2人とも落ち着いて。ここで争ってもしゃーないし、続きは本番で決着つけたらええやん。な?」

    喧嘩寸前の作哉と友を独特の関西弁でなだめる2組の猫山三朗。彼もまた、バスケ部の部員である。

    「さぶちゃんがそう言うなら別にいいけどさ…」

    「ほら、穂海もこれでおしまい。」

    「チッ」

    お互い険悪なムードが残ったまま、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

     

    ー昼休み

    「なあ穂海、さっきどないしたん? 急に不機嫌になりよって。あとで森海に謝らなアカンで?」

    「別に何でもいいだろ。気分なんて俺の勝手だし。」

    「そんなんやから毎回周りに変な目で見られるんとちゃう?」

    「そんなのお前には関係ないだろ。」

    「そうは言うても…」

    すると、2人のもとにつばさが現れた。

    「あ、あの…今忙しいですか?」

    「うわっなんや一ノ瀬か。てっきりあの変態大明神かと…。」

    「はぁ? 変態大明神?」

    「頼むからそこ突っ込まんといてくれ…。」

    「で、一ノ瀬は何だよ?」

    「あ、あの、2人にお願いがあって……」

    「「お願い?」」

    「はい。その、えっと…その……」

    「何だよ、用件あるならさっさと話せよな。」

    「せやからその言い方がマズい言うてんねん! 一ノ瀬どないしたん?」

    「はい。あ、あの…ぼ、僕にバスケを教えてください!!」

    「バスケを…」

    「教える?」

    「はい。1ヶ月後のスポーツ対決に向けて、練習してうまくなりたいんです!」

    「へぇー、今回はえらく乗り気やな。何かあったん?」

    「さっき友くんと話してて、"本番でカッコいい姿見せてね"って言われたんです。
    スポーツとか苦手だから自信ないって友くんに話したらそう言われて…。
    だから、本番で頑張れば友くんにも少しは見直してもらえるかなって…。」

    「アホ毛少年に見直してもらえるかどうかはともかく、戦力になる人物は1人でも多い方がええからな。」

    「ったく、あのアホ委員長のために俺らが協力しなきゃいけねえのかよ…。」

    「またそういう言い方しよる。せっかく一ノ瀬もスポーツ対決に乗り気になってんねんで? 一ノ瀬、俺は構へんで。」

    「あ、ありがとうございます。三朗くん。」

    「でも結局はあのアホ野郎に言われたからだろ? そんな気持ちでだったら俺はゴメンだぜ。」

    「ち、違います!!」

    「!?」

    突然、作哉の言葉につばさが反論した。

    「確かに、友くんとも約束はしました。でも…僕も自分を変えたいんです! スポーツ対決ではいつも足を引っ張ってみんなの迷惑になってしまう。
    そんなのはもう嫌なんです! 友くんだけじゃない、自分にとってもカッコいいって思えるようなプレーをして、みんなで勝利したいんです!」

    「……」

    「でも、バスケはあまりやったことなくて不安なんです。だから…僕にバスケを教えてください。お願いします!! 作哉くん…」

    そういってつばさは、作哉の前で深々と頭を下げた。

    「そこまでするかよ…。」

    さすがの作哉も、これにはたじろぐばかりである。

    「一ノ瀬がここまでして頼んでるんやで? 少しくらい練習付き合ってあげてもええんとちゃう?」

    「……わかったよ。わかったからさっさと顔上げろ。」

    「……!? い、いいんですか?」

    「今回"だけ"だからな! そのかわり、これで負けたら承知しねえからな。」

    「あ、ありがとうございます! 作哉くん。」

    そういってつばさは作哉に笑顔を見せた。

    「ッ…!?」

    「特訓をするのが決まったんはええけど、何からさせたらええんやろ。どう思う? 穂海…おーい、穂海。聞こえてまっかー? 穂海ハーン」

    「…ハッ!? わ、悪りぃ。えっと、特訓何やるかの話だよな。それは俺が考えとく。」

    「お、ええの? ほんなら任したで。あとはいつから始めるかやけど、さすがに今日は無理やから、明日から始めるか?」

    「僕は構いません。」

    「なら明日までには俺も考えとく。」

    「よっしゃ決まりやな! 明日から頑張ろうな!」

    「はい! よろしくお願いします。」

    こうして明日からの特訓が決まり、昼休みが終わった。



    ---

    放課後、作哉は他の生徒よりも少し遅めに校舎を出て、まっすぐある場所に向かった。
    そこは、体育館の裏のあまり目立たない場所。作哉は荷物を置き、茂みに向かって呼びかけた。

    「おいで、ツバサ。」

    するとほどなく、茂みの中から1匹の子犬が現れた。

    「ワン!」

    「元気だったかーツバサ。」

    "ツバサ"と呼ばれた子犬は作哉に向かって駆け出し、作哉によって抱きかかえられた。
    そして作哉は、地面に置いてあった荷物からドッグフードを取り出し、ツバサに与えた。
    そう、作哉はこの校舎裏で、ツバサをこっそり飼っているのだ。
    ツバサの方も作哉によく懐いていて、しつけも完璧になされている。
    何より、作哉はツバサに対して並々ならぬ愛情を注いでおり、普段の態度からは想像もできないほど優しく接している。
    そんなツバサに対し、作哉はしんみりした表情で語りかけた。

    「ツバサ。今日、またアイツに不機嫌な態度をとっちまった。
    お前の前でなら素直になれるのに、なんでアイツの前じゃ素直になれないんだろう…。
    ホント、バカみたいだよな…。」

