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このサイトは管理人「霧也」によって経営されるオリジナルショタオンリーイラスト漫画サイトです。
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    30kiriya09

    Author:30kiriya09
    こんにちは“霧也(キリヤ)”です。
    同人サークル『gymno』で
    オリジナルショタ漫画等を
    描いています。
    よろしくお願いします。

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    「◇ゲストコーナー 」 の記事一覧
    2011.06.03 Fri
    ゲストコーナー
    ここでは
    皆様が描いて下さった
    「SCHOOLBOYS」・「見習い魔術師の任務!」の動画やイラスト、小説などを紹介していきます。



    ◇動画◇
     (名前順)



    しょうちゃん様

    ・しょうちゃん様がこんなにも素敵で素晴らしい夢の御咲祭OP風MADを作ってくださいました!!(((o(>д<`*)o)))まさに理想のOP映像ですっ!!ありがとうございました!


    蒼様

    ・お友達の蒼くんが、三周年記念を祝してとっても素敵な動画を制作してくださいました。(*´∀`*)
    本当にありがとーう!!!!><


    Ashot様  

    ・2015年のクリスマスプレゼントとして、Ashot様から、ハイクオリティの愛に溢れた動画をいただきました……!!
    本当に感激です。ありがとうございました!!!



    ◇イラスト◇
     (名前順)



    Ashot様 
    ※R-18
    <クリックすると表示します>

    ・Ashotさんが裸ランドセルの四朗くんを描いて下さいました(*´∀`)
    表情が物凄く可愛らしいです>< どうもありがとうございました!!

    ASHOTsama2.jpg
    ・つばさくん誕生日記念ということで、
    Ashotさんが再びとても可愛いイラストを描いてくださいました!
    ひとりひとり個性が溢れていてとても素敵です(*´▽`*)


    雨宮ルキ様
    schoolboys.jpg
    ・誕生日祝いに雨宮ルキさんがとっても可愛らしい友つばを描いて下さいました><*
    本当に可愛くてたまらないです!!><

    schoolboys1.jpg
    ・そしてこちらも誕生日祝いということで双子を描いて下さいました><*
    こちらも本当に二人らしさが絵に現れていて素晴らしいです!!
    本当にありがとうございました!!♪

    rukisan3.jpg
    ・夏到来ということで
    ルキさんがまたまた可愛いスクボの子たちを描いて下さいましたぁあああ!!!
    しかも全員ッ!!!
    こんな素晴らしい絵を頂けるなんて
    僕は本当に幸せです・・・><* どうもありがとうございました!!!

    ※R-18
    <クリックすると表示します>

    ・友×つばさでとってもエロティックなイラストをルキさんが描いてくださいました!!
    これは・・・最高ですッ!!><
    どうもありがとうございました・・・!!!!


    鵲くん
    翔平さんへ

    ・かっちゃんこと鵲くんがなんとなんと友くんを描いてくれました!!
    凄い!!!♪とっても素敵です!!かっちゃんどうもありがとう><


    如月じゅりあ様 
    kisaragisan.jpg
    ・如月さんからとってもカワイイ!友くんとしのぶくんのイラストを頂きましたッ!!!
    二人の楽しそうな表情が本当にカワイイです(*´∀`*) 
    どうもありがとうございました!!

    如月じゅりあ様2
    ・如月さんからこんなにも可愛らしいイラストを頂きましたあああ!!!(((o(*゚▽゚*)o)))
     二人の役割分担もマッチしていてとっても素敵です・・・(*´ω`*)
     どうもありがとうございましたぁああ!!!


    京太様
    kyouta1.jpg
    ・トナカイコスプレの月くんです!太ももたまらないw


    ◆クロネ様
    kuronesama.jpg
    ・クロネさんがカッコ可愛い赤峰兄弟を描いてくださりました!
     この服装は、あの漫画のときのものですね。
     どうもありがとうございました!!



    ぐれいす様
    gureisusan.jpg
    ・グレイスさんがアナログで作哉くんを描いてくれました!!表情が凄く可愛いですww


    昂永様
    kouei1.jpg
    ・ショタケお疲れ!ということで描いてくれた友くん!ありがとう!!

    to Kiriya
    ・誕生日祝いでコウエイくんが素敵なイラストを描いてくれました!><
    どうもありがとう!!


    dougrus様
    image0.jpg
    ・小、中学校からの友達のダグラス君が森海友くんを描いて下さりました!!!ありがとーう!!
    t2.jpg
    ・だぐらす君がまたまた友くんを描いてくれました!!!
    二度にわたり可愛い友くんを本当にありがとうござます><><


    ティックル様 
    ティックル様
    ・ティックルさんお誕生日イラストということで、素敵なイラストを描いてくださいました!!
    ありがとうございます!朔くん、ユウヒくん、とっても可愛いです♪


    ◆七介様 
    七介様1

    七介様2

    七介様から、こんなにも可愛らしい『しのぶ』と『慎太郎』のハロウィンイラストをいただきました♪
    しのぶは太もも。慎太郎は背中がとてもセクシー(*´▽`*)
    どうも、ありがとうございました!!


    ◆null様  NEW!!!
    securedownload.jpg

    ・海外の方のnullさんが
     可愛くてちょっぴりエッチなバニーつばさくんを描いてくださいました!
     ありがとうございます。


    ねぎ様
    kiriya-hbd.jpg
    ・なんとなんとぉおお!
    ねぎくんが誕生日祝いに友くんを描いてくれましたああああ></////
    競パン姿たまらんです!!!! どうもありがとう!!!!!


    トト様 
    totosama.jpg
    ・ゲーム「SCHOOLBOYS!-夢の御咲祭編-」しのぶルートのワンシーンを
    トトさんが描いてくださいました( ´ ▽ ` )
    こんなに可愛くて綺麗なしのぶを描いて下さりありがとうございました!!


    水葵様
    536164190.jpg
    ・水葵さんが誕生日祝いということで
    友つばしんちゃんを描いて下さいました!!!本当に可愛らしい3人をどうもありがとうございます><*
    しんちゃんが特にお気に入りです♪


    ユウ。様 
    yuusama.jpg
    ・ユウ。さんが
    とてもとても可愛い友くんを描いてくださいました(*゚∀゚*)
    この元気でやんちゃな雰囲気がたまりません><
    ありがとうございました!!


    悠様 
    yu-sama.jpg
    ・悠さんが
    全員集合イラストを描いてくださいましたぁああ!!
    ひとりひとりが本っっっ当に可愛いです(*´ω`*) 
    ありがとうございました♪


    ラヴィル様
    raviru1.jpg
    ・銃剣を持つ作哉くん!本編は学園物なのに何故か似合っていて不思議ですw

    raviru2.jpg
    ・軍服姿のしのぶくん!こちらも本編とは全く関係ない衣装ですけどとっても似合っていて素敵ですw


    ◆匿名(※本人希望により)
    ※R-18
    <クリックすると表示します>

    ・とあるお方から頂きました!/// あの四朗くんがこんな姿に・・・!!
    た、たまりませんね><



    ◇小説◇
     (名前順)



    貝塚ともき様

    SCHOOL BOYS -番外編-
    スクボと同じ世界軸で繰り広げられる別の男の子達の物語です!!
    こちらの子達もとっても可愛らしいです♪

    ◆シンク様◆

    ※R-18夜道は不審者に気をつけて
     雪緒×作哉のお話です。さっくんが狐様にとんでもないことをされちゃいます♥

    蒼様

    SCHOOL BOYS外伝 ~友 過去編~
     今までにない感じのシリアスなお話です!

    つっくん様

    見習い魔術師の任務!(純粋バトル)
    ユウヒくん達のそれぞれの特徴を捉えて下さっていてとても楽しめました!
    オリジナル技とてもカッコよかったです><

    ◆Tomocchi様

    ツッキーのムーンナイトダイアリー_1学期編_
    「もしも月君が日記をつけていたら」という内容です!

    ◆ナカやん様

    穂海作哉の恋愛事情 
    作哉×つばさの、ニヤニヤほのぼのちょびっと切ない小説です。

    ツンデレボーイの初デート  NEW!!!
    『スクールボーイズ歩』クリア後設定の作哉×つばさ小説です。
    初々しい2人のやり取りをどうぞご堪能あれ!

    にるにる様

    ※R-18双子の兄を寝取られる弟
    月と空があんなことに・・・wたまらないですww

    ※R-18ドS男子生徒の豚いじめ
    ドS作哉のエロ小説!最後の展開がこれまたもう・・・w

    ◆山田太郎様

    ※R-18バレンタインデー〈R-18〉
    朔×つばさ という
    今までにない組み合わせのエロエロな内容です////




    改めてまして
    描いて下さった皆様
    どうもありがとうございました!!
    これからもどうぞよろしくお願いします!^^

    ・その他にもpixivにてたくさんのイラスト・小説を描いて頂いております!
    そちらの方も是非ご覧ください♪ こちら <ピクシブ百科事典『SCHOOLBOYS!』>

    ・最近ではニコニコ動画の方でも、SCHOOLBOYS!関連の動画が増えてきました!
    是非ご覧ください♪ こちら


    皆様のイラスト・小説・動画など
    随時お待ちしております♪
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    ◇ゲストコーナー    Comment(3)   TrackBack(0)   Top↑

    2011.06.02 Thu
    ツンデレボーイの初デート
    ナカやん様からいただいた、
    穂海作哉×一ノ瀬つばさの小説2作目です。(1作目はこちら♪)


    ‐Prologue‐

    ○月△日

    17:00 / 御咲市内商店街


    「ヨッテラッシャイ! ミテラッシャイ!」

    「ミンナ大スキ、福引コーナーヤッテマース!」

    「何だあの怪しげなレッサーパンダは…」


    ある日の学校帰り、作哉が商店街を通ると2体のレッサーパンダ(の着ぐるみ)が客引きをしている所に遭遇した。


    (面倒臭え…。別に興味ねえし目合わせないようにしてさっさと商店街抜けるか…)


    作哉が歩みを速めたその時


    「ソコノ少年、ヨッテカナイ? ミテイカナイ?」

    「…見ていかない。」

    「ツレナイナー。コンナチャンス滅多ニナイヨ?」

    「どうせあれだろ、店のレシートとかがいるんだろ? あいにく持ってねえよ。」

    「イエイエ。今ナラ、オ金ハタダ!」

    「…何か胡散臭いな。」

    「ソンナコトハナイノデス。当タレバ豪華景品ガ待ッテイル!」

    「「サーサー! レッサー! レッサッサー!! ヨッテラッシャイ! ミテラッシャイ!!」」

    「……わかったよ。やりゃ良いんだろ? 1回だけだからな。」


    結局、レッサー達の圧に負けた作哉は渋々福引のガラガラを回すのだった。





    翌日

    8:00 / 御咲学園


    「まさかあんな胡散臭い福引で一等が出るとは…。」


    あの後作哉は、何と一等を引き当ててレッサー達の祝福の舞を受けた。


    (しかし景品っつっても遊園地のペアチケット…どうすっかこれ……。まさか、アイツと行く? いやいやいや、俺なんかが誘っても断られるだろうし。仮に、仮にだぞ? 万が一誘えたとしても気まずくなるのは目に見えてるし…ってああもう! 何で一ノ瀬が出てくるんだよ!!)


    「なーにを身悶えちゃんてんの!」

    「うわぁ! ってお前…奥村?」

    「どうしたの? あ、もしかしてお尻にバ○ブ入れられてて感じちゃったとか?」

    「ンな訳あるか張り倒すぞ!! あ、そうだ…」


    作哉の頭にあるアイデアが浮かんだ。


    「ん、なになに。どったの?」

    「お前って猫山と付き合ってるんだよな?」

    「確かにオイラはサブちゃんと相思相愛精子性愛な仲だけど、それがどうかした?」

    「そんなお前に良いものをやる。」


    そう言うと作哉は昨日当てた遊園地のペアチケットを取り出した。


    「お? 遊園地のチケット?」

    「俺は昨日福引でコイツを当てた。だがあいにく俺には使い道が無い。だからお前と猫山で使ってくれ。」

    「おおー! これでサブちゃんとデートできるではないか!!」

    「だろ? だからこのチケットは…」

    「…と言いたい所だけど、遠慮するよ。」

    「は、何でだよ?」

    「いやぁ、人様が当てたチケットを関係無いオイラが使う訳にはいかないでしょうに。」

    「俺がいらねえからやるって言ってんのに。」

    「使い道が無いって言ってたけど、本当はそんな事無いんじゃない?」

    「な!?」

    「このチケットが当たったって事はすなわちツンデレくんにとってのチャンスが巡ってきた訳よ。そのチャンスを関係ないオイラが潰しちゃいけないからね。」

    「チャンス…?」

    「そう、このチケットでどれだけ急接近できるかにかかってるよん♪」

    「きゅ、急接近って…。」

    「まあそういう事でこの話はお断りするよ。そんじゃ」

    「あ、オイ!」


    慎太郎は1組の教室へ入っていった。


    (何なんだよアイツ…)


    作哉は慎太郎から言われた言葉を思い出し、しばらくその場に立ちつくしていた。


    『このチケットが当たったって事はすなわちツンデレくんにとってのチャンスが巡ってきた訳よ。』

    『どれだけ急接近できるかにかかってるよん♪』

    「急接近できる…チャンス……」





    16:30 / 2年2組


    放課後の2組の教室に残っていたのは、作哉と学級委員の仕事で残っているつばさの2人だけだった。


    「あれ、作哉くん帰らないんですか? 今日は部活無いって聞きましたけど。」

    「ああ…まあちょっとな。」

    「僕なら大丈夫ですよ。もうすぐ終わるので。」

    「いや、そ、そうじゃなくて…」

    「それとも、何か僕に用があるんですか?」

    「あ、や…その…別に……」

    「あとは日誌を提出するだけなので、話があるなら聞きますよ?」

    「う……」

    「……大丈夫ですか?」

    「…………おい。」

    「何ですか?」

    「う…あの……その………」


    緊張と恥ずかしさで躊躇っていた作哉だったが、やがて意を決してつばさにチケットを見せた。


    「それは…遊園地のチケット?」

    「き、昨日福引で当てたんだけどよ…、その…俺の分の他にもう1枚あって、良かったらもらってくれねえかな……って。」

    「でも、それってペアチケットですよね?」

    「そう、だから…良かったら……お、俺と………」

    「……?」

    「俺と2人で、行かないか……?」

    「……!!」


    作哉は顔を真っ赤にさせながらも視線をまっすぐつばさの方に向ける。


    「さ、作哉くんと…遊園地……」

    「あ…い、いや冗談だよ冗談! ほ、本気にすんなよ! どうせ俺と行っても楽しくないだろうし2枚ともお前にやるから1組の委員長とでも2人で行っ」

    「良いですよ。」

    「は!?」

    「一緒に行っても……良いですよ。」

    「え…、まっマジで良いのか? 俺と2人でだぞ?」

    「はい。確かに友くんとも行ってみたいですけど、せっかく作哉くんが誘ってくれたんですから…。断る理由なんてありません。」

    「お、俺はそんな…別に……」

    「作哉くん、顔赤いですよ?」

    「う!? な、何でもねえよ! それより、次の日曜空いてるか?」

    「あ、はい。その日なら空いてますよ。」

    「じゃあ、そこで行くぞ。待ち合わせの時間とかは後で連絡する。」

    「はい、わかりました」

    「そ、そんじゃあな!」


    作哉はそう言い残すと、猛ダッシュで教室を後にした。





    18:30 / 花乃湯


    いつものように慎太郎が番台に立っていると、見覚えのある人物が入ってきた。


    ガラガラガラ…


    「あ、いらっしゃ…ツンデレくん!?」

    「よう。」


    入ってきたのは作哉だった。
    慎太郎は突然の同級生の来客に驚いたものの、彼のいつになく真剣な表情を見てその真意を汲み取った。


    「その……風呂入らせてくれ。」

    「うん、今案内するね。」




    「悪かったな。急に来て。」

    「いやいや、お客さんは1人でも多い方が良いからね。……で、どうだった?」

    「…成功した。」

    「おおっ良かったじゃん! 急に深刻な顔で来たもんだから失敗しちゃったのかと思ったよ。」

    「失敗してたらお前の所なんか来ねえよ。」

    「それもそうか。」

    「…お前って、誰かと2人きりで出かけた事ってあるか?」

    「んもう、素直にデートって言えば良いのに♪」

    「うるせえよ!!」

    「オイラはまだ無いなー。」

    「え、そうなのか?」

    「うん、いずれはしたいけどねえ。」

    「そうなのか…」

    「そんな顔しなさんな。誰だって初めてのデートは緊張するもんだから、色々とわからない事が多くて当然よ。」

    「…俺、前に一ノ瀬と2人で動物園に行ったことがあって。」

    「お、なあんだもうデートしてんじゃん。」

    「いや、その時は…仲直りが目的であって、デートとは、ちょっと違ったんだ。森海に説得されて行ったから…。だから、ちゃんと2人で出かけるのは今回が初めてで……って奥村相手に何言ってんだよ俺は!!」