    当のツバサは、よくわからないといった表情で作哉を見つめている。

    「……そうだよな。こんな事、お前に言ってもわからないよな。ゴメン。」

    そう言って、作哉は表情を曇らせた。
    ツバサは、元気出してと言うかのように作哉の足元に近づき、尻尾を振った。

    「…うん。飼い主がしょげてちゃ意味ないよな。よし、ツバサ、散歩行くか?」

    「ワン!!」

    ツバサは、待ってましたとばかりに作哉の周りを駆け回り、その後リードに繋がれ、作哉と共に学校を出た。





    -②

    翌日。つばさのバスケの特訓が今日から始まる。

    「…おい一ノ瀬。」

    「さ、作哉くん!? 目が充血してますよ…?」

    「そんなの気にするほどじゃねえよ。目薬も射したし。
    それより、今日の放課後、体育着に着替えて校門の前に来い。いいな。」

    「あ、はいわかりました!」

    「今日から特訓頑張るんやで! 俺らも精一杯サポートするからな。」

    「はい、よろしくお願いします。」

     
    ー放課後

    「お待たせしました!」

    「ああ、来たか。」

    「あれ? 三朗くんは…」

    「アイツなら先生の呼び出し喰らってて来れないから、今日は俺がお前の特訓を見る。」

    「そう…ですか。」

    「何だよ。俺だけじゃ悪いのかよ。」

    「あ、いえそういうわけでは…。」

    「まあいい、今から特訓始めるぞ。」

    「えっと、よろしくお願いします…。」

    「お、おう……。と、とりあえずまずは、この校舎の周りを3周走ってこい。スタートとゴールはここだ。」

    「え、走り込み…ですか?」

    「ああ、タイムも計らせてもらうからな。よーい…」

    「ちょ、ちょっと待ってください! どうしてバスケするのに走らなきゃいけないんですか!」

    「んなの準備の一環に決まってんだろ。外周なんて運動部は毎日のようにやるし、お前の運動能力や体力を把握する意味でもするんだからな。」

    「うぅ…持久走は苦手です。」

    「ったく、つべこべ言わずにさっさと位置につけよな。」

    「は、はい…。」

    「準備できたか。今から計るからな。よーい、ドン。」

    こうしてつばさの特訓は幕を開けた。


    「ハァ、ハァ、ハァ…」

    「おいおい大丈夫かよ…。ちょっと走っただけだぜ。」

    「ハァ…走るのは苦手なんですよ……。」

    「バスケの本格的な練習はある程度体力をつけてからの方がいいな…。」

    「す、すみません…。」

    その後、腕立て伏せや腹筋といった準備運動に近いような練習メニューをこなし、この日は解散になった。



    数日後、この日は作哉から用事があるため練習は無しと言われたつばさは、学級委員の仕事を終わらせて他の生徒より遅く校舎を出た。
    校門に向かって歩いていると、校舎裏の方で何やら声が聞こえた。

    「ツバサー! よーしいい子だツバサ!」

    「ふぇっ!?」

    思わず素っ頓狂な声を上げるつばさ。それもそのはず、声の主は自分を呼んでいるのだ。

    (い、今の声は作哉くん!? 一体どういう…)

    おそるおそる声がする方へ近づいていく。
    茂みからそっと様子をうかがうと、作哉と一匹の犬が目に入った。

    「よしツバサ、ご飯だよ。お食べ。」

    「ワン!」

    作哉が差し出したドッグフードを、ツバサは嬉しそうに食べていた。

    (さっき言ってたツバサは犬のこと…? そういえば前に同じ名前の犬を育ててるって聞いた気が…)

    だが、実際に作哉が犬の世話をするところを見るのは初めてで、作哉のつばさに対する普段の態度とは正反対な微笑ましい光景が繰り広げられていた。
    するとツバサは、つばさの気配を察知したのか、彼のいる方向に向かって吠え始めた。

    「ワン! ワン!」

    「ん、どうしたツバサ? 誰かいるのか?」

    吠えている方向を振り向くと、確かに茂みの向こうに誰かがいる気配がした。
    ツバサはその方向に向かって走り出した。

    「あ、おい待てって…」

    「うわああああ!!」

    犬が自分に迫ってくるのに驚き、つばさは思わず声を上げた。

    (今の声…まさか!?)

    作哉が見に行くと、そこには両耳をふさぎうずくまっているつばさがいた。

    「い、一ノ瀬!? お前なんでここに…」

    「うぅ…」

    「ワン! ワン!」

    「ツバサ、もう吠えなくていい。そいつから離れろ。」

    作哉はツバサに命令すると、改めてつばさの方に向き合った。
    しかしその顔には、焦りが見えている。

    (マジかよ…。まさか、よりによって一番見られたくない相手に見られてしまうなんて…)

    つばさも半泣きの状態で作哉の方を見上げた。

    「ご、ごめんなさい……」

    「……いつからいたんだ?」

    「え、えっと…作哉くんが僕をよぶ声が聞こえて…行ってみたら犬で……」

    「ハァ…そうか。まさか聞かれてたとはな。」

    「あの犬は作哉くんが前に言ってたこっそり飼ってるっていう犬ですよね?」

    「ああ。もともと学校に迷い込んできたコイツををこっそり面倒見てんだ。」

    「そうだったんですか…。犬とか好きなんですか?」

    「……まあな。前に飼ってたし。」

    「あ、そうなんですか? なんか意外です。」

    「悪いかよ。」

    「いえそういう意味ではなく、作哉くんの新たな一面を見れたというかその…」

    「…フン。まあいい。今のことは誰にも言うなよ。言ったらしばくからな。」

    すると、2人のやり取りを見ていたツバサが近づき、つばさの足元に来た。

    「どうしたんだ、ツバサ?」

    ツバサはつばさの足に擦り寄り、甘えるようなしぐさを見せた。

    「な、なんですか今度はっ!?」

    「落ち着けよ一ノ瀬。コイツは人を襲ったりしねえよ。ツバサ、もしかしてコイツのこと気に入ったのか?」

    「ワン!」

    ツバサは同意するかのように元気に吠えた。

    「コイツ、お前のこと気に入ったってよ。」

    「ほ、ホントですか!? あの、なでてもいいですか?」

    「ああ、優しくな。」

    「ありがとうございます。よしよ~し…」

    つばさが頭をなでると、ツバサは気持ちよさそうな表情になった。

    「最初は吠えられてビックリしましたけど、近くで見るとかわいいですね。」

    「だろ? 俺はコイツとは親友みたいなもんだ。いつもコイツから元気をもらってる。」

    「作哉くんにもそういうところがあったなんて…」

    「う…ま、まあ別にいいだろ。」

    「そういえば確かこの子の名前は"ツバサ"なんですよね…?」

    「!? あ、い、いやあその…何というか、ぐ、偶然だよ偶然!!
    たまたま名前がお前と被っただけだよ! 別に狙ったわけじゃねえし!!」

    「じゃあ、名前は作哉くんが考えたんですか?」

    「あ、い、いや違う! コイツを初めて見つけた時に首輪つけてて、
    そこに"TSUBASA"って名前が書いてあってだな……」

    「そ、そうですか…」

    (いくらなんでも犬の名前が目の前にいるお前から来てるなんて言えるわけないだろ…)

    「あ、もうこんな時間! 長居しちゃってごめんなさい。僕はもう帰りますね。」

    「おい。」

    「何でしょう?」

    「その…こ、コイツお前のこと気に入ったみたいだし、気が向いたら…コイツに会いに来ても…い、いいからな…。」

    そう言った作哉の顔は、夕日のせいなのか真っ赤に染まっていた。

    「はい、ありがとうございます! それではまた明日。ツバサくんバイバイ!」

    校門に向かって歩き出すつばさとそれを見つめる作哉、そんな2人をツバサはそっと見守っていたのだった。

     

    その次の日の放課後、作哉に呼び出されたつばさは校舎裏にやってきた。

    「来たな。今日の練習場所に行くぞ。」

    「あ、今日は学校ではないんですね。」

    「ああ、それから今日は特訓相手を呼んでいる。」

    「特訓相手!? 誰でしょう…?」

    「おいで、ツバサ。」

    作哉がそう呼びかけると、茂みの中からツバサが飛びだしてきた。

    「ワン!」

    「あ、ツバサくん! …この子が練習相手?」

    「ああ。これから移動するが、今日はリードはお前が引け。」

    「は、はい!」

    こうして、作哉とつばさとツバサの3人、いや2人と1匹の散歩が始まった。

    「ワン! ワン!」

    「あ、待ってそんなに速く走らないでええ…」

    「こーらツバサ、はしゃぎすぎだぞ。」

    「クゥーン…」

    こうして、10分ほど歩いたところでとある公園に着いた。

    「ここは俺がツバサをよく散歩させるために来ている公園だ。ついてこい。」

    そういって、つばさを誘導する。

    「着いたぞ。」

    「うわぁ…」

    そこは、湖を一望できる隠れたスポットだった。
    夕日が透き通る水に反射して湖が輝いている。

    「すごい…こんな場所があったなんて!」

    「ここは人もいないからな。穴場の場所なんだ。散歩に行く時はいつもここに寄る。」

    「そうだったんですか…」

    「よし、ツバサのリードを外すか。おいで。」

    作哉はツバサに近づき、首につながれていたリードを外してあげた。
    そして、持っていたカバンからフリスビーを取り出し、つばさに渡した。

    「今日の特訓は"ツバサと遊ぶこと"だ。ここでいつもリードを外して自由にさせてるからな。
    せっかく懐かれてるんだし、体力つけるのも兼ねて今日はお前がツバサの遊び相手になってやれ。
    言っとくがツバサは好奇心旺盛であちこち動き回るからな。バテずにちゃんとついて行けよ。」

    「わ、わかりました。」

    するとツバサがつばさの元に駆け寄ってきた。

    「ほら、一緒に行ってやれ。」

    「は、はい! 行こう、ツバサくん。」

    「ワン!」

    作哉は、つばさとツバサが戯れている姿を遠目で見ていた。
    その顔は、本人も気づかないほどに緩んでいた。
    また、そんなつばさとツバサの姿をこっそり動画で撮っていたのはここだけの話…。

    「よし、今日はここまでだ。そろそろ帰るぞ。」

    「はい、ありがとうございました!」

    「ツバサ、どうだったか? このお兄ちゃんと遊んで。」

    「ワン! ワン!」

    「そうかー楽しかったかー。それは良かったな!」

    「僕も楽しかったです!」

    「一ノ瀬もだいぶ体力ついたんじゃねえか? 今日はそんなにへばってねえみたいだし。」

    「確かに、走ったりしても前よりあまり息が上がらなくなりました。」

    「そうか、それは良かった。」

    「ええ…」

    「…………」

    「…………」

    「……と、とりあえずもうこんな時間だし、俺はツバサと学校に戻るから、気を付けて帰れよ…。」

    「あ、ありがとうございます! それでは、また明日。」

    つばさと別れ、こみ上げる気持ちを抑えたまま、作哉はツバサと学校に戻った。





    -③

    次の日の放課後、体育館に来たつばさをユニフォーム姿の作哉と三朗が出迎えた。

    「よし、来たな。今日から本格的なバスケの練習を始めるぞ。」

    「ゴメンな~。先公に捕まってもうて全然練習見に来てあげられんかった…。」

    「いえ、大丈夫です。作哉くんに見てもらいましたから。」

    「穂海も1人でホンマにゴメンな。」

    「別に、今んとこ順調そうだしまあいいけど。」

    「ほんならさっそく始めるで。まずは基本的なルールからやろか…。」

    「え、えーっと、ドリブルとかパスとしながらシュートすればいいんですよね!?」

    「ま、まあそうっちゃそうだが…うん。」

    「ホンマにこんなんで大丈夫なんやろか…。」

    「とにかく、まずはルールをしっかり覚える事からだ。じゃないと話にならないからな。」

    「せやな。次はルール違反についてやな。試合中にやってはならんルールや。
    どうや一ノ瀬、何か知っとるのあるか?」

    「えーっと、ダブルドリブル…とか。」

    「さすがにそん位はわかるか。
    一度ドリブルし終わったあと、もう一回ドリブルするのはアカンっちゅう奴やな。
    ドリブルが終わったら、シュートするかパスするしか選択肢は無いからな。」

    「あともう1個ありましたよね…。確かボールを持ったまま3歩以上歩いちゃいけないとか…。」

    「…トラベリングだ。」

    「そうそうそれそれ!」

    「宇多○○カルやないで?」

    「お前は少し黙っとけ。」

    「えーちょっと位ボケたってええやん。もっと楽しく行こーや。」

    「これ以上ふざけたら1組の奥村とかいう奴にお前のこと好きにしていいって言うからな。」

    「ごめんなさいもう言いませんのでそれだけは勘弁してください。」

    「なんでそこだけ標準語なんだよ…。」

    「…クスッ」

    「「!?」」

    「あ、ごめんなさい。2人のやり取りが面白かったのでつい…」

    「ホンマか一ノ瀬!? 今のそんなにオモロかったんか! 陸田&杉本目指せるか!?」

    「よし今の奥村にも見せに行くか。」

    「あああもう余計な事言わんからそれだけは堪忍したってくれえええ…!!」

    「プッ、ふふッ…あはははッ」

    「おい…コイツさっきからスゲーウケてんだけど。」

    「もしかして、笑いのツボがわかっとるんか!?」

    (一ノ瀬がお笑い好きだってのはやっぱり本当なんだな…)