    「大丈夫。事情はわかったよ。」


    不安な表情を見せる作哉に慎太郎は優しく声をかける。


    「オイラもきっとサブちゃんと2人きりでデートってなったら、やっぱり緊張するだろうなあ。」

    「お前はあんまりしなさそうに見えるけど。」

    「そうでも無いと思うよ。どんなに学校でイチャイチャしてても、そういう場面で2人きりっていうのは、学校での雰囲気とは全然違うと思うな。」

    「そういうもんなのか…。」

    「だから悩むのは当然。むしろもっと気楽に構えて良いと思うよ。そりゃどうすれば相手に楽しんでもらえるかも大事だけど、その事で頭がいっぱいで自分が楽しめないなら、それはデートとして成立しないとオイラは思うな。」

    「なるほど…。気負い過ぎるのもダメなんだな。」

    「そゆ事!」


    そう言って慎太郎は悪戯っぽく微笑みながら作哉を見る。 


    「ツンデレくんなら絶対成功すると思うよ。頑張ってねん♪」

    「ああ、ありがとな。」

    「あ、もしデートが終わってホテルに直行するんならオイラがその後の手解きを懇切丁寧にねちっこく教えてあげ」

    「丁重にお断りします。」





    ○月▽日

    22:00 / 穂海家


    デート前日、作哉は自室に籠り明日の計画を練っていた。


    「まさか一ノ瀬がOK出すなんて。嬉しいけど、無理とかしてないよな…。」


    作哉は近くにあった雑誌に手を伸ばす。
    遊園地の定番デートコースや初デートの成功法などが載っている。


    「まあ、行くのは決まったんだ。そこからどうするかだよな…。」


    作哉は日付が変わるギリギリまで雑誌とにらめっこをしていた。



    ‐MainStory‐

    ○月◇日

    8:15 / 某駅前


    「無事に一ノ瀬ん家の最寄り駅に着いたは良いけど、まだ約束の15分前…。ハッ、さすがに張り切り過ぎか…。」


    そう自嘲する作哉の元に、1人の少年が駆け寄ってきた。


    「お待たせしました!」

    「い、一ノ瀬…?」

    「おはようございます! 作哉くん早いですね。もしかして待たせちゃいました?」

    「いや、お、俺も今来たばっかだから…別に…。」

    「そうでしたか。じゃあ今日はよろしくお願いしますね。」

    「お、おう……こちらこそ…。」





    10:00 / 遊園地エントランス


    遊園地に着くと、既に開園を待つ人で賑わっていた。


    「結構並んでんな。」

    「日曜日ですからね。それにしても、昨日は全然寝られなかったんですよ。遊園地に来るのは初めてだから…。」

    「俺も緊張してあんま寝れてない…。」

    「僕、昔から遠足とか旅行とか、次の日がお出かけっていう日の前の晩はあまり寝られないんですよ。ワクワクしちゃって。」

    「わかる。楽しみって時は脳が冴えるもんな。」

    「そう! なんかすごく張り切っちゃって。あ、そういえばツバサちゃんは大丈夫ですか?」

    「ああ、アイツには来る前にエサもやったし。何かあった時には森海達にも協力してもらうよう話してあるから。」

    「友くん、今日学校なんですか?」

    「アイツ今日補習だってよ。今頃猫山とヒイヒイ言いながら課題やらされてるんじゃねえか? クククッ」

    「良かったぁ…。僕、今回は赤点免れたんですよ! 作哉くんは大丈夫だったんですか?」

    「大丈夫だから今こうやってお前と遊園地来てるんだろ? まあ、今回は一ノ瀬も頑張ったみたいだな。」

    「はい、今回は勉強する範囲を間違えませんでした!」

    「いや、そこドヤ顔する所じゃねえだろ…。」

    「フフフ…あっ、もうすぐ開園みたいですよ。今日はいっぱい楽しみましょうね!」

    「ああ。そんじゃ、行くか!」

    「はいっ!」





    10:30 / ジェットコースター


    「遊園地に来たらやっぱりこれだよな!」

    「これがジェットコースター…。」

    「あ、一ノ瀬って絶叫系とか大丈夫なのか?」

    「の、乗ったことないだけなので多分平気!…かと。」

    「おいおい大丈夫かよ…。」

    「だ、大丈夫ですよ! 僕も乗ってみたかったですし、食わず嫌いもよくありません!」

    「お、次俺ら1番前だ! ラッキー♪」

    「ええ!? 1番前…緊張します……。」

    「だから無理すんなって…」




    「それでは、行ってらっしゃーい!」


    ガイドに見送られ、作哉達を乗せたコースターが動き出した。


    「テレビではよく見るけど、実際乗るとこんな感じなんだ…。」

    「このスリルがたまんねえんだよな! もうすぐ頂上だから覚悟しとけよ。」

    「え!? ちょ、ちょっと待ってください! まだ心の準備が…」


    コースターが頂上に到達すると共に、スピードを上げて急降下していく。


    「わあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

    「一ノ瀬すげえ悲鳴だな。あと鼻水出てるぞ。」

    「ひ!? 今そんな事言わないでくださいよ! ってああああまた落ちるううううう!!!!!」

    「イヤッホー♪」




    「すっごく速かったですね。ビックリしちゃいました。」

    「ああ、すげえ爽快だったな。一ノ瀬の間抜けな鼻水顔も見れたし。」

    「そ、それを言わないでくださいよ! 顔が寒かっただけです!」

    「顔も真っ赤だったもんな。」

    「むう…」


    (う…拗ねた一ノ瀬も可愛い……)


    「…何ですか? 僕の顔に何か付いてますか?」

    「な、何でもねえよ!! そっそれよりほら、次行くぞ?」

    「そうですね。」

    「なあ、次ここ行ってみねえ?」





    11:30 / お化け屋敷


    「お、おおおお化け屋敷…!?」

    「前から行ってみたかったんだよなー!」

    「ぼ、僕怖いから待ってようかな…。」

    「何ビビッてんだよ。それに列ももうここまで来たんだから抜けられねえだろ。」

    「ええー!!」


    そしてあっという間に入口へたどり着く。


    「お待たせしました。何名様ですか?」

    「2人で」

    「それでは2名様中へどうぞ。」


    覚悟を決めて中に入る2人。


    「うわっ、マジ暗え…。」

    「うう、怖いです…。作哉くんはこういうの平気なんですか?」


    つばさは早くも涙目になっている。


    「ば、馬鹿野郎! お、俺がこんなん怖がるわけなななないだろ!」

    先ほどまで平常心だった作哉でも、いざ中に入ると結構怖いらしい。


    ガタンッ


    「うわっ!」

    「ひゃああ!!」


    少しの物音でこの反応である。


    「…なあ、一ノ瀬。何で腕組んでんだ…?」

    「だって怖いじゃないですか! こうでもしないと落ち着いていられなくて…」

    「…ったくしょうがねえなぁ。はぐれんじゃねえぞ。」

    「は、はいぃ…」


    (い、一ノ瀬と腕組んでる…。正直怖えけどお化け屋敷来て良かったかも……)


    違う意味でなかなか先に進めない作哉なのであった。




    「うおおおおおおお!!」

    「うわああああああ!!」


    その後も次々と2人の絶叫が響き渡る。


    「お、おい…もうすぐ出口みたいだぞ。」

    「ホントですか!? やっと出られるんですね…。」


    ようやく出口を見つけて安堵する2人。しかし…


    「…なぁ、何か嫌な感じしねえか?」

    「さ、作哉くんそんなの気のせいですよ早く出ましょうよ!!」


    すると2人の目の前に、髪の長い血まみれの顔のマネキンが上から降ってきた。


    「「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」」


    2人は今日一の悲鳴を轟かせ、一目散に出口へ向かって走っていった。




    「ハァ…ハァ……やべぇ超怖え……」

    「だから早く出ましょうって言ったじゃないですかぁ!!」


    2人の顔は悪く、特につばさは半泣き状態である。


    「わ、悪りぃ…。」

    「でも、作哉くんでもホラーは苦手なんですね。」

    「う、うるせえよ!」

    「でも、怖い気持ちは一緒なんだって思えたから、最後まで突破できたのかもしれません。」

    「そ、そうか…。」


    すると作哉は、近くに止まっていたワゴンに目を向けた。
    ワゴンには遊園地のグッズが陳列されており、その中に動物の耳を模したカチューシャが売られていた。
    作哉はその中の1つに目を付けた。


    (あの犬耳…一ノ瀬に付けさせたい……)


    「作哉くん、何見てるんですか?」

    「うわっ!? な、何にもねえよ。」

    「あ、あの車でお土産を売ってるんですね。せっかくだから見ていきましょうよ。」

    「お、おう。そうだな…。」


    ワゴンの前に着いても作哉はなお犬耳カチューシャに釘付けになっていた。


    (あの犬耳を一ノ瀬に付けさせたい犬耳を一ノ瀬に付けさせたい犬耳を一ノ瀬に付けさs)


    「作哉くん、あのカチューシャが気になるんですか?」

    「う、ちっ違えよ!!」

    「作哉くんにお似合いだと思いますよ?」

    「ち、違う!! 俺が付けたいんじゃなくて!」

    「でも、かなりジーッと見てましたよ?」

    「う…アイツに…ツバサの耳と似てるなって思っただけだよ!」

    「確かに似てますね。」

    「ほら、土産なんてまだ早いしさっさと次行くz」

    「せっかくだから買って付けてみませんか? ……お揃いで。」

    「え!!??」

    「ダメ…ですか?」

    「いや、べ、別に…お前がしたいって言うなら……」


    (一ノ瀬と…お揃い……)


    そして


    「あ、作哉くんやっぱり犬耳似合ってますよ!」

    「そ、そうか?」

    「やっぱり僕なんかが付けても似合わないですよね~。」


    (いやいやいやいや、超絶ドストライクなんですけど!! 可愛すぎて直視できねえ!!!!)


    「いや、そ、そ、そんな事ななな無いと思うぞ。」

    「本当ですか? そう言ってくれて嬉しいです。」


    つばさがニッコリと微笑む。


    「そうだ! 良かったら2人で写真撮りませんか?」

    「え!? あ、い、良いぞ。うん。」

    「じゃあ僕のスマホで撮るので近くに寄ってください。」

    「こ、こうか…?」

    「バッチリです! じゃあ行きますよ。はい、チーズ♪」


    カシャッ


    「うん…上手く撮れました! あとで作哉くんの所にも送りますね。」

    「ああ、サンキューな。」

    「そろそろお昼ご飯にしませんか? 僕お腹空いちゃって…。」

    「もうこんな時間か。んじゃ行くか。」

    「はい!」


    (今日の一ノ瀬、何で積極的なんだよ…。ズリィよ、マジで…)





    13:00 / カフェテリア


    「やっぱ混んでんな。俺買ってくるから席取っといてくれ。メニューは何が良い?」

    「あ、わかりました。じゃあ…あの1番オススメのハンバーガーで。」

    「わかった。じゃあ頼んだぞ。」


    作哉に頼まれ、空席を見つけて先に座って待つつばさ。


    (あ、そういえば飲み物の事言い忘れてた! 炭酸来たらどうしよう…)


    しばらくして、作哉が戻ってきた。


    「あ、ありがとうございます! それと作哉くん、実は僕炭酸が苦手d」

    「ん」


    作哉はつばさの分のトレーを差し出す。
    その上には頼まれていたハンバーガーと飲み物のカップが置かれていた。
    カップを覗くと…


    「あ、オレンジジュース…」

    「…これで良いんだろ?」

    「あ……ありがとうございます!」


    お互い向かい合って座り、食べ始める。


    「作哉くんもハンバーガーにしたんですか? これ美味しいですよね。」

    「ああ。マ○クのより美味えな。」

    「あれ、作哉くんも飲み物オレンジジュースなんですか? 炭酸系を飲んでるイメージがありました。」

    「…まあな。なっくんならよく飲むし。」

    「そうなんですね。ふふっ、作哉くん顔にソースが付いてますよ。」

    「え、あ……」


    すると、つばさが紙ナプキンを手に取り、作哉の口元をそっと拭き始めた。


    「!!!!!?????」

    「はい、取れました。作哉くん子どもっぽい所あるんですね。」

    「ちょ、おまっ、何す…………」


    作哉は突然の出来事に赤面していた。


    「…ったく、俺は赤ちゃんかっつーの。」


    作哉は近くにあったカップを手に取り、恥ずかしさをかき消すかの如く中のジュースをストローで一気に飲み干した。


    「ちょっ、作哉くん!?」

    「あ、何だよ?」

    「そ、それ……僕の…………」

    「え」


    そう、作哉は自分のと間違えてつばさの分を飲んでしまったのだ。


    「わあああああっ!! 悪い!! その、気が動転して…」

    「だ、大丈夫ですよ!! 別にその、気にしてないですから!」


    作哉は思わず口元を押さえた。
    顔が茹でダコのようにみるみる真っ赤になっていく。


    (こ…これって、間接キス……)


    何とか2人とも落ち着いたところで、店を出る事になった。


    「あ、そういえばハンバーガーいくらしました?」

    「いいよ、そん位俺が払う。」

    「え、でも…そんな、ちゃんと払いますよ?」

    「俺が良いって言ってんだから良いんだよ。」

    「えっと…じゃあ、ご馳走様です!」





    14:00 / 3Dシアター


    「このメガネをかけると画面にいるキャラクターが飛び出して見える、か…。」

    「うわああ!! レッサーパンダが飛び出て来た!」

    「マジだ! すげぇ…」

    「最新技術ってすごいんですね…。」





    15:00 / メリーゴーランド


    「僕、前から乗ってみたかったんですよこれ!」


    初めてのメリーゴーランドにはしゃぐつばさを作哉は後ろからスマホのムービーで撮っていた。


    「作哉くん? スマホ構えて何やってるんですか?」

    「な、何でもねえよ!」





    15:30 / コーヒーカップ


    「カップルが多いですね。次は友くんと2人で乗ってみたいなぁ…って作哉くん鬼のような形相でハンドル思いっきり回さないでください速い速い速い!!」

    「フン」




    「…さすがに回し過ぎた。ちょっと休みたい。」

    「もう、作哉くんがあんなに速く回すからじゃないですか! 自業自得ですよ?」


    外のベンチを見つけ、2人で腰掛ける。


    「悪りぃ。何て言うか、歯止めが効かなくて…」

    「ふふっ」

    「な、何だよ…」

    「あ、いえ。何か…作哉くんって可愛い部分もあるんだなって。」

    「な……何言ってんだよ!」


    つばさの一言で顔を赤らめる作哉。
    今日だけでもう何回顔が真っ赤になっただろうか。





    16:30 / スーベニアショップ


    「そろそろお土産を見ましょう。皆に何か買って帰りますか?」

    「考えてみろ。ヘタに遊園地のお土産なんか渡したら絶対皆に何か言われるだろ? 特に奥村とか冷やかしてきそうだし。」

    「あ…それもそうですね。でも友くんには何か買ってってあげようかな。」

    「お前って本当アイツの事好きだよな。」

    「え!? いや、あの…その……」

    「…冗談だよ。ったく、羨ましいぜ。」

    「友くんが羨ましいんですか?」

    「あ、な、何でもない……。」

    「? …そうですか。じゃあ僕先にお会計並んでますね。」


    そう言うとつばさはお土産の入ったカゴを手にレジへ向かった。
    作哉も後に続いてレジの列に並んだ。


    「ついついいっぱい買っちゃいました…エヘヘ。」

    「お前…結構買ったんだな。」

    「来月はお金節約しなきゃですね。」

    「…えーっと……」

    「どうしました?」

    「う……じ、実はだな…その、1個間違えて買っちまったヤツがあるからもらってくれねえかなぁって。」

    「これ、さっきのワゴンで見たレッサーのストラップ…本当に良いんですか?」

    「べ、別に俺が選んだ訳じゃねえし! 気がついたらカゴに入ってたんだから…良いんじゃねえの?」

    「ありがとうございます!! せっかく作哉くんが買ってくれたんですから大切にしますね!」

    「だから俺が選んだなんて一言も……わかったよ。ぞんざいに扱ったらタダじゃ済まねえからな。」

    「もちろんです! あ、あと最後に乗りたいものがあるんですが…」

    「別に良いけど…何だ?」





    18:00 / 観覧車


    「僕、最後はこれって決めてたんです!」

    「お前も結構考えてたんだな。」

    「だって初めての遊園地ですから。そういえば、作哉くんと2人きりっていつ以来でしょうか…。」

    「こないだ2人でコロッケ食って帰っただろ。」

    「あ、そうでしたね。」


    観覧車に乗った2人はお互い隣り合って座っていた。


    「ふぁぁ…あ、悪い。欠伸しちまった。」

    「今日はたくさん動きましたからね。でも楽しかったですね。」

    「ほ、本当か!?」

    「はい! だから、今日は作哉くんと来れて良かったって思ってます。」

    「お、俺も…お前と来れて……その、良かったぞ……」

    「そう言ってくれて僕も嬉しいです。あ、そうだ! これ、作哉くんに。」

    「これって……」

    「ワゴンで犬耳買った時、作哉くんもレッサーのストラップ見てましたよね?」

    「う、バレてる……」

    「今日はいっぱいお世話になりましたから、何かお礼をしなきゃと思って。さっき作哉くんがトイレに行った時にこっそり買ったんです。これでストラップも僕とお揃いですね。」

    「え、でも……」

    「僕が良いって言うんだから、良いんです!」


    作哉が昼間に言った台詞をそのまま返すつばさ。


    「わかったよ。そこまで言うならもらってやるよ…。その……あ、ありがとな。」

    「いえいえ! お互いさまです。」

    「…一ノ瀬とこうして2人でいるって、何か夢みてえだな……。」


    「夢じゃないですよ。ほら…」



    そう言うと、つばさは作哉の手を優しく握ってきた。



    「つ……つばさ!!??」

    「今日だけ特別、ですよ?」



    悪戯っぽく微笑むつばさ。
    動揺してつばさを下の名前で呼ぶ作哉。
    2人を乗せた観覧車は、丁度てっぺんの位置に到達していた。
    窓から差し込む夕日が2人を照らし出す。


    その後観覧車が地上に戻るまでの10分弱の間、2人は手を繋いだまま、無言でそのひと時を噛みしめるように過ごしていた。
    特に作哉は、終始顔がこれまでにない程真っ赤になっていた。
    つばさの方も少しだけ頬を染めていた事に、作哉は気づいていなかった。





    19:00 / 帰路 (つばさ視点)


    「ん……あれ、もう宝咲か…。」


    帰りの電車の中で寝てしまった僕は目を覚まし、車内を見渡した。
    終点に近づくにつれて乗客は次々と降りていったらしく、今いる車両には僕達しかいないみたい。
    隣を見ると、作哉くんが僕にもたれかかってまだ寝ている。
    作哉くんも昨日までずっと計画を立ててくれていたみたいだし、今日もずっと動き回ってたから疲れてるのかな…。
    そういえば、作哉くんにまだちゃんとお礼を言ってなかった気がする。
    作哉くんとは降りる駅が違うから、言うならもうここしか無いけど…寝ちゃってるからなぁ。
    でも作哉くんが起きてたら、お礼なんていいって言われちゃいそうだし、作哉くんが寝てる今なら素直な気持ちで言えるよね。
    僕は起こさないように作哉くんの耳元に顔を近づけ、囁いた。


    「作哉くん、今日は1日お疲れさま。作哉くんに誘われて、その…ビックリしたけど、僕のためにずっと準備してくれてたんだよね。遊園地に行ったのはこれが初めてだったけど、作哉くんのおかげでとっても楽しかったよ。それに作哉くんが楽しんでる所を見ると、何だか昔に戻れたみたいで僕も嬉しかった。だから……

    ありがとう、作哉くん。」


    …作哉くんはまだ寝てるみたい。
    そろそろ起こそうと思った時、作哉くんがムニャムニャと何かを呟いているのが聞こえた。


    「…俺も、楽しかった…ぞ……。ありがと…な……つばさ…………」



    ‐Epilogue‐

    ○月□日

    8:00 / 御咲学園


    デートの翌日、作哉はいつも通り通学路を歩いていた。
    時折スマホの画面を覗いては、1人でニヤけている。
    教室に着くと、クラスメイトの明るい声が出迎える。


    「穂海おはよー!」

    「おう」

    「あれ、穂海その鞄に付けてるストラップどうしたの?」

    「え!? ああ…まあ、ちょっとな。」

    「穂海にこんな趣味があるとは思えないからな。ひょっとして誰かにもらったとか?」

    「何でそうなるんだよ!」

    「お、その返事は図星だなー♪」

    「ンな訳ねえだろ木村!!」


    と、そこへ三朗が教室に入ってきた。


    「穂海! ちょっと来てくれへん?」

    「ん、どうしたんだよ…。」


    三朗に連れられ廊下の端まで来た作哉。


    「で、何なんだよ?」

    「聞いたで穂海! お前、遂にやったな!!」

    「は? どういう意味だよ?」

    「知ってるで、一ノ瀬とデートしたんやろ?」

    「な!!??」

    「こないだ一ノ瀬から相談されたんや。穂海と遊園地に行く事になってどうすればエエかって。」

    「そうか、だから昨日は一ノ瀬がやけに積極的だったのか…。」

    「え、そうやったん? そんなアドバイスはせえへんかったと思うけど…。それより積極的ってアレか? 一ノ瀬にキスでもされたんか!?」

    「な!!?? ンなのある訳ねえだろ!!」

    「さすがにまだそこまでは行かへんか。あーあ、補習さえなければこっそり遊園地に忍び込んで2人の仲睦まじい様子をウォッチングできたんやけどなぁ。」

    「おいコラ」

    「冗談やって。あ、でも安心しい。デートの事は内緒にしといたるから。俺は穂海の味方やからな♪」

    「……そうしてくれると助かる。」


    教室から戻ると、ちょうどつばさが登校した所だった。


    「おはようございます!」

    「おう」

    「おはよーさん!」


    三朗はつばさと目くばせし、「やったな!」と言わんばかりのウインクをした。
    つばさはそれに小さな会釈で応える。
    と、作哉の鞄がつばさの目に留まる。


    (これ、昨日僕があげたストラップだ! 作哉くん付けてくれたんだ…)


    すると、伊藤がつばさの鞄にもレッサーのストラップが付けられている事に気づいた。


    「あれ、一ノ瀬も鞄にレッサーパンダのストラップ付けてるんだな。」

    「ふぇ!? え、えーっと…」


    (一ノ瀬が…俺があげたヤツ付けてくれてる……)


    「しかもこれ穂海のと同じじゃない?」

    「!?」

    「き、気のせいですよきっと!!」

    「確かこのストラップ、前に吹部の先輩が色違いの同じヤツを持ってるの見たけど、とある遊園地にしか売ってない限定物だって言ってたよ。」

    「「な!!??」」

    「佐藤それ本当なのか!?」

    「って事はこの2人、もしかして…」

    「!? お、お前ら変な事言うんじゃねえよ!!」

    「何だ! 大スクープでも見つかったのか!?」

    「そんなのスクープでも何でも無いですよ! あと小島くんも無言でこっちにカメラ向けないでください何も無いですからあ!!」

    「青春って、エエなぁ…。」


    すると騒ぎを聞きつけ慎太郎がやってきた。


    「お、何か楽しそうじゃん!」

    「ゲ!? 奥村お前は本当マジで来んな!」

    「良いじゃん! 一緒にお風呂に入った仲なのに…」

    「奥村!? お前まさか俺がおるのに穂海と…」

    「違えよ! たまたま奥村ん所の銭湯に入っただけだから別に何も無えよ! 奥村も誤解されるような言い方すんな!」

    「大丈夫。オイラは何があってもサブちゃん一筋だからね♪」

    「ならエエんやけど…」

    「ツンデレくんも、あとで感想聞かせてね♪」

    「穂海、お前やっぱまさか…」

    「な!? だから違えって!! あんなの奥村の冗談に決まってるだろ? ったく、どいつもこいつも好き勝手言いやがって。」


    そう言いながら作哉がポケットからスマホを取り出し操作しようとした時、誤ってスマホが手からスルリと落ちた。
    間一髪で近くにいた木村がキャッチしスマホは無事だったものの、手がホームボタンに触れ画面が起動した。


    「っと、 大丈夫か?」

    「うぇ!? ヤバッ」

    「傷は付いてないみたいだな……って、え? この待ち受け…」

    「!! おい見るな馬鹿!」

    「ん、どれどれ…」

    「ほぉ……」

    「これは…」

    「決定的ですね。」

    「あうぅ……」

    「穂海、一ノ瀬、俺は何も見てへんで……。」


    作哉の待ち受け画面には、あの日2人で撮った犬耳ツーショット写真が表示されていた。
    その後、教室中に2人の悲鳴がこだまし、クラスメイトから尋問を受けたのは言うまでも無い。


    一方、慎太郎はその様子を廊下から眺めながら、手元の"恋愛相関図ノート"に何かを書き足していた。


    『穂海作哉 初デート大成功!!』



    -Fin



    まさか2作目の小説をいただけるなんて本当に嬉しいです!
    歩の設定を受け継いだ素晴らしい【作哉×つばさ】小説を
    どうもありがとうございました!!


    ◇ゲストコーナー    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

    2011.06.02 Thu
    穂海作哉の恋愛事情~みんなでバスケ!~
    ナカやん様からいただいた、
    穂海作哉×一ノ瀬つばさの小説です。



    -①

    ここは日本のどこかに位置する中高一貫教育を成す私立の男子校「御咲学園」。
    ここ数年生徒数は増加傾向にあり、毎日盛んに授業が行われている。
     

    中等部2年1組と2組の今日の4時間目の授業は、両クラス合同で行われる体育。
    その授業中、1組vs2組で1ヶ月後にスポーツ対決を行う事が決まった。
    スポーツ対決は両クラスにとってはお馴染みのイベントであり、これまで様々な種目で勝負してきた。
    今回の競技種目はバスケである。ここで早くも、両クラスで火花が散る。

    「前回のバレー対決はお前らのアホな作戦のおかげで勝てたし、今回も楽に勝てそうだな。
    何せバスケは得意だからな。今回も俺たち2組がちゃんと勝ってやるからな~。」

    と、1組を煽っているのは2組の穂海作哉。彼はバスケ部所属である。

    「な、なんだとー!! バスケだったらこっちにはまっつんがいるもん、簡単には負けないからな~!!」

    と、2組の挑発に乗っているのは1組学級委員長の森海友。
    まっつんというのは1組で唯一バスケ部に所属している松田のことだ。
    また、遠くから友を好意の眼差しで見つめているのが2組学級委員長の一ノ瀬つばさ。
    作哉はそんなつばさの視線に気づくと、高慢な態度から一転、急に不機嫌になった。

    「ったく、どいつもこいつもやってらんねー。」

    「はぁ!? 先に仕掛けてきたのはそっちじゃんかー!」

    「まあまあ2人とも落ち着いて。ここで争ってもしゃーないし、続きは本番で決着つけたらええやん。な?」

    喧嘩寸前の作哉と友を独特の関西弁でなだめる2組の猫山三朗。彼もまた、バスケ部の部員である。

    「さぶちゃんがそう言うなら別にいいけどさ…」

    「ほら、穂海もこれでおしまい。」

    「チッ」

    お互い険悪なムードが残ったまま、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

     

    ー昼休み

    「なあ穂海、さっきどないしたん? 急に不機嫌になりよって。あとで森海に謝らなアカンで?」

    「別に何でもいいだろ。気分なんて俺の勝手だし。」

    「そんなんやから毎回周りに変な目で見られるんとちゃう?」

    「そんなのお前には関係ないだろ。」

    「そうは言うても…」

    すると、2人のもとにつばさが現れた。

    「あ、あの…今忙しいですか?」

    「うわっなんや一ノ瀬か。てっきりあの変態大明神かと…。」

    「はぁ? 変態大明神?」

    「頼むからそこ突っ込まんといてくれ…。」

    「で、一ノ瀬は何だよ?」

    「あ、あの、2人にお願いがあって……」

    「「お願い?」」

    「はい。その、えっと…その……」

    「何だよ、用件あるならさっさと話せよな。」

    「せやからその言い方がマズい言うてんねん! 一ノ瀬どないしたん?」

    「はい。あ、あの…ぼ、僕にバスケを教えてください!!」

    「バスケを…」

    「教える?」

    「はい。1ヶ月後のスポーツ対決に向けて、練習してうまくなりたいんです!」

    「へぇー、今回はえらく乗り気やな。何かあったん?」

    「さっき友くんと話してて、"本番でカッコいい姿見せてね"って言われたんです。
    スポーツとか苦手だから自信ないって友くんに話したらそう言われて…。
    だから、本番で頑張れば友くんにも少しは見直してもらえるかなって…。」

    「アホ毛少年に見直してもらえるかどうかはともかく、戦力になる人物は1人でも多い方がええからな。」

    「ったく、あのアホ委員長のために俺らが協力しなきゃいけねえのかよ…。」

    「またそういう言い方しよる。せっかく一ノ瀬もスポーツ対決に乗り気になってんねんで? 一ノ瀬、俺は構へんで。」

    「あ、ありがとうございます。三朗くん。」

    「でも結局はあのアホ野郎に言われたからだろ? そんな気持ちでだったら俺はゴメンだぜ。」

    「ち、違います!!」

    「!?」

    突然、作哉の言葉につばさが反論した。

    「確かに、友くんとも約束はしました。でも…僕も自分を変えたいんです! スポーツ対決ではいつも足を引っ張ってみんなの迷惑になってしまう。
    そんなのはもう嫌なんです! 友くんだけじゃない、自分にとってもカッコいいって思えるようなプレーをして、みんなで勝利したいんです!」

    「……」

    「でも、バスケはあまりやったことなくて不安なんです。だから…僕にバスケを教えてください。お願いします!! 作哉くん…」

    そういってつばさは、作哉の前で深々と頭を下げた。

    「そこまでするかよ…。」

    さすがの作哉も、これにはたじろぐばかりである。

    「一ノ瀬がここまでして頼んでるんやで? 少しくらい練習付き合ってあげてもええんとちゃう?」

    「……わかったよ。わかったからさっさと顔上げろ。」

    「……!? い、いいんですか?」

    「今回"だけ"だからな! そのかわり、これで負けたら承知しねえからな。」

    「あ、ありがとうございます! 作哉くん。」

    そういってつばさは作哉に笑顔を見せた。

    「ッ…!?」

    「特訓をするのが決まったんはええけど、何からさせたらええんやろ。どう思う? 穂海…おーい、穂海。聞こえてまっかー? 穂海ハーン」

    「…ハッ!? わ、悪りぃ。えっと、特訓何やるかの話だよな。それは俺が考えとく。」

    「お、ええの? ほんなら任したで。あとはいつから始めるかやけど、さすがに今日は無理やから、明日から始めるか?」

    「僕は構いません。」

    「なら明日までには俺も考えとく。」

    「よっしゃ決まりやな! 明日から頑張ろうな!」

    「はい! よろしくお願いします。」

    こうして明日からの特訓が決まり、昼休みが終わった。



    ---

    放課後、作哉は他の生徒よりも少し遅めに校舎を出て、まっすぐある場所に向かった。
    そこは、体育館の裏のあまり目立たない場所。作哉は荷物を置き、茂みに向かって呼びかけた。

    「おいで、ツバサ。」

    するとほどなく、茂みの中から1匹の子犬が現れた。

    「ワン!」

    「元気だったかーツバサ。」

    "ツバサ"と呼ばれた子犬は作哉に向かって駆け出し、作哉によって抱きかかえられた。
    そして作哉は、地面に置いてあった荷物からドッグフードを取り出し、ツバサに与えた。
    そう、作哉はこの校舎裏で、ツバサをこっそり飼っているのだ。
    ツバサの方も作哉によく懐いていて、しつけも完璧になされている。
    何より、作哉はツバサに対して並々ならぬ愛情を注いでおり、普段の態度からは想像もできないほど優しく接している。
    そんなツバサに対し、作哉はしんみりした表情で語りかけた。

    「ツバサ。今日、またアイツに不機嫌な態度をとっちまった。
    お前の前でなら素直になれるのに、なんでアイツの前じゃ素直になれないんだろう…。
    ホント、バカみたいだよな…。」

    当のツバサは、よくわからないといった表情で作哉を見つめている。

    「……そうだよな。こんな事、お前に言ってもわからないよな。ゴメン。」

    そう言って、作哉は表情を曇らせた。
    ツバサは、元気出してと言うかのように作哉の足元に近づき、尻尾を振った。

    「…うん。飼い主がしょげてちゃ意味ないよな。よし、ツバサ、散歩行くか?」

    「ワン!!」

    ツバサは、待ってましたとばかりに作哉の周りを駆け回り、その後リードに繋がれ、作哉と共に学校を出た。





    -②

    翌日。つばさのバスケの特訓が今日から始まる。

    「…おい一ノ瀬。」

    「さ、作哉くん!? 目が充血してますよ…?」

    「そんなの気にするほどじゃねえよ。目薬も射したし。
    それより、今日の放課後、体育着に着替えて校門の前に来い。いいな。」

    「あ、はいわかりました!」

    「今日から特訓頑張るんやで! 俺らも精一杯サポートするからな。」

    「はい、よろしくお願いします。」

     
    ー放課後

    「お待たせしました!」

    「ああ、来たか。」

    「あれ? 三朗くんは…」

    「アイツなら先生の呼び出し喰らってて来れないから、今日は俺がお前の特訓を見る。」

    「そう…ですか。」

    「何だよ。俺だけじゃ悪いのかよ。」

    「あ、いえそういうわけでは…。」

    「まあいい、今から特訓始めるぞ。」

    「えっと、よろしくお願いします…。」

    「お、おう……。と、とりあえずまずは、この校舎の周りを3周走ってこい。スタートとゴールはここだ。」

    「え、走り込み…ですか?」

    「ああ、タイムも計らせてもらうからな。よーい…」

    「ちょ、ちょっと待ってください! どうしてバスケするのに走らなきゃいけないんですか!」

    「んなの準備の一環に決まってんだろ。外周なんて運動部は毎日のようにやるし、お前の運動能力や体力を把握する意味でもするんだからな。」

    「うぅ…持久走は苦手です。」

    「ったく、つべこべ言わずにさっさと位置につけよな。」

    「は、はい…。」

    「準備できたか。今から計るからな。よーい、ドン。」

    こうしてつばさの特訓は幕を開けた。


    「ハァ、ハァ、ハァ…」

    「おいおい大丈夫かよ…。ちょっと走っただけだぜ。」

    「ハァ…走るのは苦手なんですよ……。」

    「バスケの本格的な練習はある程度体力をつけてからの方がいいな…。」

    「す、すみません…。」

    その後、腕立て伏せや腹筋といった準備運動に近いような練習メニューをこなし、この日は解散になった。



    数日後、この日は作哉から用事があるため練習は無しと言われたつばさは、学級委員の仕事を終わらせて他の生徒より遅く校舎を出た。
    校門に向かって歩いていると、校舎裏の方で何やら声が聞こえた。

    「ツバサー! よーしいい子だツバサ!」

    「ふぇっ!?」

    思わず素っ頓狂な声を上げるつばさ。それもそのはず、声の主は自分を呼んでいるのだ。

    (い、今の声は作哉くん!? 一体どういう…)

    おそるおそる声がする方へ近づいていく。
    茂みからそっと様子をうかがうと、作哉と一匹の犬が目に入った。

    「よしツバサ、ご飯だよ。お食べ。」

    「ワン!」

    作哉が差し出したドッグフードを、ツバサは嬉しそうに食べていた。

    (さっき言ってたツバサは犬のこと…? そういえば前に同じ名前の犬を育ててるって聞いた気が…)

    だが、実際に作哉が犬の世話をするところを見るのは初めてで、作哉のつばさに対する普段の態度とは正反対な微笑ましい光景が繰り広げられていた。
    するとツバサは、つばさの気配を察知したのか、彼のいる方向に向かって吠え始めた。

    「ワン! ワン!」

    「ん、どうしたツバサ? 誰かいるのか?」

    吠えている方向を振り向くと、確かに茂みの向こうに誰かがいる気配がした。
    ツバサはその方向に向かって走り出した。

    「あ、おい待てって…」

    「うわああああ!!」

    犬が自分に迫ってくるのに驚き、つばさは思わず声を上げた。

    (今の声…まさか!?)