    「とりあえずそろそろ練習始めるけどええか?」

    「あ、す、すみません! はい、よろしくお願いします。」

    「まずはパスの練習からだ。ドリブルはできなくてもパスができなきゃ話にならねえからな。」

    「まずは2人でお手本みせるで。」

    作哉と三朗はコートの真ん中に立ち、お互いパスだけをしながらゴールに近づき、
    最後は作哉がゴールを決めた。

    「すごい!」

    「まああれ位やれとまでは言わないが、試合の中でのパスは正確に行えるようにしないとな。」

    「そこから相手にボールを奪われて、逆に点決められてまう場合もあるからな。」

    「はい!」

    「じゃあ練習始めるか。まずはボールに慣れることだ。」

    こうして、作哉と三朗、つばさを交えてのパス練習が始まった。
    つばさは、最初は慣れないボールに戸惑っていたものの、作哉と三朗のアドバイスもあってか、
    回を重ねるごとにパスの正確性は徐々に上がっていった。

    「何や、自分飲み込みめっちゃ早いやん!」

    「その調子なら次の練習に行っても大丈夫そうだな。」

    「はい、頑張ります!」

    お次はドリブルの練習。ボールを打ちながら広い視野を見ることがポイントである。

    「これは大変ですね…。」

    「ドリブルをしながら相手をかわしたりもしなきゃいけねえからな。」

    「少しずつボールつきながら自分の行きたい方向に進む練習から始めればええと思うで。」

    「とりあえず今日の特訓はここまでにしよう。やりすぎるのもよくないからな。」

    こうして作哉の一言で今日は解散になった。

     
    翌日はまず昨日の復習を行った後、いよいよシュート練習に入った。

    「網の上にある黒い四角の部分にボールを当てるようにすると入りやすいんよ。」

    「えいっ…ああ、惜しいです。」

    「もっと力を楽にして、常にゴールネットを意識するように。」

    「もう1回…えいっ! ああ…」

    「もうちょっとやな。」

    「うう…難しいです。上達できなかったらどうしよう…。」

    「お前が自分を変えたいって言ったんだろ? その自分を信じない限りいくら練習しても成長なんかしねえ。」

    「…!?」

    「それは俺も同意見や。いくら練習に付き合っても最終的には本人のやる気次第やと思う。
    諦めたらそこで、試合終了やで?」

    「……そうですよね。"自分のために"ですよね…。」

    「せや、自分が全力で頑張って初めて周りにカッコ良く映るんやで?」

    「そうだな、休み時間とかに自主練しとけ。こればかりは数こなすしかないからな。」

    「はい、わかりました…。」

    「あとは俺らバスケ部の活動を録画した奴をあとで送ってやる。それ見て研究するんだな。」

    「あ、わざわざありがとうございます!」

    「穂海もこないだよりだいぶ丸くなったんとちゃうか?」

    「う、うるせえよ! 別に関係ねえだろ!」

    「でも、いざという時はやっぱり優しいんですね。」

    「はぁ!!?? なんでお前まで…」

    「せやろ、普段あんなツンツンしてんのにいざっちゅう時は頼りになるんやで。」

    「もういいよ俺の話は…。とりあえず今日は解散にするぞ。」

    「はい、ありがとうございました。」



    バスケ対決まで1週間に迫ったこの日、つばさは昼休み、体育館で1人シュート練習をしていた。
    その様子を外から覗いている人物がいた。

    「えいっ…ああ惜しい。もう少しなんだけどな…。もう1回!……やった、入った!!」

    「ずいぶん練習頑張ってるね。」

    「えっ…!?」

    その人物は体育館の中に入り、つばさに話しかけてきた。

    「今のシュート良かったよ。一ノ瀬くん。」

    「あ、綾瀬くん!?」

    「しのぶでいいよ。同学年だし最近よく話すでしょ? こっちも下の名前で呼んでいい?」

    「あ、構いません。」

    「それはそうと練習の邪魔してゴメンね。武道場行くのに体育館の横を通るからどうしても見えちゃって…。」

    「あ、いえ別に…。」

    「練習してたのはやっぱり次のスポーツ対決に向けて?」

    「はい。僕も今回は少しでもみんなの役に立ちたいと思って…」

    「そっか。そういえば友が"今回はつばさ君が魅せてくれる"って言ってたね。」

    「えええ!? と、友くんがそんな事言ってたなんて…。確かにカッコいい姿を見せてねとは言われましたが…。」

    「そうなんだ。だったらなおさら頑張らなきゃね。」

    「そ、そうですね…。」

    『キーンコーンカーンコーン…』

    「あ、チャイム鳴っちゃったね。つばさくんのプレー、僕も楽しみにしてるね。お互い頑張ろうね。」

    「はい! 本番頑張りましょう。」

    そういって会話の主、綾瀬しのぶは先に体育館を出た。
    次に授業で体育館を使うクラスの生徒が入ってきたため、つばさも足早に教室へ戻った。



    対決2日前の放課後。この時間は別の部活動が体育館を使っていて練習ができなかったため、
    今日はツバサの元へ行ってみることにしたつばさ。
    いつもの校舎裏に行くと、すでに作哉とツバサがいた。