    作哉が見に行くと、そこには両耳をふさぎうずくまっているつばさがいた。

    「い、一ノ瀬!? お前なんでここに…」

    「うぅ…」

    「ワン! ワン!」

    「ツバサ、もう吠えなくていい。そいつから離れろ。」

    作哉はツバサに命令すると、改めてつばさの方に向き合った。
    しかしその顔には、焦りが見えている。

    (マジかよ…。まさか、よりによって一番見られたくない相手に見られてしまうなんて…)

    つばさも半泣きの状態で作哉の方を見上げた。

    「ご、ごめんなさい……」

    「……いつからいたんだ?」

    「え、えっと…作哉くんが僕をよぶ声が聞こえて…行ってみたら犬で……」

    「ハァ…そうか。まさか聞かれてたとはな。」

    「あの犬は作哉くんが前に言ってたこっそり飼ってるっていう犬ですよね?」

    「ああ。もともと学校に迷い込んできたコイツををこっそり面倒見てんだ。」

    「そうだったんですか…。犬とか好きなんですか?」

    「……まあな。前に飼ってたし。」

    「あ、そうなんですか? なんか意外です。」

    「悪いかよ。」

    「いえそういう意味ではなく、作哉くんの新たな一面を見れたというかその…」

    「…フン。まあいい。今のことは誰にも言うなよ。言ったらしばくからな。」

    すると、2人のやり取りを見ていたツバサが近づき、つばさの足元に来た。

    「どうしたんだ、ツバサ?」

    ツバサはつばさの足に擦り寄り、甘えるようなしぐさを見せた。

    「な、なんですか今度はっ!?」

    「落ち着けよ一ノ瀬。コイツは人を襲ったりしねえよ。ツバサ、もしかしてコイツのこと気に入ったのか?」

    「ワン!」

    ツバサは同意するかのように元気に吠えた。

    「コイツ、お前のこと気に入ったってよ。」

    「ほ、ホントですか!? あの、なでてもいいですか?」

    「ああ、優しくな。」

    「ありがとうございます。よしよ~し…」

    つばさが頭をなでると、ツバサは気持ちよさそうな表情になった。

    「最初は吠えられてビックリしましたけど、近くで見るとかわいいですね。」

    「だろ? 俺はコイツとは親友みたいなもんだ。いつもコイツから元気をもらってる。」

    「作哉くんにもそういうところがあったなんて…」

    「う…ま、まあ別にいいだろ。」

    「そういえば確かこの子の名前は"ツバサ"なんですよね…?」

    「!? あ、い、いやあその…何というか、ぐ、偶然だよ偶然!!
    たまたま名前がお前と被っただけだよ! 別に狙ったわけじゃねえし!!」

    「じゃあ、名前は作哉くんが考えたんですか?」

    「あ、い、いや違う! コイツを初めて見つけた時に首輪つけてて、
    そこに"TSUBASA"って名前が書いてあってだな……」

    「そ、そうですか…」

    (いくらなんでも犬の名前が目の前にいるお前から来てるなんて言えるわけないだろ…)

    「あ、もうこんな時間! 長居しちゃってごめんなさい。僕はもう帰りますね。」

    「おい。」

    「何でしょう?」

    「その…こ、コイツお前のこと気に入ったみたいだし、気が向いたら…コイツに会いに来ても…い、いいからな…。」

    そう言った作哉の顔は、夕日のせいなのか真っ赤に染まっていた。

    「はい、ありがとうございます! それではまた明日。ツバサくんバイバイ!」

    校門に向かって歩き出すつばさとそれを見つめる作哉、そんな2人をツバサはそっと見守っていたのだった。

     

    その次の日の放課後、作哉に呼び出されたつばさは校舎裏にやってきた。

    「来たな。今日の練習場所に行くぞ。」

    「あ、今日は学校ではないんですね。」

    「ああ、それから今日は特訓相手を呼んでいる。」

    「特訓相手!? 誰でしょう…?」

    「おいで、ツバサ。」

    作哉がそう呼びかけると、茂みの中からツバサが飛びだしてきた。

    「ワン!」

    「あ、ツバサくん! …この子が練習相手?」

    「ああ。これから移動するが、今日はリードはお前が引け。」

    「は、はい!」

    こうして、作哉とつばさとツバサの3人、いや2人と1匹の散歩が始まった。

    「ワン! ワン!」

    「あ、待ってそんなに速く走らないでええ…」

    「こーらツバサ、はしゃぎすぎだぞ。」

    「クゥーン…」

    こうして、10分ほど歩いたところでとある公園に着いた。

    「ここは俺がツバサをよく散歩させるために来ている公園だ。ついてこい。」

    そういって、つばさを誘導する。

    「着いたぞ。」

    「うわぁ…」

    そこは、湖を一望できる隠れたスポットだった。
    夕日が透き通る水に反射して湖が輝いている。

    「すごい…こんな場所があったなんて!」

    「ここは人もいないからな。穴場の場所なんだ。散歩に行く時はいつもここに寄る。」

    「そうだったんですか…」

    「よし、ツバサのリードを外すか。おいで。」

    作哉はツバサに近づき、首につながれていたリードを外してあげた。
    そして、持っていたカバンからフリスビーを取り出し、つばさに渡した。

    「今日の特訓は"ツバサと遊ぶこと"だ。ここでいつもリードを外して自由にさせてるからな。
    せっかく懐かれてるんだし、体力つけるのも兼ねて今日はお前がツバサの遊び相手になってやれ。
    言っとくがツバサは好奇心旺盛であちこち動き回るからな。バテずにちゃんとついて行けよ。」

    「わ、わかりました。」

    するとツバサがつばさの元に駆け寄ってきた。

    「ほら、一緒に行ってやれ。」

    「は、はい! 行こう、ツバサくん。」

    「ワン!」

    作哉は、つばさとツバサが戯れている姿を遠目で見ていた。
    その顔は、本人も気づかないほどに緩んでいた。
    また、そんなつばさとツバサの姿をこっそり動画で撮っていたのはここだけの話…。

    「よし、今日はここまでだ。そろそろ帰るぞ。」

    「はい、ありがとうございました!」

    「ツバサ、どうだったか? このお兄ちゃんと遊んで。」

    「ワン! ワン!」

    「そうかー楽しかったかー。それは良かったな!」

    「僕も楽しかったです!」

    「一ノ瀬もだいぶ体力ついたんじゃねえか? 今日はそんなにへばってねえみたいだし。」

    「確かに、走ったりしても前よりあまり息が上がらなくなりました。」

    「そうか、それは良かった。」

    「ええ…」

    「…………」

    「…………」

    「……と、とりあえずもうこんな時間だし、俺はツバサと学校に戻るから、気を付けて帰れよ…。」

    「あ、ありがとうございます! それでは、また明日。」

    つばさと別れ、こみ上げる気持ちを抑えたまま、作哉はツバサと学校に戻った。





    -③

    次の日の放課後、体育館に来たつばさをユニフォーム姿の作哉と三朗が出迎えた。

    「よし、来たな。今日から本格的なバスケの練習を始めるぞ。」

    「ゴメンな~。先公に捕まってもうて全然練習見に来てあげられんかった…。」

    「いえ、大丈夫です。作哉くんに見てもらいましたから。」

    「穂海も1人でホンマにゴメンな。」

    「別に、今んとこ順調そうだしまあいいけど。」

    「ほんならさっそく始めるで。まずは基本的なルールからやろか…。」

    「え、えーっと、ドリブルとかパスとしながらシュートすればいいんですよね!?」

    「ま、まあそうっちゃそうだが…うん。」

    「ホンマにこんなんで大丈夫なんやろか…。」

    「とにかく、まずはルールをしっかり覚える事からだ。じゃないと話にならないからな。」

    「せやな。次はルール違反についてやな。試合中にやってはならんルールや。
    どうや一ノ瀬、何か知っとるのあるか?」

    「えーっと、ダブルドリブル…とか。」

    「さすがにそん位はわかるか。
    一度ドリブルし終わったあと、もう一回ドリブルするのはアカンっちゅう奴やな。
    ドリブルが終わったら、シュートするかパスするしか選択肢は無いからな。」

    「あともう1個ありましたよね…。確かボールを持ったまま3歩以上歩いちゃいけないとか…。」

    「…トラベリングだ。」

    「そうそうそれそれ!」

    「宇多○○カルやないで?」

    「お前は少し黙っとけ。」

    「えーちょっと位ボケたってええやん。もっと楽しく行こーや。」

    「これ以上ふざけたら1組の奥村とかいう奴にお前のこと好きにしていいって言うからな。」

    「ごめんなさいもう言いませんのでそれだけは勘弁してください。」

    「なんでそこだけ標準語なんだよ…。」

    「…クスッ」

    「「!?」」

    「あ、ごめんなさい。2人のやり取りが面白かったのでつい…」

    「ホンマか一ノ瀬!? 今のそんなにオモロかったんか! 陸田&杉本目指せるか!?」

    「よし今の奥村にも見せに行くか。」

    「あああもう余計な事言わんからそれだけは堪忍したってくれえええ…!!」

    「プッ、ふふッ…あはははッ」

    「おい…コイツさっきからスゲーウケてんだけど。」

    「もしかして、笑いのツボがわかっとるんか!?」

    (一ノ瀬がお笑い好きだってのはやっぱり本当なんだな…)

    「とりあえずそろそろ練習始めるけどええか?」

    「あ、す、すみません! はい、よろしくお願いします。」

    「まずはパスの練習からだ。ドリブルはできなくてもパスができなきゃ話にならねえからな。」

    「まずは2人でお手本みせるで。」

    作哉と三朗はコートの真ん中に立ち、お互いパスだけをしながらゴールに近づき、
    最後は作哉がゴールを決めた。

    「すごい!」

    「まああれ位やれとまでは言わないが、試合の中でのパスは正確に行えるようにしないとな。」

    「そこから相手にボールを奪われて、逆に点決められてまう場合もあるからな。」

    「はい!」

    「じゃあ練習始めるか。まずはボールに慣れることだ。」

    こうして、作哉と三朗、つばさを交えてのパス練習が始まった。
    つばさは、最初は慣れないボールに戸惑っていたものの、作哉と三朗のアドバイスもあってか、
    回を重ねるごとにパスの正確性は徐々に上がっていった。

    「何や、自分飲み込みめっちゃ早いやん!」

    「その調子なら次の練習に行っても大丈夫そうだな。」

    「はい、頑張ります!」

    お次はドリブルの練習。ボールを打ちながら広い視野を見ることがポイントである。

    「これは大変ですね…。」

    「ドリブルをしながら相手をかわしたりもしなきゃいけねえからな。」

    「少しずつボールつきながら自分の行きたい方向に進む練習から始めればええと思うで。」

    「とりあえず今日の特訓はここまでにしよう。やりすぎるのもよくないからな。」

    こうして作哉の一言で今日は解散になった。

     
    翌日はまず昨日の復習を行った後、いよいよシュート練習に入った。

    「網の上にある黒い四角の部分にボールを当てるようにすると入りやすいんよ。」

    「えいっ…ああ、惜しいです。」

    「もっと力を楽にして、常にゴールネットを意識するように。」

    「もう1回…えいっ! ああ…」

    「もうちょっとやな。」

    「うう…難しいです。上達できなかったらどうしよう…。」

    「お前が自分を変えたいって言ったんだろ? その自分を信じない限りいくら練習しても成長なんかしねえ。」

    「…!?」

    「それは俺も同意見や。いくら練習に付き合っても最終的には本人のやる気次第やと思う。
    諦めたらそこで、試合終了やで?」

    「……そうですよね。"自分のために"ですよね…。」

    「せや、自分が全力で頑張って初めて周りにカッコ良く映るんやで?」

    「そうだな、休み時間とかに自主練しとけ。こればかりは数こなすしかないからな。」

    「はい、わかりました…。」

    「あとは俺らバスケ部の活動を録画した奴をあとで送ってやる。それ見て研究するんだな。」

    「あ、わざわざありがとうございます!」

    「穂海もこないだよりだいぶ丸くなったんとちゃうか?」

    「う、うるせえよ! 別に関係ねえだろ!」

    「でも、いざという時はやっぱり優しいんですね。」

    「はぁ!!?? なんでお前まで…」

    「せやろ、普段あんなツンツンしてんのにいざっちゅう時は頼りになるんやで。」

    「もういいよ俺の話は…。とりあえず今日は解散にするぞ。」

    「はい、ありがとうございました。」



    バスケ対決まで1週間に迫ったこの日、つばさは昼休み、体育館で1人シュート練習をしていた。
    その様子を外から覗いている人物がいた。

    「えいっ…ああ惜しい。もう少しなんだけどな…。もう1回!……やった、入った!!」

    「ずいぶん練習頑張ってるね。」

    「えっ…!?」

    その人物は体育館の中に入り、つばさに話しかけてきた。

    「今のシュート良かったよ。一ノ瀬くん。」

    「あ、綾瀬くん!?」

    「しのぶでいいよ。同学年だし最近よく話すでしょ? こっちも下の名前で呼んでいい?」

    「あ、構いません。」

    「それはそうと練習の邪魔してゴメンね。武道場行くのに体育館の横を通るからどうしても見えちゃって…。」

    「あ、いえ別に…。」

    「練習してたのはやっぱり次のスポーツ対決に向けて?」

    「はい。僕も今回は少しでもみんなの役に立ちたいと思って…」

    「そっか。そういえば友が"今回はつばさ君が魅せてくれる"って言ってたね。」

    「えええ!? と、友くんがそんな事言ってたなんて…。確かにカッコいい姿を見せてねとは言われましたが…。」

    「そうなんだ。だったらなおさら頑張らなきゃね。」

    「そ、そうですね…。」

    『キーンコーンカーンコーン…』

    「あ、チャイム鳴っちゃったね。つばさくんのプレー、僕も楽しみにしてるね。お互い頑張ろうね。」

    「はい! 本番頑張りましょう。」

    そういって会話の主、綾瀬しのぶは先に体育館を出た。
    次に授業で体育館を使うクラスの生徒が入ってきたため、つばさも足早に教室へ戻った。



    対決2日前の放課後。この時間は別の部活動が体育館を使っていて練習ができなかったため、
    今日はツバサの元へ行ってみることにしたつばさ。
    いつもの校舎裏に行くと、すでに作哉とツバサがいた。