    「ワン!」

    「…ああ、一ノ瀬か。」

    「今日は体育館が使われてて練習ができないので…来てみました。」

    「そうか…今から散歩に連れて行こう思ってたんだが…来るか?」

    「はい! またあの公園ですか?」

    「そうだな…。」

    2人(と1匹)は学校を出て、例の公園へ向かった。

    「そういえば、自主練の方はどうだ?」

    「はい、今のところ順調です。そうそう、今日はシュート4本も入りました!」

    「そうか、良かったな…。」

    「あ、あと練習中に綾瀬くんに会って、少しお話しました。」

    「綾瀬ってあの1組のチビの奴か?」

    「(チビって…)まあ、お互い頑張ろうみたいな話をしてすぐ別れましたが。」

    「そうか…それはちょっと厄介かもな。」

    「へ? 何が厄介なんですか?」

    「お前が練習してた事が1組にバレちまったてことは、
    本番でお前を警戒してマークする奴がいるかもしれないってことさ。」

    「なるほど…。でもその前に友くんが僕が活躍するって言っちゃったらしいんですけどね。」

    「何だよ、あの野郎余計な事しゃべりやがって…。」

    「大丈夫ですよ。僕たちが勝てば良いんですから!」

    「…そうだよな。本番まであと少しだから気合い入れてけよ。」

    「はい!」

    そして公園に着き、ツバサのリードを外して2人は近くのベンチに腰掛ける。

    「そういえば、作哉くんは前に犬を飼ってたんですよね? それっていつ位からですか?」

    「……俺が6歳の頃、小学校に上がる前に初めて我が家に来たんだ。
    それからは新しい家族の一員としてみんなで可愛がってたんだ。
    でも、1年前に病気で死んじまった。まだ7歳だったのによ…。」

    「そうだったんですか…。なんか嫌な事思い出させてしまってごめんなさい。」

    「いや、いいんだ。死んでしまった以上は俺らの心の中でしか生きられない。
    だからアイツがいたという事実は忘れるつもりも無いし、忘れてはいけないんだ。」

    「でも、飼い主にそこまで思ってもらえてるなら、そのワンちゃんも幸せですね。」

    「……だといいけどな。」

    「え?」

    「あ、い…いや何でもない。何でも……」

    そう語る作哉は、どこか儚げで切なそうな表情をしていた。

    「でも、今はツバサがいる。アイツにしてやれなかったことをツバサには全部してやりたい。
    失敗から何も学ばなければただの馬鹿だ。バスケだって同じだ。
    練習の時の失敗や挫折があるから上達もするし、それが自信にもつながるんだ。」

    「そっか、僕もそういう考えが持てるような人間になりたいな。やっぱり作哉くんはちゃんとしてるなぁ…。
    そうやって飼い犬の気持ちも考えてあげられてて。」

    「違う!! 俺はそんなすごい奴なんかじゃねえ! だって…だって……」

    「さ、作哉くん?」

    「アイツは…俺が殺したようなモンなのに……」

    「え…!?」

    「アイツ…以前飼ってた犬が昔から体が弱くて、ほとんど家の中で育ててたんだ。散歩に行く時もずっとリードに繋いだまんまで、
    今のツバサみたいにリードを外して遊ばせるなんて事はなかった。そうやって俺が護ってやることが、アイツにとって良い環境なんだと思ってた。
    でも普通そうだよな。そんな事ばっかりしてたら余計体が弱っちまう。あの時の俺はそんな簡単なことにさえ気づけなかった。」

    「作哉くん…」

    「エサだって体のことをもっとちゃんと考えてあげれば良かったのに…。俺はアイツの苦しみをわかってやれなかった!
    だからアイツは、俺が死なせたも同然なんだ…。」

    「そ、それは違います!!」

    「!?」

    「確かに、作哉くんは間違った育て方をしてしまったかもしれません。でも、それは全部その子のためを思ってしたことでしょう?」

    「……」

    「その子に対する愛情は、本物だったんでしょう?」

    「……!?」

    「作哉くんがそれだけその子の事を思ってくれてた事、ちゃんとわかってくれてると思いますよ。天国に行っても。」

    「…………」

    「たとえ育て方が間違っていたとしても、その子への愛情は間違ってなんかいません。
    作哉くんの愛情が本物なら、作哉くんと過ごせた事に後悔はしてないと思います。」

    「……そっか。そうだな。うん。」

    「って、なんかごめんなさい。1人で熱く語っちゃって…。」

    「いや、俺が間違ってた。お前の言葉を聞いて目が覚めたよ。確かに、俺がアイツに注いできた愛情は胸を張っていいんだよな。」

    「そうですよ! このまま落ち込んでたら、天国のワンちゃんにも失礼ですよ?」

    「だな。ありがとな。お前も言う時は言うんだな。案外見直したぜ。」

    「そっそうですか…。僕も作哉くんの力になれて良かったです。」

    「ッ…!? そ、そろそろ戻るぞ…。」

    「はい。」

    しばし公園で語らっていた2人は、ツバサを学校へ戻し、解散した。



    ---

    その晩、作哉は自室に籠っていた。
    彼の机には、前に飼っていた犬との2ショット写真が飾ってある。

    「アイツ…天国でも元気にしてっかな。それにしても…」

    作哉は自室のベッドに腰掛ける。

    「一ノ瀬もだいぶ変わったな…。俺がアイツに励まされちまうなんて。」

    『作哉くんの愛情が本物なら、作哉くんと過ごせた事に後悔はしてないと思います。』

    「……変わってないのは俺のほうだよな。何やってんだろう。マジで……」

    今までの思いが一気にこみ上がり、作哉はとうとうこらえきれず涙を零した。
    その様子を、月の光だけがそっと優しく照らしていた。





    -④

    スポーツ対決当日、作哉,三朗,つばさを含めた2組のメンバー同士で最終練習が行われた。

    「各自フォーメーションの位置確認しとけ!」

    「ほんならあと15分後に練習試合するで!」

    「よし、あとはシュートの精度がもう少し上がれば…。」

    各々が最終確認を行い対決に備える。

    「一ノ瀬、調子はどうだ?」

    「はい! やっぱりシュートがもうちょっと…」

    「それだけできてれば大丈夫だ。本番よろしく頼むぞ。」

    「はい!」

    「ほんなら円陣組もか? 士気も高まるで!」

    「そうだな。」

    「はい!」

    こうして、2組のメンバー全員が輪になり、腕を組みあう。

    「じゃあ一ノ瀬、お前委員長だから仕切れ。」

    「ええっ!? えーっと、いよいよ今日が本番です。日頃の練習を思い出して、全力で、楽しんでプレーしましょう!
    え、エイエイオー!!……」

    「「エイエイオー!!」」



    -4時間目
    1組と2組の合同体育の時間、ついに決戦の時が来た。
    作哉と友が再び対峙する。

    「こないだは言い過ぎた。でも、今回も俺たちが勝つ!」

    「私、失敗しないので。敗北いたしません!」

    「ド○ターXかよ…。」

    周りの生徒も対決に向けて意気込んでいる。

    「空が敵だったらきっとお前の事をずっとマークしてたな!」

    「兄さんそれもうストーカーじゃん。」

    「さぶちゃんの事はオイラがずっとマークしててあげるからねっ!」

    「いらんことすなや気持ち悪い!!」

    準備運動を済ませ、両クラスともコートへ入る。

    「それでは1組vs2組のバスケットボールの試合を行います。」

    「「よろしくお願いします!!」」

    「つばさくん、頑張ろうね!」

    「友くん! はい、頑張りましょう。」

    そして作哉と1組の松田がコートの真ん中に残る。

    ホイッスルの合図と共に、審判によってボールが空中へ放たれる。

     

    -いざ、試合開始!!
     