    「ワン!」

    「…ああ、一ノ瀬か。」

    「今日は体育館が使われてて練習ができないので…来てみました。」

    「そうか…今から散歩に連れて行こう思ってたんだが…来るか?」

    「はい! またあの公園ですか?」

    「そうだな…。」

    2人(と1匹)は学校を出て、例の公園へ向かった。

    「そういえば、自主練の方はどうだ?」

    「はい、今のところ順調です。そうそう、今日はシュート4本も入りました!」

    「そうか、良かったな…。」

    「あ、あと練習中に綾瀬くんに会って、少しお話しました。」

    「綾瀬ってあの1組のチビの奴か?」

    「(チビって…)まあ、お互い頑張ろうみたいな話をしてすぐ別れましたが。」

    「そうか…それはちょっと厄介かもな。」

    「へ? 何が厄介なんですか?」

    「お前が練習してた事が1組にバレちまったてことは、
    本番でお前を警戒してマークする奴がいるかもしれないってことさ。」

    「なるほど…。でもその前に友くんが僕が活躍するって言っちゃったらしいんですけどね。」

    「何だよ、あの野郎余計な事しゃべりやがって…。」

    「大丈夫ですよ。僕たちが勝てば良いんですから!」

    「…そうだよな。本番まであと少しだから気合い入れてけよ。」

    「はい!」

    そして公園に着き、ツバサのリードを外して2人は近くのベンチに腰掛ける。

    「そういえば、作哉くんは前に犬を飼ってたんですよね? それっていつ位からですか?」

    「……俺が6歳の頃、小学校に上がる前に初めて我が家に来たんだ。
    それからは新しい家族の一員としてみんなで可愛がってたんだ。
    でも、1年前に病気で死んじまった。まだ7歳だったのによ…。」

    「そうだったんですか…。なんか嫌な事思い出させてしまってごめんなさい。」

    「いや、いいんだ。死んでしまった以上は俺らの心の中でしか生きられない。
    だからアイツがいたという事実は忘れるつもりも無いし、忘れてはいけないんだ。」

    「でも、飼い主にそこまで思ってもらえてるなら、そのワンちゃんも幸せですね。」

    「……だといいけどな。」

    「え?」

    「あ、い…いや何でもない。何でも……」

    そう語る作哉は、どこか儚げで切なそうな表情をしていた。

    「でも、今はツバサがいる。アイツにしてやれなかったことをツバサには全部してやりたい。
    失敗から何も学ばなければただの馬鹿だ。バスケだって同じだ。
    練習の時の失敗や挫折があるから上達もするし、それが自信にもつながるんだ。」

    「そっか、僕もそういう考えが持てるような人間になりたいな。やっぱり作哉くんはちゃんとしてるなぁ…。
    そうやって飼い犬の気持ちも考えてあげられてて。」

    「違う!! 俺はそんなすごい奴なんかじゃねえ! だって…だって……」

    「さ、作哉くん?」

    「アイツは…俺が殺したようなモンなのに……」

    「え…!?」

    「アイツ…以前飼ってた犬が昔から体が弱くて、ほとんど家の中で育ててたんだ。散歩に行く時もずっとリードに繋いだまんまで、
    今のツバサみたいにリードを外して遊ばせるなんて事はなかった。そうやって俺が護ってやることが、アイツにとって良い環境なんだと思ってた。
    でも普通そうだよな。そんな事ばっかりしてたら余計体が弱っちまう。あの時の俺はそんな簡単なことにさえ気づけなかった。」

    「作哉くん…」

    「エサだって体のことをもっとちゃんと考えてあげれば良かったのに…。俺はアイツの苦しみをわかってやれなかった!
    だからアイツは、俺が死なせたも同然なんだ…。」

    「そ、それは違います!!」

    「!?」

    「確かに、作哉くんは間違った育て方をしてしまったかもしれません。でも、それは全部その子のためを思ってしたことでしょう?」

    「……」

    「その子に対する愛情は、本物だったんでしょう?」

    「……!?」

    「作哉くんがそれだけその子の事を思ってくれてた事、ちゃんとわかってくれてると思いますよ。天国に行っても。」

    「…………」

    「たとえ育て方が間違っていたとしても、その子への愛情は間違ってなんかいません。
    作哉くんの愛情が本物なら、作哉くんと過ごせた事に後悔はしてないと思います。」

    「……そっか。そうだな。うん。」

    「って、なんかごめんなさい。1人で熱く語っちゃって…。」

    「いや、俺が間違ってた。お前の言葉を聞いて目が覚めたよ。確かに、俺がアイツに注いできた愛情は胸を張っていいんだよな。」

    「そうですよ! このまま落ち込んでたら、天国のワンちゃんにも失礼ですよ?」

    「だな。ありがとな。お前も言う時は言うんだな。案外見直したぜ。」

    「そっそうですか…。僕も作哉くんの力になれて良かったです。」

    「ッ…!? そ、そろそろ戻るぞ…。」

    「はい。」

    しばし公園で語らっていた2人は、ツバサを学校へ戻し、解散した。



    ---

    その晩、作哉は自室に籠っていた。
    彼の机には、前に飼っていた犬との2ショット写真が飾ってある。

    「アイツ…天国でも元気にしてっかな。それにしても…」

    作哉は自室のベッドに腰掛ける。

    「一ノ瀬もだいぶ変わったな…。俺がアイツに励まされちまうなんて。」

    『作哉くんの愛情が本物なら、作哉くんと過ごせた事に後悔はしてないと思います。』

    「……変わってないのは俺のほうだよな。何やってんだろう。マジで……」

    今までの思いが一気にこみ上がり、作哉はとうとうこらえきれず涙を零した。
    その様子を、月の光だけがそっと優しく照らしていた。





    -④

    スポーツ対決当日、作哉,三朗,つばさを含めた2組のメンバー同士で最終練習が行われた。

    「各自フォーメーションの位置確認しとけ!」

    「ほんならあと15分後に練習試合するで!」

    「よし、あとはシュートの精度がもう少し上がれば…。」

    各々が最終確認を行い対決に備える。

    「一ノ瀬、調子はどうだ?」

    「はい! やっぱりシュートがもうちょっと…」

    「それだけできてれば大丈夫だ。本番よろしく頼むぞ。」

    「はい!」

    「ほんなら円陣組もか? 士気も高まるで!」

    「そうだな。」

    「はい!」

    こうして、2組のメンバー全員が輪になり、腕を組みあう。

    「じゃあ一ノ瀬、お前委員長だから仕切れ。」

    「ええっ!? えーっと、いよいよ今日が本番です。日頃の練習を思い出して、全力で、楽しんでプレーしましょう!
    え、エイエイオー!!……」

    「「エイエイオー!!」」



    -4時間目
    1組と2組の合同体育の時間、ついに決戦の時が来た。
    作哉と友が再び対峙する。

    「こないだは言い過ぎた。でも、今回も俺たちが勝つ!」

    「私、失敗しないので。敗北いたしません!」

    「ド○ターXかよ…。」

    周りの生徒も対決に向けて意気込んでいる。

    「空が敵だったらきっとお前の事をずっとマークしてたな!」

    「兄さんそれもうストーカーじゃん。」

    「さぶちゃんの事はオイラがずっとマークしててあげるからねっ!」

    「いらんことすなや気持ち悪い!!」

    準備運動を済ませ、両クラスともコートへ入る。

    「それでは1組vs2組のバスケットボールの試合を行います。」

    「「よろしくお願いします!!」」

    「つばさくん、頑張ろうね!」

    「友くん! はい、頑張りましょう。」

    そして作哉と1組の松田がコートの真ん中に残る。

    ホイッスルの合図と共に、審判によってボールが空中へ放たれる。

     

    -いざ、試合開始!!
     
    先にボールを奪ったのは1組の方だった。
    1組は松田としのぶ、2組は作哉と三朗を中心に試合が展開する。
    つばさは、前半は主に相手をマークするなどの守備に就く。
    前半は、両クラスとも2得点ずつを重ねるデットヒートとなった。
    つばさも、課題となっていたシュートを打つ機会はなかったものの、相手のパスをカットするなどの健闘を見せた。


    前半終了後、再び作戦会議が行われる。

    「ごめんなさい。前半はあまり動けませんでした。」

    「いや、松田のあのパスをカットできたのは大きい。あのままパスが通ってたら点が入ってたかもしれない。」

    「せやせや! もっとポジティブに楽しまなアカンと。」

    「一ノ瀬、後半はお前も前線に入れ。行けるか?」

    「は、はい! 頑張ります!」

    「俺らも普通にパスとか出すからな? ちゃんとついて来いよ。」

    「うぅ、緊張してきました…。」

    パン、と作哉がつばさの背中を叩く。

    「心配すんな。絶対勝つ!」

    「はい!」

    「ほな皆行くで!」

    「「おう!!」」



    ー運命の後半戦

    ボールを奪った三朗がディフェンダーをかわしゴールへと近づく。と、目線の先に

    「さぶちゃ~ん、早くオイラの元に飛び込んで来て~!」

    「にょわああああ!!」

    と、三朗の動きが止まってしまった。

    「ふっふ~ん、作戦ど・お・り♪」

    「クソっアイツそれが狙いか! こうなったら…穂海…あ!」

    三朗の放ったボールは相手チームによって遮られ、そのままゴール前まで運ばれてしまった。

    「しもた…やってもうた……。」

    「さぶちゃんドンマイ! まだチャンスはあるよん♪」

    「お前は敵なのか味方なのかどっちなんや…」

    そうこうしてる間に、1組チームのゴールが決まり、ポイントを奪われた。

    「スマン、もうちょっと周り気いつけてたら…」

    「ドンマイドンマイ、すぐ取り返しにいけば良いだけだ。」

    「ぼ、僕も頑張りますから次行きましょう!」

    「おう、カッコええ所俺らにも見せてな!」

    ホイッスルがなり、作哉がドリブルで攻め込む。
    しかしすぐに相手チームに囲まれる。

    「チッこのままじゃ進まねえ。ここは…一ノ瀬!」

    とうとうつばさにパスが回ってきた。
    つばさは臆することなくボールをキャッチし、作哉のジェスチャーで示した指示通りにドリブルで前線に切り込む。
    すると

    「行かせないよ!」

    つばさの行く手をしのぶが阻む。つばさからボールを奪おうとする。

    「そうはさせません!」

    つばさもここでは引き下がれない。
    ドリブルの隙を突いてボールを奪おうとするしのぶに対し、素早く体制を変える。

    「作哉くん!」

    「ナイスだ!」

    「あ…」

    そして上がってきた作哉に素早くパスを回す。
    作哉が一気に駆け上がる。
    残り20秒を切り、このまま作哉がシュートをするものだと思われた。が、

    「一ノ瀬! お前のシュートを見せてみろ!」

    直前で、作哉がつばさにパスをした。
    つばさがいるのは3ポイントエリア。シュートが決まれば逆転できるが、成功するのは難しい。
    しかし、残された時間はあとわずか。

    「いけ! つばさ!!」

    ボールを受け取ったつばさはほぼ無心でシュートを放った。






    つばさが放ったボールはそのままゴールネットに吸い込まれ、地面に落ちた。





    「ピーーー」

    試合終了のホイッスル、2組の逆転勝利だ。

    「っしゃあああああ!!!!」

    「勝った!! 勝ったで!!!!」

    他のメンバーが次々と喜びを爆発させる中、つばさは何が起こったかわからないかのように1人呆然としていた。
    そして、みんながつばさの元に駆け寄ってきた。

    「やったな一ノ瀬! 3ポイント決めるとはどえらいこっちゃで!」

    「よくやったな一ノ瀬。」

    と、作哉が一ノ瀬の肩に手を置いた。

    「勝ったんだ…。僕たち、勝ったんだ……!」

    「ああ、勝ったさ。お前のシュートでな。」

    「……! やった!!」

    「おめでとう、つばさくん。」

    「あ、しのぶくん!」

    「最後のシュート、カッコ良かったよ。あとで友のところに行ってあげな。」

    「あ、はい! こちらこそお疲れ様でした。」

    「さぶちゃん、今度はオイラたちで愛のシュートを放ってゴールインしよ?」

    「愛のシュートって何やねん!? 俺は絶対アンタの事なんか認めへんぞおおお!!」

    こうして互いの健闘をたたえ合い、バスケ対決は終わりを迎えた。





    -⑤

    昼休み、作哉は教室を出てツバサの元に向かった。
    教室に戻る途中、廊下で楽しそうに会話している友とつばさを目撃し、先ほどまでの興奮は一気に冷めてしまっていた。

    「おいで、ツバサ。」

    作哉の呼びかけにツバサは元気よく反応し、茂みから出てきた。

    すると、作哉の元をだれかが訪ねてきた。

    「あ、やっぱりここにいましたか。」

    「…なんだ、一ノ瀬か。どうしたんだ?」

    「あの、1ヶ月間特訓に付き合ってくれてありがとうございました! おかげでシュートも決められましたし、自分に自信もつきました。」

    「そうか、それは良かった。…で、アッチはどうだったんだ?」

    「あ、友くんですか? はい、カッコ良かったよって言ってもらえました! 輝いてたねって…エヘヘ」

    「そう…良かったな。」

    「でも、やっぱり作哉くんがいなかったら、僕もここまでにはならなかったと思います。」

    「何でだよ、猫山じゃダメなのか?」

    「いえ、そういう意味じゃなくて…。三朗くんから聞いたんです。
    特訓初日に作哉くんの目が充血していて、何でかなーと思ってたら…作哉くんが僕のために徹夜で練習メニューを考えてくれてたんですよね?
    口では意地悪そうに見えてもちゃんと人の事を考えてくれてる、アイツはいい奴だって三朗くんが言ってました。」

    「アイツまた余計な事を…」

    「でも、そうやって僕のために色々準備してくれているなら、僕もその期待に応えられるように頑張ろうって思ってずっと練習してきたんです。」

    「別に俺はお前に期待なんて…」

    「だから、作哉くんにはちゃんとお礼がしたくて。本当にありがとうございました。」

    「…別に俺は何にもしてねえよ。まあ、結果出せて良かったな。それに、その…あのシュートも良かったぞ。」

    「ホントですか!? 嬉しいです…。」

    そういってはにかむつばさに、作哉は何とも言えぬ複雑な心境を抱いていた。

    「その…俺も今まで色々言い過ぎた。悪かった。」

    「いえいえ、作哉くんが謝る必要なんて! 作哉くんの優しさは十分伝わりましたし。
    それに、試合の時僕のことを"つばさ"って呼んでくれましたよね?」

    「え!? あ、あれは…無意識で……。」

    「でもすごく嬉しかったですよ? 距離が縮まった気がして。」

    (何だよ…何なんだよこの流れは! これじゃあまるで……)

    「なんだか、あの頃の作哉くんが戻ってきたみたい。」

    「フン、別に好きでお前に冷たく当たってるわけじゃねえよ。」

    「そうだったんですか…? それを聞いて安心しました。」

    「お前は何もしてねえよ。俺がお前を好きになっただけで…」

    「え!?」

    「え、あ……………………」

    (し、しまったああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
    その場の雰囲気とはいえ、なんで口走っちまうんだよ!!!!)

    作哉は途端に顔面蒼白になり、地面にガックリと膝を付いた。

    「作哉くん、今のは……」

    「ち、違う!! 俺はお前なんか好きじゃねえ! お前の事なんか好きになるもんか! 俺は…俺は……」

    しかし、時すでに遅し。口を滑らせてしまった以上、どんなに嘘を並べ立ててももはや通用しない。
    作哉も十分にわかっていたはずだが、頑なに認めようとしない。

    「作哉くん、作哉くんは本当に僕の事を……?」

    「……フン。何言ってんだよ。好きじゃねえって言ってんだろ?
    弱虫でいつもウジウジしてメソメソしてるお前なんか好きになるはずがねえ!
    むしろお前のそういう態度が…態度が……」

    『嫌い』

    とは言えなかった。たとえ好きであることをごまかそうとしてつく嘘でも、作哉にはそれができなかった。
    つばさは不安そうな表情で作哉を見つめる。
    作哉は、もう歯止めが効かず自暴自棄になっていた。

    「俺が優しい? 何を妄言垂れてんだよ。こんな弱虫イジ野郎に誰が優しくすんだよ!
    ……何だよその目は? 早くどっか行けよ! もう目障りなんだよ! もうここにも来んな! とにかくどっか行け!
    あのアホ委員長の所にでも行って2人で仲良く…」



    「作哉くん!!!!」



    「!?」

    突然、つばさは普段発しない大きな声で作哉の名を叫んだ。
    これにはさすがの作哉も動揺し、無言になる。
    そして、つばさは今度はとても穏やかな口調で呼びかける。

    「作哉くん、顔を上げてください。」

    その呼びかけに対し、作哉は無言でゆっくりと顔を上げる。

    「…作哉くんが好きって言ってくれたこと、正直ビックリはしました。でも…」

    「……」

    「純粋に嬉しかったですよ? 好きになってくれるのは悪い事ではないですから…。
    それに、普段冷たくされてるから作哉くんに嫌われてるのかなと思ってたので、僕に好意を持ってくれてるとわかって安心もしました。」

    つばさの言葉に、作哉も落ち着きを少しずつ取り戻す。

    「……俺は、おかしいか? 俺が思ってる事、気持ち悪いって思うか?」

    「いいえ、まったくそんな事思ってません。」

    「本当か?」

    「はい。それに、信じてましたから。作哉くんを。」

    「俺を?」

    「いつも僕に冷たく当たってくるけど、でもきっとそれは本当の作哉くんじゃないって。
    三朗くんから練習メニューを考えてくれてた事や作哉くんが話してた犬のエピソードを聞いて、僕が信じていた事は間違ってなんかなかったって。
    どんなに作哉くんにからかわれたり意地悪されたりしても、ずっと信じてましたから…