    先にボールを奪ったのは1組の方だった。
    1組は松田としのぶ、2組は作哉と三朗を中心に試合が展開する。
    つばさは、前半は主に相手をマークするなどの守備に就く。
    前半は、両クラスとも2得点ずつを重ねるデットヒートとなった。
    つばさも、課題となっていたシュートを打つ機会はなかったものの、相手のパスをカットするなどの健闘を見せた。


    前半終了後、再び作戦会議が行われる。

    「ごめんなさい。前半はあまり動けませんでした。」

    「いや、松田のあのパスをカットできたのは大きい。あのままパスが通ってたら点が入ってたかもしれない。」

    「せやせや! もっとポジティブに楽しまなアカンと。」

    「一ノ瀬、後半はお前も前線に入れ。行けるか?」

    「は、はい! 頑張ります!」

    「俺らも普通にパスとか出すからな? ちゃんとついて来いよ。」

    「うぅ、緊張してきました…。」

    パン、と作哉がつばさの背中を叩く。

    「心配すんな。絶対勝つ!」

    「はい!」

    「ほな皆行くで!」

    「「おう!!」」



    ー運命の後半戦

    ボールを奪った三朗がディフェンダーをかわしゴールへと近づく。と、目線の先に

    「さぶちゃ~ん、早くオイラの元に飛び込んで来て~!」

    「にょわああああ!!」

    と、三朗の動きが止まってしまった。

    「ふっふ~ん、作戦ど・お・り♪」

    「クソっアイツそれが狙いか! こうなったら…穂海…あ!」

    三朗の放ったボールは相手チームによって遮られ、そのままゴール前まで運ばれてしまった。

    「しもた…やってもうた……。」

    「さぶちゃんドンマイ! まだチャンスはあるよん♪」

    「お前は敵なのか味方なのかどっちなんや…」

    そうこうしてる間に、1組チームのゴールが決まり、ポイントを奪われた。

    「スマン、もうちょっと周り気いつけてたら…」

    「ドンマイドンマイ、すぐ取り返しにいけば良いだけだ。」

    「ぼ、僕も頑張りますから次行きましょう!」

    「おう、カッコええ所俺らにも見せてな!」

    ホイッスルがなり、作哉がドリブルで攻め込む。
    しかしすぐに相手チームに囲まれる。

    「チッこのままじゃ進まねえ。ここは…一ノ瀬!」

    とうとうつばさにパスが回ってきた。
    つばさは臆することなくボールをキャッチし、作哉のジェスチャーで示した指示通りにドリブルで前線に切り込む。
    すると

    「行かせないよ!」

    つばさの行く手をしのぶが阻む。つばさからボールを奪おうとする。

    「そうはさせません!」

    つばさもここでは引き下がれない。
    ドリブルの隙を突いてボールを奪おうとするしのぶに対し、素早く体制を変える。

    「作哉くん!」

    「ナイスだ!」

    「あ…」

    そして上がってきた作哉に素早くパスを回す。
    作哉が一気に駆け上がる。
    残り20秒を切り、このまま作哉がシュートをするものだと思われた。が、

    「一ノ瀬! お前のシュートを見せてみろ!」

    直前で、作哉がつばさにパスをした。
    つばさがいるのは3ポイントエリア。シュートが決まれば逆転できるが、成功するのは難しい。
    しかし、残された時間はあとわずか。

    「いけ! つばさ!!」

    ボールを受け取ったつばさはほぼ無心でシュートを放った。






    つばさが放ったボールはそのままゴールネットに吸い込まれ、地面に落ちた。





    「ピーーー」

    試合終了のホイッスル、2組の逆転勝利だ。

    「っしゃあああああ!!!!」

    「勝った!! 勝ったで!!!!」

    他のメンバーが次々と喜びを爆発させる中、つばさは何が起こったかわからないかのように1人呆然としていた。
    そして、みんながつばさの元に駆け寄ってきた。

    「やったな一ノ瀬! 3ポイント決めるとはどえらいこっちゃで!」

    「よくやったな一ノ瀬。」

    と、作哉が一ノ瀬の肩に手を置いた。

    「勝ったんだ…。僕たち、勝ったんだ……!」

    「ああ、勝ったさ。お前のシュートでな。」

    「……! やった!!」

    「おめでとう、つばさくん。」

    「あ、しのぶくん!」

    「最後のシュート、カッコ良かったよ。あとで友のところに行ってあげな。」

    「あ、はい! こちらこそお疲れ様でした。」

    「さぶちゃん、今度はオイラたちで愛のシュートを放ってゴールインしよ?」

    「愛のシュートって何やねん!? 俺は絶対アンタの事なんか認めへんぞおおお!!」

    こうして互いの健闘をたたえ合い、バスケ対決は終わりを迎えた。





    -⑤

    昼休み、作哉は教室を出てツバサの元に向かった。
    教室に戻る途中、廊下で楽しそうに会話している友とつばさを目撃し、先ほどまでの興奮は一気に冷めてしまっていた。

    「おいで、ツバサ。」

    作哉の呼びかけにツバサは元気よく反応し、茂みから出てきた。

    すると、作哉の元をだれかが訪ねてきた。

    「あ、やっぱりここにいましたか。」

    「…なんだ、一ノ瀬か。どうしたんだ?」

    「あの、1ヶ月間特訓に付き合ってくれてありがとうございました! おかげでシュートも決められましたし、自分に自信もつきました。」

    「そうか、それは良かった。…で、アッチはどうだったんだ?」

    「あ、友くんですか? はい、カッコ良かったよって言ってもらえました! 輝いてたねって…エヘヘ」

    「そう…良かったな。」

    「でも、やっぱり作哉くんがいなかったら、僕もここまでにはならなかったと思います。」

    「何でだよ、猫山じゃダメなのか?」

    「いえ、そういう意味じゃなくて…。三朗くんから聞いたんです。
    特訓初日に作哉くんの目が充血していて、何でかなーと思ってたら…作哉くんが僕のために徹夜で練習メニューを考えてくれてたんですよね?
    口では意地悪そうに見えてもちゃんと人の事を考えてくれてる、アイツはいい奴だって三朗くんが言ってました。」

    「アイツまた余計な事を…」

    「でも、そうやって僕のために色々準備してくれているなら、僕もその期待に応えられるように頑張ろうって思ってずっと練習してきたんです。」

    「別に俺はお前に期待なんて…」

    「だから、作哉くんにはちゃんとお礼がしたくて。本当にありがとうございました。」

    「…別に俺は何にもしてねえよ。まあ、結果出せて良かったな。それに、その…あのシュートも良かったぞ。」

    「ホントですか!? 嬉しいです…。」

    そういってはにかむつばさに、作哉は何とも言えぬ複雑な心境を抱いていた。

    「その…俺も今まで色々言い過ぎた。悪かった。」

    「いえいえ、作哉くんが謝る必要なんて! 作哉くんの優しさは十分伝わりましたし。
    それに、試合の時僕のことを"つばさ"って呼んでくれましたよね?」

    「え!? あ、あれは…無意識で……。」

    「でもすごく嬉しかったですよ? 距離が縮まった気がして。」

    (何だよ…何なんだよこの流れは! これじゃあまるで……)

    「なんだか、あの頃の作哉くんが戻ってきたみたい。」

    「フン、別に好きでお前に冷たく当たってるわけじゃねえよ。」

    「そうだったんですか…? それを聞いて安心しました。」

    「お前は何もしてねえよ。俺がお前を好きになっただけで…」

    「え!?」

    「え、あ……………………」

    (し、しまったああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
    その場の雰囲気とはいえ、なんで口走っちまうんだよ!!!!)

    作哉は途端に顔面蒼白になり、地面にガックリと膝を付いた。

    「作哉くん、今のは……」

    「ち、違う!! 俺はお前なんか好きじゃねえ! お前の事なんか好きになるもんか! 俺は…俺は……」

    しかし、時すでに遅し。口を滑らせてしまった以上、どんなに嘘を並べ立ててももはや通用しない。
    作哉も十分にわかっていたはずだが、頑なに認めようとしない。

    「作哉くん、作哉くんは本当に僕の事を……?」

    「……フン。何言ってんだよ。好きじゃねえって言ってんだろ?
    弱虫でいつもウジウジしてメソメソしてるお前なんか好きになるはずがねえ!
    むしろお前のそういう態度が…態度が……」

    『嫌い』

    とは言えなかった。たとえ好きであることをごまかそうとしてつく嘘でも、作哉にはそれができなかった。
    つばさは不安そうな表情で作哉を見つめる。
    作哉は、もう歯止めが効かず自暴自棄になっていた。

    「俺が優しい? 何を妄言垂れてんだよ。こんな弱虫イジ野郎に誰が優しくすんだよ!
    ……何だよその目は? 早くどっか行けよ! もう目障りなんだよ! もうここにも来んな! とにかくどっか行け!
    あのアホ委員長の所にでも行って2人で仲良く…」



    「作哉くん!!!!」



    「!?」

    突然、つばさは普段発しない大きな声で作哉の名を叫んだ。
    これにはさすがの作哉も動揺し、無言になる。
    そして、つばさは今度はとても穏やかな口調で呼びかける。

    「作哉くん、顔を上げてください。」

    その呼びかけに対し、作哉は無言でゆっくりと顔を上げる。

    「…作哉くんが好きって言ってくれたこと、正直ビックリはしました。でも…」

    「……」

    「純粋に嬉しかったですよ? 好きになってくれるのは悪い事ではないですから…。
    それに、普段冷たくされてるから作哉くんに嫌われてるのかなと思ってたので、僕に好意を持ってくれてるとわかって安心もしました。」

    つばさの言葉に、作哉も落ち着きを少しずつ取り戻す。

    「……俺は、おかしいか? 俺が思ってる事、気持ち悪いって思うか?」

    「いいえ、まったくそんな事思ってません。」

    「本当か?」

    「はい。それに、信じてましたから。作哉くんを。」

    「俺を?」

    「いつも僕に冷たく当たってくるけど、でもきっとそれは本当の作哉くんじゃないって。
    三朗くんから練習メニューを考えてくれてた事や作哉くんが話してた犬のエピソードを聞いて、僕が信じていた事は間違ってなんかなかったって。
    どんなに作哉くんにからかわれたり意地悪されたりしても、ずっと信じてましたから…


    "作哉くんは優しいんだ"って。」


    「……!」

    「確かに僕は友くんが好きです。でも、作哉くんが僕を好きだって事を想像してなかったし、正直僕自信少し避けてた部分もあったりで、
    こうして告白されるとは思ってもみなくて、だから、明確な返事は今はできません…。
    その…もっと作哉くんの事が知りたいんです!
    今まであまりいい関係が築けなかった分、作哉くんの事をもっと知って、仲良くなりたいんです!
    いつか、作哉くんにちゃんとした返事ができるように。」

    「……」

    「友くんがとか、そういうのは関係なしに、僕も作哉くんを好きでいられるように。」

    「……!」

    「あ、今のは恋人としての好きとかそんなんじゃなくて…ああ、友くんの好きも別に恋の意味では…。」

    「…ああ、わかってる。やっぱりお前は俺が思ってたよりもしっかりしてたんだな。」

    「え、そ、そんな事…」

    「前にツバサに出会う前に犬を飼ってたって言っただろ? 体が弱かったのもそうだし、
    アイツ、なんか犬のクセにいつもビクビクしてて外にもあまり出たがらなくて、そういうところがお前に似てたんだ。
    今までお前にキツく当たってたのも、アイツと被ってみえた部分があったのも理由の一つだ。
    人と犬を重ね合わせるとか、どこまでもおかしな奴だよな。」