    "作哉くんは優しいんだ"って。」


    「……!」

    「確かに僕は友くんが好きです。でも、作哉くんが僕を好きだって事を想像してなかったし、正直僕自信少し避けてた部分もあったりで、
    こうして告白されるとは思ってもみなくて、だから、明確な返事は今はできません…。
    その…もっと作哉くんの事が知りたいんです!
    今まであまりいい関係が築けなかった分、作哉くんの事をもっと知って、仲良くなりたいんです!
    いつか、作哉くんにちゃんとした返事ができるように。」

    「……」

    「友くんがとか、そういうのは関係なしに、僕も作哉くんを好きでいられるように。」

    「……!」

    「あ、今のは恋人としての好きとかそんなんじゃなくて…ああ、友くんの好きも別に恋の意味では…。」

    「…ああ、わかってる。やっぱりお前は俺が思ってたよりもしっかりしてたんだな。」

    「え、そ、そんな事…」

    「前にツバサに出会う前に犬を飼ってたって言っただろ? 体が弱かったのもそうだし、
    アイツ、なんか犬のクセにいつもビクビクしてて外にもあまり出たがらなくて、そういうところがお前に似てたんだ。
    今までお前にキツく当たってたのも、アイツと被ってみえた部分があったのも理由の一つだ。
    人と犬を重ね合わせるとか、どこまでもおかしな奴だよな。」

    「……」

    「アイツが死んだ時に、お前の事が一番に気にかかったんだ。もしもアイツと同じような目に遭ったらって…。
    一ノ瀬にはもっとしっかりしてほしかった。だからつい意地悪してるみたいな感じになっちまった。
    でも、そんな俺の心配は無駄だったみたいだな。俺が思ってたよりもお前はずっとしっかりしてた。
    むしろ変わらなきゃいけないのは俺の方だったみたいだな。これじゃあ一ノ瀬よりも弱っちいよな。
    本当情けないぜ…。」

    「そんな事無いです。自分の気持ちは後回しにしてでもみんなの事をそうやって考えてくれてて、
    作哉くんは十分強いです。」

    「…フッ、全然強くもなんともねえ。自分を信じない限り成長しないとか言っておきながら、一番成長してないのは俺自身じゃねえか!
    …本当、馬鹿らしくて笑っちまうよな。」

    そう自嘲する作哉の目からは、一筋の涙が流れ落ちる。

    「何やってたんだろうな俺って。一ノ瀬を見守るつもりが、逆にフォローされるとか我ながらみっともねえよな…。
    挙句の果てにその一ノ瀬を好きになっちまうとか…。馬鹿みたいだよな。ホント…ホン……うぅ…」

    今まで抑えていた感情が一気に溢れたのか、つばさの前で泣き崩れる作哉。

    「作哉くん…」

    「…好きな人の前で泣くとか、全然強くなんてねえ……。」

    つばさは、そんな作哉に歩み寄り、その体を華奢な手で包んだ。

    「…!?」

    つばさは作哉の顔を自身の胸に寄せ、作哉をそっと抱きしめた。

    「作哉くんがそんな風に思ってたなんて、知りませんでした。
    でも、もう無理する必要なんてないです。あまり溜めすぎるともっと弱ってしまいますよ?
    僕の知ってる作哉くんは、優しくて、強いんです。」

    「う…うぅ……あぁぁ…!!」

    つばさの言葉に安心したのか、作哉はつばさの腕の中で、泣き続けた。
    つばさも作哉をしっかりと抱いたまま、彼を見つめていた。
    彼の気持ちを無駄にしてはいけない、と心に誓って。



    ---

    昼休みを終え、作哉は1人授業をサボって屋上にいた。
    あの後は授業を受ける気になれず、いつも三朗が昼寝をしているベンチに横になっていた。

    どれくらいそうしていただろうか。屋上につばさがやってきた。

    「あ、やっと見つけた…。もうすぐ帰りのホームルームですけど…大丈夫ですか?」

    「ああ。」

    「もう、勝手に授業サボっちゃダメじゃないですか! 心配したんですよ?」

    「別にサボるサボらないは俺の勝手だろ?」

    「もう…、ホームルームはちゃんと出てもらいますからね。委員長命令ですよ?」

    「何だよそれ。はいはい、行けばいいんだろ?」

    重い腰をあげてつばさについていく。

    「あ、あの…」

    「何だよ?」

    「今日、もしよかったら一緒に帰りませんか?」

    「はぁ、どうしたんだよ急に? 森海はいいのかよ?」

    「その、あの時のお礼とかしたいですし、今日は2人で帰りたいなと思って…」

    「…わかったよ。帰ってやるよ。礼なんていらないからな。」

    「はい、じゃあ下駄箱の前で待ち合わせで…」

    作哉はつばさが自分を誘ってきた事が気になり、ホームルームの内容も頭に入ってこなかった。



    ー放課後

    「待たせたな。」

    「いえ、僕も今着いたところです。じゃあ行きましょう。」

    夕暮れ時の通学路を、2人で並んで歩き出す。

    「そういえば、こうして2人で帰るってかなり久しぶりですよね。なんだか懐かしい感じがして。」

    「言われてみればそうだな。いつ以来だっけか…」

    「フフフ、そうだ! この先の商店街にコロッケを売ってるお肉屋さんがあるんですよ。
    僕も友くん達と何度か食べたんですけど、すごく美味しいんですよ!」

    「へえ、それは良さそうだな。行ってみるか。」

    「ぜひぜひ! 何なら僕がおごりましょうか? バスケ対決で色々教えてくれましたし、色々迷惑かけちゃったみたいだし…。」

    「え、だから礼なんていらないって…」

    「いいんです! 男なら黙って、男に奢られるべきです!!」

    「何だよそれ…ってそれ昨日のテレビでやってた陸田&杉本のネタじゃねえか!」

    「あ、わかりました? 作哉くんナイスツッコミです!」

    「あれは俺も見てて正直笑ったわ。」

    「確かに面白かったですよね~!」


    一方、友としのぶの2人も、学校からの帰宅途中だった。
    商店街に差し掛かると、前方に同じ制服を来た2人組がいた。

    「ねぇ友、あれって…」

    「え…あー! つばさくんとジャイアン!? なんであの2人が?
    ジャイアンの奴、またつばさ君に変な事してなきゃいいけど…。」

    「…そうでもないみたいだよ。」

    「え?」

    『お前のコロッケも美味そうじゃん。』

    『これ、期間限定のカボチャ味なんですよ! カボチャのホクホクした食感と甘さが口いっぱいに広がって…』

    『何だよそれ、超食べたくなるじゃん! まあでもこのメンチカツも美味いな…。あとお前食レポ上手いな。』

    『あ、今美味いと上手いをかけましたね!』

    『いちいち言わなくていいよそういうのは! 恥ずかしくなるだろうが…』

    『フフフ…あはは…』

    『アハハハハ…』

    「なんか、楽しそうだね…。」

    「うん、そうだね。」

    「…俺たちも何か食べない? 2人を見てたらお腹すいてきちゃって…。」

    「まったく、友ったら食い意地張ってるんだから…。」



    ーここは日本のどこかに位置する私立の中高一貫の男子校「御咲学園」。
    今日もまたこの場所で、新たな物語が生まれるかもしれない…。


    -Fin



    素敵なさくつば小説を
    どうもありがとうございました!!


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    2011.06.02 Thu
    夜道は不審者に気をつけて
    シンク様からいただいた
    榊雪緒×穂海作哉R-18禁小説です。

    ※18歳未満閲覧禁止




    夜の闇が辺りを包み静まり返る時間帯、一人の少年が歩いている。

    「ツバサのエサ買ってたら遅くなっちまったな」

    少年の名は穂海作哉、御咲学園中等部に通う2年生でありバスケ部に所属している。
    練習後に友人と別れて先生に黙ってこっそりと面倒をみている愛犬ツバサのエサを買いに
    ペットショップまで足を運んだためにこんな時間になってしまったのだ。

    「あれぇ?穂海さんじゃないですかぁ?」

    不意に後ろから聞き覚えのある声がする。

    「ん?なんだ雪緒じゃねぇか」

    その声の正体は、榊雪緒、自分を慕う後輩の友人であり常に笑顔を絶やさない
    マイペースで人当たりの良い少年である。

    「練習帰りですかぁ?」
    「まぁな、お前こそこんな時間に一人でどうしたんだよ?」
    「僕は明日の登山に必要な荷物を忘れててホームセンターに買いに行ってたんですよぉ」
    「こんな時間まで気づかなかったのかよ…」
    「えへへ」

    呆れ顔の作哉と相変わらず笑顔の雪緒、挨拶がてらの他愛ない会話だ。

    「小学生がこんな時間に一人じゃ危ねぇからな、送ってやるよ」
    「そんなぁ、悪いですよぉ」
    「別にいいよ、どうせ方向同じだし」
    「じゃあ、すみませんけどお言葉に甘えます、四朗に言ったら羨ましがるだろうなぁ」
    「なんでだよ…」

    一見するとぶっきらぼうだが根は優しく面倒見のいい作哉は雪緒を家まで送ることにした。雪緒の性格もあるのだろう、
    それなりに会話も盛り上がりをみせる。
    賑やかな商店街を抜け人気の無い脇道にさしかかる。

    「この前この辺りで怪しい男の子に声をかけられた気がするんですよぉ」
    「気がするってなんだよ?」
    「最近、たま~に一瞬記憶が飛んだりするんですよねぇ」
    「はぁ!?なんだそれ?ちょっとボーっとしすぎなんじゃねぇか」

    会話の途中にふと雪緒が足を止める。振り返り声をかける作哉

    「ん?どうした?」
    「……いた」
    「は?」
    「腹が空いたのぉ」
    「なんだ…腹減ってんのか、もう少し早く言えばコンビニで、うわっ!?」

    突然雪緒が飛びついてきて押し倒されてしまう。

    「おい!いきなりどういう…」

    途中で作哉は絶句する。
    雪緒にとり憑いている九尾の狐が顔を出したのだ、当然作哉は知るよしもない、
    しかしそれでも今目の前にいる存在が雪緒ではない別の何かだということはわかる。

    「お前、一体なんなんだよ?雪緒になにしやがった!?」
    「ほぉ…なかなか気の強そうなオノコじゃな」

    ギラついた視線を送る存在をはね除けようとするができない、その力はとても小学生のものではなく、
    それどころか無数の腕で身体中を押さえつけられているような感覚さえ覚える。

    「なんどやっても煩わしい着物じゃ」
    「あっ!おい、やめろって!」

    ややぎこちない手つきで服を脱がされる間も抵抗できずされるがままに裸にされてしまう。

    「鍛えておるのか?雄々しい、とまではいかなんだが悪くはないの」
    「くそっ、見るなっ!見るなっ!」
    「早速味見するとしようか」

    値踏みするような視線から逃れようと、どんなに力を入れても身体はビクともせず、
    脇腹や太ももなど至るところを舐められる。

    「くぅぅぅ、やめろ!この狐ヤロー!」
    「っ!?」

    作哉が咄嗟に叫んだ一言に双方が固まる。

    (このオノコ、わらわの存在を感知するほどの霊感があるのか?しかし、それなら最初に逃げることもできたはずだな…)
    (今、なんで…?)

    九尾が警戒して思考を巡らせる間、作哉も自らの言葉に疑問を抱いていた。
    作哉に人並み外れた霊感はない、しかし彼は重度の犬フェチである、その本能が一応は同じ犬科である九尾の力を
    感じとったのかもしれない。しかしそれは作哉の精神の陥落を意味していた。

    犬(科の動物)に責められているという認識は作哉からどんなに嫌だと思っても抵抗する力を奪っていった。

    (急に大人しくなったのう、わらわの正体を知って観念したかえ?)

    思考を整理し問題ないと判断した九尾が食事を再開しゆっくり作哉のぺニスを口に含んだ。

    「ふぁっ!ひっ、くぅ…」

    ツバサのそれにも似た舌使いが作哉に快感を与えていく、
    元々姓への関心が薄く耐性の低い作哉は呆気なくに絶頂へと導かれる。
     
    「じゅるるる…」
    「いやぁぁぁーっ」

    九尾は少し驚きつつも吐き出した精液を一滴残らず吸い尽くした。

    「もう出したのか…ふむ、美味じゃな、量もなかなかじゃ」
    「ちくしょう…やめろ、やめろよぉ…」

    柄にもなく涙を流し、射精の余韻から脱力する作哉の耳には入っていない。

    「じゃが、まだまだ足りん…」
    「んひぃぃっ!?」

    ぐったりと呆けていた作哉の脚をM字に開き、無防備な尻の穴に舌を這わせる、
    初めての刺激に目を剥き大きくのけ反り喘ぐ作哉。

    「もう一度馳走にならねば腹は膨れぬ」
    「んぁぁっ!ひっ、やぁぁっ!」

    尻の穴に指を入れられ無遠慮に弄られ、かき回され、同時に無理やり大きくさせられたぺニスを舐め上げられる。
    さっきより数段上の快楽に身をくねらせる作哉。

    「はぅぅんっ、お願っ、らめぇ」

    必死に首を振り、呂律の回らない口でする懇願は作哉が完全に降伏した証である、もっともそれが聞き入れられることはないのだが。

    不意にとある一点を指が押し上げる、途端に今までとは比べ物にならない快感がかけ上がってくる。

    「見つけたぞ、ここがいいのかえ?」
    「~~~~~っ!?」

    絶頂を伝える叫びは最早言葉になっておらず、作哉はそこで意識を手放した。

    「ふむ…久々に良い獲物であった」

    九尾は満足気に笑うと指を鳴らした。

    「お呼びでございますか?」

    一匹の狐の霊が駆けつけてくる、九尾の忠実な僕だ。

    「この者を家まで送り届けよ、記憶も忘れずに食ろうておけ」
    「はっ」

    狐は作哉にとり憑くと身なりを整え家の方へと歩きだす、
    この狐は九尾に関する記憶を食らい代わりの記憶与える事後処理の役目を担っている、
    彼の存在により九尾は現代においても何一つ騒ぎを起こさずに食事にありつけるのだ。

    「さて、わらわも帰るとするか」

    九尾も雪緒の家へと歩きだし、夜の闇へと消えていった。



    翌日

    「すげーだりぃ、なんか腰痛いし…寝違えたか」

    土曜の朝、部活に向かう作哉の足取りは重かった。

    「あ、穂海さ~ん」
    「っ!!」

    背後から雪緒に声をかけられ背筋に電流が走り端から見てもハッキリ分かるほど肩が弾む作哉。

    「大丈夫ですかぁ?」
    「す、少し考え事してただけだ」

    心配そうに顔を覗きこむ雪緒にやや動揺して答える作哉。

    「昨日はありがとうございましたぁ!送ってもらったうえに肉まんまでご馳走していただいちゃって、これお礼です」
    「お、おう、サンキュな」

    いつもの笑顔で差し出されたペットボトルを受けとる作哉、いつも好んで飲んでいるジュースだ。

    「穂海さんこれから部活ですかぁ?頑張って下さいね」
    「おう、雪緒も登山気をつけろよ」
    「はい、ありがとうございます、それじゃあ、失礼します」

    雪緒はペコリと一礼すると、楽しみで仕方ないといったふうに駆けだしていった、
    その小さな背中を見送りながら作哉は怪訝な表情で考える。

    (なんで雪緒と話すだけでこんなドキドキしてんだ俺?昨日は一緒に帰って、肉まん奢って…ほんとにそれだけだったか?どうもなんか大事なことを忘れてるような気がすんだよな…あーっ!思い出せねぇ)

    立ち止まりペットボトルに口をつけ答えの出ない自問自答を続けながら唸る作哉の背中に聞き覚えのある声と共に衝撃が走る。

    「おはよーさん穂海ぃ、こんなところで突っ立ってどないしたん?朝から不機嫌そうな面してたらあかんで、
    幸せが逃げてまう、そんなんじゃアホ毛少年も振り返ってくれへんで~w(以下省略」

    機関銃の様に喋り続ける三朗の顔面に飲み終えたペットボトルが炸裂するのは時間の問題だった。





    雪緒×作哉という
    今までありそうでなかった組み合わせのエッチな小説を書いていただきました!
    いやぁ~…雪緒くん今のところ最強ですね…。
    このままだと、全キャラ攻めていけそうです。

    エロエロな小説、どうもありがとうございました!!

    ◇ゲストコーナー    Comment(1)   TrackBack(0)   Top↑

    2011.06.02 Thu
    SCHOOL BOYS外伝 ~友 過去編~
    ~はじめに~

    蒼様より頂きました。
    友くんの過去のお話です。
    シリアスな展開です。
    どうぞお楽しみ下さい。






    --------------降りしきる雨の中、黒い列に紛れて涙を流していた君を見て、
    僕は強い男になろうと決心した---------------







    「お父さんが死んだ」


    死因は車同士の接触事故

    会社からの帰路についてから暫くしての突然の出来事だったらしい。

    俺は母からそれを告げられた時、自分自身の耳を疑った。


    ・・・・・・お父さんが死んだ・・・?
    ハハッ 何言ってんのお母さんッ??
    今朝まであんなに元気だったじゃんッ!
    お父さんが死んだ・・・?? はぁ?
    そんな馬鹿な事があってたまるかよッ!