    「……」

    「アイツが死んだ時に、お前の事が一番に気にかかったんだ。もしもアイツと同じような目に遭ったらって…。
    一ノ瀬にはもっとしっかりしてほしかった。だからつい意地悪してるみたいな感じになっちまった。
    でも、そんな俺の心配は無駄だったみたいだな。俺が思ってたよりもお前はずっとしっかりしてた。
    むしろ変わらなきゃいけないのは俺の方だったみたいだな。これじゃあ一ノ瀬よりも弱っちいよな。
    本当情けないぜ…。」

    「そんな事無いです。自分の気持ちは後回しにしてでもみんなの事をそうやって考えてくれてて、
    作哉くんは十分強いです。」

    「…フッ、全然強くもなんともねえ。自分を信じない限り成長しないとか言っておきながら、一番成長してないのは俺自身じゃねえか!
    …本当、馬鹿らしくて笑っちまうよな。」

    そう自嘲する作哉の目からは、一筋の涙が流れ落ちる。

    「何やってたんだろうな俺って。一ノ瀬を見守るつもりが、逆にフォローされるとか我ながらみっともねえよな…。
    挙句の果てにその一ノ瀬を好きになっちまうとか…。馬鹿みたいだよな。ホント…ホン……うぅ…」

    今まで抑えていた感情が一気に溢れたのか、つばさの前で泣き崩れる作哉。

    「作哉くん…」

    「…好きな人の前で泣くとか、全然強くなんてねえ……。」

    つばさは、そんな作哉に歩み寄り、その体を華奢な手で包んだ。

    「…!?」

    つばさは作哉の顔を自身の胸に寄せ、作哉をそっと抱きしめた。

    「作哉くんがそんな風に思ってたなんて、知りませんでした。
    でも、もう無理する必要なんてないです。あまり溜めすぎるともっと弱ってしまいますよ?
    僕の知ってる作哉くんは、優しくて、強いんです。」

    「う…うぅ……あぁぁ…!!」

    つばさの言葉に安心したのか、作哉はつばさの腕の中で、泣き続けた。
    つばさも作哉をしっかりと抱いたまま、彼を見つめていた。
    彼の気持ちを無駄にしてはいけない、と心に誓って。



    ---

    昼休みを終え、作哉は1人授業をサボって屋上にいた。
    あの後は授業を受ける気になれず、いつも三朗が昼寝をしているベンチに横になっていた。

    どれくらいそうしていただろうか。屋上につばさがやってきた。

    「あ、やっと見つけた…。もうすぐ帰りのホームルームですけど…大丈夫ですか?」

    「ああ。」

    「もう、勝手に授業サボっちゃダメじゃないですか! 心配したんですよ?」

    「別にサボるサボらないは俺の勝手だろ?」

    「もう…、ホームルームはちゃんと出てもらいますからね。委員長命令ですよ?」

    「何だよそれ。はいはい、行けばいいんだろ?」

    重い腰をあげてつばさについていく。

    「あ、あの…」

    「何だよ?」

    「今日、もしよかったら一緒に帰りませんか?」

    「はぁ、どうしたんだよ急に? 森海はいいのかよ?」

    「その、あの時のお礼とかしたいですし、今日は2人で帰りたいなと思って…」

    「…わかったよ。帰ってやるよ。礼なんていらないからな。」

    「はい、じゃあ下駄箱の前で待ち合わせで…」

    作哉はつばさが自分を誘ってきた事が気になり、ホームルームの内容も頭に入ってこなかった。



    ー放課後

    「待たせたな。」

    「いえ、僕も今着いたところです。じゃあ行きましょう。」

    夕暮れ時の通学路を、2人で並んで歩き出す。

    「そういえば、こうして2人で帰るってかなり久しぶりですよね。なんだか懐かしい感じがして。」

    「言われてみればそうだな。いつ以来だっけか…」

    「フフフ、そうだ! この先の商店街にコロッケを売ってるお肉屋さんがあるんですよ。
    僕も友くん達と何度か食べたんですけど、すごく美味しいんですよ!」

    「へえ、それは良さそうだな。行ってみるか。」

    「ぜひぜひ! 何なら僕がおごりましょうか? バスケ対決で色々教えてくれましたし、色々迷惑かけちゃったみたいだし…。」

    「え、だから礼なんていらないって…」

    「いいんです! 男なら黙って、男に奢られるべきです!!」

    「何だよそれ…ってそれ昨日のテレビでやってた陸田&杉本のネタじゃねえか!」

    「あ、わかりました? 作哉くんナイスツッコミです!」

    「あれは俺も見てて正直笑ったわ。」

    「確かに面白かったですよね~!」


    一方、友としのぶの2人も、学校からの帰宅途中だった。
    商店街に差し掛かると、前方に同じ制服を来た2人組がいた。

    「ねぇ友、あれって…」

    「え…あー! つばさくんとジャイアン!? なんであの2人が?
    ジャイアンの奴、またつばさ君に変な事してなきゃいいけど…。」

    「…そうでもないみたいだよ。」

    「え?」

    『お前のコロッケも美味そうじゃん。』

    『これ、期間限定のカボチャ味なんですよ! カボチャのホクホクした食感と甘さが口いっぱいに広がって…』

    『何だよそれ、超食べたくなるじゃん! まあでもこのメンチカツも美味いな…。あとお前食レポ上手いな。』

    『あ、今美味いと上手いをかけましたね!』

    『いちいち言わなくていいよそういうのは! 恥ずかしくなるだろうが…』

    『フフフ…あはは…』

    『アハハハハ…』

    「なんか、楽しそうだね…。」

    「うん、そうだね。」

    「…俺たちも何か食べない? 2人を見てたらお腹すいてきちゃって…。」

    「まったく、友ったら食い意地張ってるんだから…。」



    ーここは日本のどこかに位置する私立の中高一貫の男子校「御咲学園」。
    今日もまたこの場所で、新たな物語が生まれるかもしれない…。


    -Fin



    素敵なさくつば小説を
    どうもありがとうございました!!


    スポンサーサイト
    [PR]

    [PR]

    ◇ゲストコーナー    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

    Comment

    管理者にだけ表示を許可する

    Top↑

    TrackBack
    TrackBackURL
    http://2emegymnopedie.blog77.fc2.com/tb.php/485-d03812f9

    Top↑