    ・・・・・・・・




    「嘘だろ・・・・?」


    友は、ようやく状況を飲み込めたらしく、彼の表情から苦笑いさえも消えた。

    手や顔からは汗が流れ、彼の呼吸は荒くなる


    そして何かが弾けた様に正気を失った



    「ねぇ!!!誰か嘘だって言ってよ!!!!ねえッ!!!!!!!」




    あの日、俺の中の何かが消えてしまった気がした。







    ---------------------SCHOOL BOYS外伝 ~友 過去編~






    数年後




    「じゃあ、お母さんはまたしばらくは帰ってこられないけれど、友、元気にしているんだよ。火だけには気をつけてね。」

    「うん。わかった!演奏会がんばってね、お母さん! いってらっしゃい~!」


    ガシャン


    家中に、玄関のドアの閉まる音だけが鳴り響く


    ・・・・・・・・



    俺の名前は森海友。小学六年生。割と落ち着いた性格だとよく言われるけど、どこにでも居そうな普通の子供だと思う。
    数年前にお父さんを事故で亡くして、今はお母さんと二人で暮らしている。

    だけどお母さんが今日から、オーストリアで開かれるピアノの演奏会の国内ツアーに出演するため、しばらくの間向こうで滞在することになる
    練習も兼ねて滞在するため、しばらくの間は家に帰ってこられない。
    だから、俺は今日からこの家で一人で暮らすことになる。



    暁が終わろうとしている時刻、
    友はまだ少し眠たそうな顔をしていながらも、朝早くから笑顔で母の見送りをした後、奥にある自分の部屋へと戻る。


    朝の光がカーテンから差し込んでいるだけの薄暗い彼の部屋の中には、まだ読みかけの漫画や、お菓子のゴミやペットボトル、学校の教科書やノートがあちらこちらに散らばっている。


    そういえば、昨日の夜の俺はやけにお菓子やジュースを暴飲暴食していたような気がする
    そしてこれらを捨てずにそのまま寝ちゃったんだっけ・・・


    何故だか今さら片付ける気になれない


    俺は、そこに何もなかったかのようにそれらを通り過ぎ、奥にあるまだ暖かいベッドに体を乗せ、ゆっくりと寝転ぶ。

    そして目を開けたまま、すうっと大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。





    「......今日からまた一人か......」



    他に誰もいない空間の中で、一人そう呟く。


    その一方で、俺は何かが閃いた様に色々と思考を巡らせる。


    ......あれ? でもよくよく考えてみれば、一人暮らしって自由じゃん......!
    何時に帰ってきてもいいし、どれだけ漫画を読んでも怒られない。
    料理は自分の好きな物ばかり作れるし、いつもはお母さんが弾いているピアノも使い放題!
    なーんだっ! 良い事だらけじゃんっ!!

    ふふふーっ これからどんな事をしよっかな~っ
    なんだかたのしみだなぁ~!!






    ・・・・・・・・・・・・・・・







    「静かだなあ.......」




    自分を鼓舞するかの様に無理やり高めた期待の念が静けさによって殺されていく
    楽しい事を考える事によって自らの孤独を再確認する

    それは別に今回に限った事ではなかったけど。



    俺はこの家が嫌いだ


    何故だろう
    この場所に居るだけでなんだか、、、、心がぎゅっと締め付けられるような感覚に陥ってしまうんだ

    お母さんが家にいない事だって今までも何度かあったはずなのに


    はぁ・・・・
    ほんと、一体どうしちゃったんだろ俺・・・・・


    思わず様々な雑念を巡らせてしまう



    「・・・・・・・・・・考えても仕方がない・・・・・・少し寝よう。
    まだ学校まで時間があることだし・・・」



    ・・・いや、訂正。


    考えても仕方がないんじゃない

    何も考えたくなかった



    寝てしまえばこんな気持ちも少しは軽減されるだろう
    そうだ。寝てこんな気持ちも忘れてしまおう



    俺は瞼をゆっくりと閉じる


    ・・・・・・


    何も考えるな

    何も考えるな

    大丈夫。大丈夫だ。


    ・・・・・


    強引に自らを落ち着かせた俺は、もう一度深い眠りにつこうとしていた


    しかしその時、、、



    ----------ピンポーンッ!



    突然のチャイムの音が俺の鼓膜に突き刺さる
    びっくりして俺はベットから飛び上がった



    ......誰かが来たようだ


    「・・・ったく・・・誰だよぉ・・・・こんな朝早くに・・・・」

    早朝の来客に不満そうな声を上げながら俺はチャイムの鳴った玄関の方へと足を運ばせる。


    ガチャッ

    「......はーい。
    お!しのぶじゃん!おはよ!」

    「友、おはよう。」

    家の外で立っていたのは、見覚えのありすぎる、俺より身長の低い小柄な少年だった。


    彼の名前は綾瀬しのぶ
    俺と同じマンションに住んでいる俺の幼馴染だ。

    今は同じ小学校に通っていて、ほぼ毎朝一緒に登校している。
    普段も、毎朝登校前にしのぶが俺の家の前まで迎えに来てくれるのだが、何故か今日はいつもより早く迎えに来てくれた。


    「今日はどうしてこんなに早いの?」

    「だって友、今日から一人暮らしでしょ?ちゃんと朝一人で起きれるかなと思って」

    「ば、ばかにすんなよっ!俺はもう子供じゃないんだぞおっ!」

    「はいはい。でもちゃんとしっかり一人で起きれたみたいだね」

    「う、うん・・・」


    ・・・・・・さっき二度寝しようとしていたなんて言えない・・・


    「まだ学校まで時間はあることだし、少し家に上がってもいい?」


    「うん!いいよ~!」

    「お邪魔します。」

    いつも一緒に登校する時間までしのぶが俺ん家に上がることになった。


    「よくよく考えてみれば、しのぶが俺ん家に上がるのって久しぶりだよねー」

    「確かにそうだね。ここ最近は空手の練習や試合で忙しかったから。」

    「なるほどねー......
    いやー、それにしてもしのぶが数年前に空手をやり始めたって聞いた時はビックリしたよー。格闘技をやるイメージが全然なかったもん」

    「うん。それはよく言われる...」

    「しかもそのやり始めた理由ってのが、東斗の拳のケンジロウに憧れたからっていうね。
    実は、たまに下の階から聞こえてくるんだよね。彼の必殺技を叫ぶしのぶの声が(笑)」


    「!???? き、聞こえていたのあれ!!!?/////」


    先ほどまで冷静沈着だったしのぶの態度が一変して頓狂な声をあげる
    その上、彼の顔には若干の赤らみを帯びているのが目に見える程でよく分かる


    「べ、別に僕はただ単純に強い男になりたかっただけだよ...」

    「またまたぁー。全く素直じゃないなぁー」

    「と、友だけには言われたくない...」

    「それとも他に何か強くなりたい理由があったりするのかな~?」

    「......内緒。」

    「何だよそれー!(笑)」


    そのようなたわいもない話をしながら、俺たち二人は家の奥にある俺の部屋へと入る。

    しかし、俺の部屋に足を踏み入れた瞬間、しのぶの表情が一変する

    「・・・・・な、何これ!?」

    俺の部屋の様子を見たしのぶが絶句した

    「どしたの?」

    しのぶが何故驚きの声を上げたのかよく分からず思わず聞き返す


    「・・・どうしたのじゃないでしょ友っ! 何この部屋っ!」

    しのぶは荒げな声でそう言いながら、自身の人指し指を俺の部屋に指す



    ...あー......
    そういえば俺の部屋はごみ屋敷の如く荒れていたんだっけ......すっかり忘れてた

    ゴミやら生活必需品やら様々な物が無造作にあちらこちらに散らばっている
    真面目で几帳面なしのぶが、傍から観たら異様であるこの光景を見逃すわけが無いのも当然だ


    「友っ!!散らかしたらキレイに片付けないと駄目でしょ!!!」


    「・・・分かってるって。」


    「分かっているならどうして直ぐにやらなかったの!?普通こんなの誰が見たっておかしいって言うよっ!!」


    「・・・・・・」



    ・・・相変わらずうるさいなあ


    俺はしのぶのこういう所が嫌いだ

    今みたいに時々、俺の生活態度についてあれこれ口出しをした上、説教をしてくる

    俺がどう振舞っていようとしのぶには関係ないだろ!!



    だがしかし、これ以上彼にあれこれ言われるのも嫌だし、面倒くさい


    「・・・俺が悪かった。ごめん。片付けるよ。」


    俺はとりあえず彼の機嫌を取るためにしのぶにそう言い放ち、この目の前に広がるゴミ屋敷を掃除し始める


    「・・・仕方ない。僕も手伝うよ。」

    そう言ってしのぶは俺とともに部屋を掃除し始める



    ・・・掃除をしている間に時間が刻々と過ぎていった

    すでに陽は東の山から姿を完全に露にしていた

    時刻はそろそろいつもの登校時間を迎えようとしていた


    「......ふ~疲れたあぁぁあああー
    大分キレイになったなぁ~」

    「そうだね。キレイにすると気持ちいいもんでしょ?」

    「うん。まあね・・・今日は疲れたからもう学校行きたくないや・・・」

    「友、ワガママ言わない。さ、準備するよ。」

    「えー....」


    俺はしのぶに半強制的に学校の準備をさせられ、彼に引きずられるように家を出た



    ------------------------------------------------------




    キーンコーンカーンコーン



    チャイムの音が授業の終わりを告げる

    四時間目の授業が終わり、これから給食の時間だ



    お母さんがオーストリアへ出発してから一ヶ月が過ぎた
    あれからもしのぶとは毎朝一緒に登校している
    しのぶは基本的に無口で寡黙な性格なため、普段は俺から話を振って会話を弾ませていた。しかしここ数日は、一緒に登校しているにもかかわらず、ほとんど言葉を交わしていない。

    仲が悪くなったという訳では決して無く、俺が話す気分になれないのだ
    俺自身が言うのも何だが、その理由は俺もよくわからない
    何故だか......そんな気分になれないのだ
    それは話す時だけに限った事ではない。
    何をするにしてもやる気になれないのだ

    しかし、そのことをしのぶ自身に相談して心配させるわけにもいかない


    ほんと、どうしちゃったんだろなぁ俺......


    そんなしのぶは今教室にいない。
    彼は今週、給食の準備をする当番に当たっているため、今丁度彼は別の部屋でその準備をしているところだ

    俺の学校では「ランチルーム」という大きな部屋で、全校生徒が集まって一斉に昼食を取るのだ。
    そのため、給食当番の子たちは四時間目終了後ランチルームへ急いで移動し、全校生徒や先生方のための給食の準備をしなければならないのだ


    今週、給食当番に当たっていない俺はこの時、教室の自分の席に座りボーッと黒板を眺めていた
    誰とも話をせず、こうした自分一人だけの世界に浸れるというのも、何ともいえないほど心地いいものだ

    しかし、俺がそんな心地よい時間を過ごしている時突然、担任の先生が俺の席に来た。
    一体どうしたのだろうか?

    「森海君ちょっといい?」

    「はぁ...?何でしょうか?」

    先生に連れられて俺は教室の外の廊下に出る


    先生が人気の少ない場所で突然立ち止まったかと思うと、自身の鞄から生徒の名簿が羅列されている紙を取り出して俺に見せた
    その紙の上方には、大きな文字で「宿題」と書かれていた

    その文字の下には表があり、一番左の空欄の中には、上からあいうえお順、男女順で俺のクラスの全生徒の名前が羅列されている
    各生徒の名前の右にある数多くの空欄には○、×、△の記号で埋め尽くされている
    先生が「森海 友」と書かれてある欄を指で指し、そのまま指を右へとゆっくりとなぞってみせた
    先生がなぞっていった部分を目で追うと、初めの方は○、×、時たま△の記号があまり偏りが無く書き記されていた。
    しかし、先生の指をしばらく辿って行くと、ある空欄から○や△の記号が一切見当たらなくなっていた
    その代わりにそこに書き記されていたのは大量の×の記号だけだった



    「森海君、ここ最近、君の宿題の提出状況がよろしくないみたいだけど?一体どうしたの!?」


    どうやら先生は俺のここ数日の宿題の提出状況に目をつけたらしい

    そういえばここ最近全く勉強に手をつけていなかったなぁ...
    もともと勉強は嫌いだったけど、最低限の事は今まではちゃんとやってきたはずなのに...



    「・・・・・・」


    「返事しなさい!君に何があったかは知らないけど、このままじゃ、たとえ学期末のテストで優秀な成績を収めたとしても通知表に影響してくるわよ!」



    ・・・・・・そんなこと分かってる
    分かっているんだよっ!.......だけどっ.....!!


    ・・・・・・

    ・・・・あぁ...っもうっ!!・・・・うるさいなぁっ.....!!
    ・・・・本ッッ当にうるさいっ!!


    だがこのままでは分が悪い

    俺はとりあえず彼女の機嫌を取るために、

    「・・・はい。分かりました。以後気をつけます。ごめんなさい...」

    と、先生にそう謝罪し、深くお辞儀をした


    すると彼女強張った表情が緩み、

    「......分かった。じゃあこれからは頑張るのよっ!
    ......でも、君の家庭の事情は私もよく分かっている。大変だと思うし、辛い事もあるかもしれない。その気持ちは痛いほど分かるよ!
    でも私は森海君にはそこで挫けてしまう子にはなって欲しくないの。
    もし何かあったら私でよかったら相談に乗るから。
    頑張ろうね。森海君っ!」

    と、落ち着いたイントネーションで俺に語りかけた



    ・・・・・・・・・・・



    「はい」


    それは自分でもびっくりするほど虚ろな「はい」だった


    俺の返事を聞いた先生は俺にニコッと微笑みかけ、給食当番の子の手伝いに戻っていった





    ・・・・・・・・



    ・・・・・・・この気持ちは何なんだろう

    怒りや悲しみ、失望、落胆などの様々な情が混ざり合ったこの気持ちは・・・・



    ......何が「気持ちは痛いほど分かるよ」だよ.....


    .......はぁっ???????????????
    ふざけるなッッッ!!!!!!!!!!

    そんな状況に陥ったことのないあんたに何が分かるっ!!!
    偽善者ぶったアンタなんかに俺の気持ちが分かってたまるかよッッ!!!!!!

    クソヤロウ.....クソヤロウッ........クソヤロウッッッッ!!!!!!!!!!!





    ・・・・・・・・・・・






    ・・・大丈夫。


    俺は大丈夫だ。 


    大丈夫。 


    ダイジョウブ。


    ダイジョウブ。 ダイジョウブ。 ダイジョウブ。




    決してこの激情の念を言葉にしないように必死で自分を押し殺しながら俺は教室へと戻る



    教室のドアを開き中に入る

    何事も無かったかのように冷静に振舞いながら教室内をスタスタと歩く
    そして自分の席に座る



    すると今度は別の奴が俺の机へと近づいてきた


    まったくなんだよ...どいつもこいつも・・・・


    そう思いながら顔を上げると、一人のクラスメートの奴が不気味な笑みを浮かべながら机に座った俺を見下ろしていた。

    こいつの名前はリュウ。

    そいつはクラスの中でも悪名高いイジメっ子で、いつも俺を含む他の子に対して嫌がらせをしてくる最低な奴だ。

    そんな奴が今俺の方をじーっと見ている
    この時点で嫌な予感はしていた。

    そしてそいつの口がゆっくりと開く


    「おい森海~!お前さっき先生に宿題の事で怒られていただろ~!
    実は俺さっきこっそり聞いていたんだ~!」

    「!!?? 何だとっ!!」

    「アハハッ 予想通りの反応だっ(笑)
    俺、陰キャラでバカの癖に女子からモテモテのお前が気に入らなかったんだよ!
    そんなお前が謝っている姿、無様だったなァ(笑)」

    「あ゛ッ!??」



    ・・・・・・バカみたい。
    しょうもない。

    こんな奴に付き合っている時点で時間の無駄だよ

    だけど.......そんな奴に熱くなっちゃっている俺もバカみたい
    いつもならこんなやつ相手にしないのに.....
    俺は何やってるんだよっ......


    「それによぉ、さっき先生が言っていた、お前ん家の家庭の事情ってやつ、さっき他の奴から色々聞いたんだけどさぁ、、、
    お前、お父さんいないんだってな!!知らなかったぜっ(笑)」


    !!!???????

    こ、こいつ.....


    「それに、お母さんは今海外に滞在中なんだって? それで今は一人で暮らしているらしいじゃん! あははははっ!まるで天涯孤独みてーじゃん!(笑)」

    「!!?????
    .....う、うるさい!!お前には関係ないだろ!!!」

    「まあまあっ そんな熱くなるなって(笑)」

    「て、てめぇ....!」



    "天涯孤独"

    リュウは俺を罵倒するためだけに何気なく使ったのかもしれない
    だからそこまで気にする必要はなかったのかもしれない
    だけど、今の俺の胸にはその「天涯孤独」という言葉
    言葉が何故か鋭く突き刺さっていた

    そして、自分でも似つかわしくないと思うほど、この時の俺は明らかに冷静さを失っていた


    「それにしてもお前の親も酷いよなァ~ お父さんは妻子を残して一人で逝っちまうし、お母さんはお前をたまに育児放棄しているし(笑)最低だよなァ~!
    お前、実は愛されてなかったんじゃねーの!? あはははははははははっ!」




    プチンッ


    俺の中の何かが切れた音がした

    今まで溜まりに溜まっていた何かが爆発したかのように


    そう思った刹那の間に、俺はとっさに次の行動に移っていた


    ここから先の事は俺もよく覚えていない



    ----------------------------------------------------------


    「はぁ・・・はぁ・・・」

    俺は息を切らしながら、顔を抑え蹲っているリュウを俺はしばらく見下すような目で見つめていた



    「友!!!!!」

    俺はとっさに俺の名を叫ぶ方に顔を向ける


    しのぶだった

    給食当番を終えた彼が教室に戻ってきていたのだ


    「友!!!これは一体どういうこと!??一体何があったの!?」


    彼の言葉で、俺は正気を取り戻す


    あれっ?......俺は何をしたんだろ・・・・?



    ......そういえば、

    何故俺の呼吸はこんなに荒くなっているんだろう?

    何故こいつは鼻血を垂らしながら俺の真下で倒れているんだろう?

    何故クラスメートのみんなは俺の方を見ているのだろう?


    そして、やっとの事で冷静さを取り戻した俺はやっと全てを悟る


    .......そうさっ!!
    俺は俺を罵倒してきたこいつをぶん殴ってやったのさっ!

    全力で殴ってやった

    何度も殴ってやった

    何度も 何度も 何度も 何度も 何度もっ!!!!!


    だが同時に自分がしてしまった事の愚かさに気づく


    ......あぁ......
    ......俺は何て事をしてしまったんだ......こんなつもりじゃなかったのにっ........こんなつもりじゃなかったのにっっ!!!!!


    そして俺は再び正気を失う



    そして次の瞬間俺は教室を飛び出した

    「と、友!!!待って!!!!」


    後ろから俺を呼ぶしのぶの声が聞こえたが、そんなことは気にも留めなかった
    そんな場合じゃなかったのだ

    理由などない

    走った

    俺はとにかく走った


    何も考えず、息を切らしながら、ただひたすらに



    再度正気を取り戻し、気づいた時には俺は学校を飛び出し、いつもの通学路の上を疲れた足を引きずりながら歩いていた


    「友っ!!!!!!」


    誰かが俺の名を叫んだ
    その方向へ振り向くと、しのぶが向こうから全力疾走で走って来るのが見えた


    ・・・相変わらず足が速い
    運動神経の悪い俺は、運動神経抜群の彼にあっという間に追いつかれた


    二人とも息を切らしながらお互いの顔を見つめあう



    「友っ!一体どうしたっていうの!
    リュウをボロボロに殴った上にいきなり学校を飛び出すなんて!!」

    「.........別に。」

    「別にじゃないでしょ!それに、友は自分が何をしでかしたか分かってるの!?
    一方的に人に対して暴力を振るうなんて最低だよ! ちゃんとそういう自覚を持っているの!?」

    「......うるさいな。」

    「....っ!?? う、うるさいってなんだよ!僕がどれだけ君の事を心配してるか分からないくせにっ!!」


    そのしのぶの一言に俺は堪忍袋の緒が切れたように再び怒りを爆発させる


    「うるさいっ!!!!!!!何が君の事を心配してただよっ!!!俺の気持ちなんて少しも理解していないくせにっ!!
    それに何でしのぶはいつもそんなに説教じみているんだよっ!! 一体いつしのぶは俺の指導者になったっ!!! 俺は今までしのぶのそういう所が気に入らなかったんだっ!!大体お前に俺のことなんて関係ないだろ!!! 頼むからもう放っておいてくれよっっ!!!!!!」


    今まで溜まっていた俺のしのぶに対する不満が一気に解き放たれた気がした

    だがそれと同時に、しのぶに「そんなことを言ってしまったことに対して直ぐに後悔の念に襲われる

    ......しまった...な...なんて事を言ってしまったんだ俺はっ!!
    そんなこと言うつもりなんて微塵もなかったのにっ!!!


    一方しのぶは俺の怒鳴りを聞いた瞬間、最初はかなり驚いた顔をしていたが、その後何かを悟ったようにいつもの冷静な表情に戻る

    だがその後、しのぶの顔は今までに見たこともないような鬼の様な形相に徐々に変貌していく
    そして、、、、、、


    「.................
    ........ああ、そう...............

    ...........もう友なんて知らないっ!!!!!!!!!!!! 勝手にすればいいっ!!!!!!!!!!!!!!」


    彼は俺にそう怒鳴って、俺から背を向ける

    「し、しのぶっ!、ま、待ってっ!!」

    俺の呼び止める声も届かないまま、彼は俺の元から学校の方へと足早に去っていった


    俺はしばらくその姿を眺めていた

    彼の小さな体が時間が経つにつれてより小さくなっていく

    しのぶの姿が完全に見えなくなると、まだ授業があるにも関わらず、俺は学校とは真逆の方向にある自分の家へと向かってトボトボと歩き始める。


    家に帰って寝よう


    そして今日のことなんて全て忘れてしまおう


    .....くそっ...しのぶなんて.....しのぶなんて!!!!!!!!!!


    まだしのぶに対し、やるせない思いを抑えきれないまま俺は帰路に着く


    その時の帰路は何故かいつもより長く感じた気がした




    やっと我が家に着いた

    家のドアの鍵を開ける

    ドアを開け、日課の手洗いうがいさえもせずに真っ直ぐ自分の部屋に向かう

    正午の光がカーテンから差し込んでいるだけの薄暗い俺の部屋の中には、まだ読みかけの漫画や、空のお菓子のゴミやペットボトルなどがあちらこちらに散らばっている。


    一ヶ月前にしのぶと一緒にキレイにしたはずの俺の部屋にその面影は全く無かった


    俺は、そこに何もなかったかのようにそれらを通り過ぎ、奥にあるまだ暖かいベッドに体を乗せ、ゆっくりと寝転ぶ。

    そして目を開けたまま、すうっと大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。




    ・・・・・・・・・




    "天涯孤独"


    リュウが今日俺に発したその言葉を思い出す




    お父さんは死んじゃった


    お母さんは生きているけど今は家にいない



    よくよく考えてみれば本当に天涯孤独みたいじゃん




    お母さんは何で家に帰ってこないんだろう

    仕事の都合とはいえ、何でいつも俺を置いてどこかに行っちゃうんだろう


    ...俺なんかより仕事のほうが大事なんだろうなきっと....


    ...もしかしたらリュウが言っていたように本当は俺の事なんかどうでもいいんじゃないか...?


    ...俺なんかいない方がお母さんも気が楽になっていいんじゃないか...!??



    俺なんて生まれてこないほうが良かったんじゃないかっ!!!!!???????




    ・・・・・・・




    何も考えたくない




    ・・・・・・・



    何も考えるな

    何も考えるな


    大丈夫。大丈夫だ。


    大丈夫さ・・・・・

    きっと大丈夫さ・・・・・


    ・・・・・・・



    ・・・嘘付け・・・



    ・・・全然大丈夫なんかじゃないじゃん俺・・・・・・



    瞼から熱いものがこみ上げてくる


    そして目から大粒の雫がこぼれ落ちた


    ・・・・・・っ......!!


    「・・・お父さんっ....何で死んじゃったんだよぅ....」



    暗い部屋の中、俺はただベッドの上で枕に顔を当て、蹲ることしか出来ずにいた。




    ---------------------------------------------------------



    あの日から一週間が経った

    俺は不登校になった

    あれから俺は一度も学校に行っていない

    あれからしのぶは一度も俺の家に迎えに来ない

    あれから毎朝ほぼ同じ時刻に家の電話が鳴る
    恐らく学校からかかってくるものだろう
    俺は毎朝それを聞いて聞かぬフリをする


    俺の部屋はよりいっそう汚くなっていった

    そろそろ目に余るほどの酷さになってきたが、今更片付ける気にもなれなかった

    自炊をする気にもなれず、ここ最近はインスタント食品を食べてやり過ごしている


    一日中家の中で暮らすという生活は大変退屈なものであった

    ただ好きなテレビ番組を見て、好きな漫画を見て、食べて、好きな音楽を聴いて、ネットサーフィンして、オナニーしてそのまま寝るだけの生活だ


    初めのうちは楽しいものだったが一週間もそんな生活をすると流石に飽きてくる。



    ・・・・今日は晴れていることだし、気分転換に久しぶりに外に出てみるか


    そう思い立った俺は、未だに放心状態ながらも、まず洗面所へ向かい顔を洗い歯を磨く。

    それから着ていたパジャマを脱ぎ捨て、服とズボンに着替える。

    ある程度のお金を詰め込んだ財布を鞄に入れ玄関に向かう

    そしてお気に入りの靴を履き、外の世界への扉を開ける


    まず俺は、長くなった髪の毛を切りに行きつけの美容室へ向かう


    「今日はどうされますか?」と聞かれた。
    今日はどのように切ってもらおうか考えていると、店の中に張られていた"カラーリング&カット"の文字が書かれているビラがたまたま俺の目に留まった



    ・・・・・これにするか



    「じゃあ、あまり髪の毛の長さを変えずに、金髪にカラーリングしてください」



    特に理由があってそうしたわけでもない。

    ただ、なんとなく。

    完成した新たな自分を鏡で見つめる

    さっきまでの黒髪の俺はそこにはどこにもいなかった


    今日からこれが俺だ。


    なんだか、姿だけではなく内面まで変化したみたいだ
    心機一転した気がしてなんだか嬉しかった



    ・・・・・・さて、次はどこへ向かおうか

    無計画のまま縦横無尽に町の中をゆっくりと歩き回る



    ・・・・・・


    ・・・・・・あれ???ここどこだっけ??

    いつの間にか、今まで見たことのない場所に来ていた

    ・・・どうやら俺は知らぬ間に道に迷ってしまっていたようだ


    そこで俺は携帯を開き、内蔵されている地図機能で自分の現在地を確認しながら歩く



    すると突然・・・


    ---------ドンッ


    俺の右肩辺りに前方からの衝撃が加わった

    俺はバランスを崩し地面に倒れる


    「痛っ!」

    右ひざに焼けたような痛みが走る


    足を擦り剥いてしまったようだ


    「き、君大丈夫!??」

    俺はその声のする方へと顔を向ける


    そこには20代くらいの男の人がいて、しゃがみながら俺に手を差し伸べていた

    どうやら俺は、携帯に集中しすぎて前方から歩いてきた人にぶつかってしまったようだ


    「は、はい。大丈夫です...」

    「君全然大丈夫じゃないじゃないか!足を擦り剥いているよ!」

    そう言ってそのお兄さんは近くにあったベンチに俺を座らせた

    そしてその男性は自身の鞄から消毒液と絆創膏をとりだす。



    「よしっ。これでもう大丈夫!いやー本当に悪かったねボク」

    「いえいえ。こちらこそ前方不注意でぶつかってしまい、すいませんでした。」


    その人はケントっていう名前らしい。
    この付近に住んでいる会社員の方らしい

    俺はこの後特に具体的な予定があるわけでもなかったから、しばらくケントさんとたわいも無い話で盛り上がったりしていた。



    いろんな事を話してみて、なんだかすごく優しそうで温かみのある人柄だなあという印象を俺は持ちはじめた


    「ふ~ん。なるほど~そうなんだ~(笑)
    ・・・・あれ?そういえば今日って平日だよね?学校はどうしたの??」


    「・・・・・・・・」


    俺の顔が深刻そうにみえたのか、


    「俺でよければ話を聞くよ」


    と、より親身になってそう言ってくれた



    この人なら俺の事を理解してくれるかも知れない


    「じ、実は・・・・・」



    俺はケントさんに一週間前の学校での出来事、そして両親の事について全てを話した



    ------------------------------------




    「・・・・・ということがあったんです。」


    そう話し終えた。


    すると突然、
    その刹那の間に自分の体に何か覆いかぶさるような強い衝撃を感じた



    ケントさんが、俺の体を強く抱きしめていたんだ


    「・・・えっ?お、お兄さん?」


    突然の出来事に俺は動揺を隠せない

    しかし同時に俺はその温もりに浸り始めていた


    「そんな辛い事があったんだね・・・・君は本当によく我慢したよ。
    でも大丈夫。これからは俺が君を守ってあげる。」


    ・・・・・・

    ・・・・幸せだ。
    自分の事をこんな風に思ってくれている人がいるなんて。

    このままずっとこうしていたい。
    もっとケントさんに抱きしめてもらいたい。



    俺はそっと自分の顔をケントさんの胸に寄せ、蹲る。


    すると突然ケントさんが、

    「・・・・・・ちょっとここでこうしているのもなんだし・・・場所変える???」

    と言ってきた


    この時点で彼の言いたいことは大方察した


    俺は彼の胸の中でそっと小さく首を縦に動かし、それに従う



    ケントさんについていき、辿り着いた場所は近くのホテルだった

    そこに従業員はおらず、ケントさんが券売機のような物で手続きを済ませる

    そして俺たち二人は奥にある一室へと入っていった


    ---------------


    シャワーを浴び、タオルで体全体をきれいに拭き、くしで髪をとかし、ドライヤーで髪を乾かす

    部屋でケントさんが待っている。急がなきゃ。


    腰にタオルを巻いて俺は部屋へと戻る

    彼は部屋の中にあるベッドに腰をかけたまま待っていた。

    彼は何も言わずに俺をそっと抱きしめる


    ・・・暖かい

    こんなに人のぬくもりを感じたのはいつ振りだろうか


    なんだか・・・・すごく懐かしい感覚だ





    ・・・・・・・・・





    ・・・・・お父さんっ・・・・






    グスッ



    自然と涙がこぼれる



    「どうしたの?大丈夫?」

    「ううん。大丈夫だよ。ちょっとお父さんの事を思い出しちゃって・・・」

    「そっか・・・」


    それから彼は俺にいろんな行為をしてくれた


    それだけでも俺は愛されている気がした


    そして彼が俺にしてくれたように、俺も彼に同じ事をする


    その後俺は彼に突かれて散々喘いだ


    それだけでも俺は愛されている気がした


    二人の鼓動が脈を打つ


    「ケントさん・・・」


    「うん?」



    「・・・・・俺の事・・・好き・・・?」



    「ああ。もちろん大好きだよ。」



    それの回答が聞けただけでも、

    俺は幸せだった。



    俺は本当に幸せだった。



    ---------------------------------------------------------



    数日後




    今日も俺は学校に行かなかった

    その代わり、今日の夕方からケントさんと映画を観に行く約束をした


    待ち合わせの時間まではまだ大分時間があるが、予定より早く準備が出来たため、今から家を出発しようと思っている所だ。



    玄関のドアを開け、マンションの三階から階段を軽快なステップで駆け下りる。


    しかし、二階へと差し掛かった瞬間に、偶然、予想だにしなかった人物と遭遇する。



    しのぶだった。

    彼は丁度学校から帰宅したところだったのだろうか

    「あっ......しのぶ...」

    声をかけたのは俺の方からだった

    俺は自分でもびっくりするほど弱々しい声で話しかけていた

    「友。久しぶり。元気にしてた....?」

    「うん。まあ一応...」

    「髪の毛、染めたんだね」

    「うん....まあ一応...」

    「随分と元気に階段を降りてきたもんだね。これからどこかに外出?」

    「うん。...映画を見に行くんだ」

    「一人で?」

    「いや、最近知り合ったの男性の方と」


    「さ、最近知り合った男性の方.....?」


    しまった...思わず正直に口を滑らしてしまった...

    こんなこと言ったらどうせまた色々と質問攻めをされた挙句しつこく説教されるに違いない

    それにもう、、、しのぶには何も心配かけたくなかったし


    そう思って俺は戦々恐々していた

    しかし、彼の返事は意外なものだった

    「あ、そう。じゃあ楽しんできて。」


    その中身の無い返事を聞いて俺は若干拍子抜けしてしまった


    俺は何も言わずにその場を去る


    しのぶがあんな返事をするなんて・・・


    もう、俺の事なんてどうでもよくなちゃったのかな・・・・



    道中であれこれ雑念を抱いてしまう俺




    ・・・・・・・・




    ・・・・よくよく考えてみれば、

    俺今までずっとしのぶに支えられてきたんだな・・・



    お母さんがいないとき、同い年ながらもいつも俺の面倒を見てくれたのは、紛れもなく、しのぶだった。


    よく頻繁に俺の家に遊びに来てもくれたし、

    俺が何か過ちを犯したときにはいつも俺を叱ってくれた


    感謝しても仕切れないくらいだよ



    なのに俺、、、この前しのぶにあんな酷いこと言っちゃった・・・


    なんで俺は今まで気づかなかったんだろ


    「大切なものは無くなってから気づく」というどこかで聞いたことがあるフレーズを思い出す。

    そして、今更どうにもならない事を今になって後悔する




    ・・・・今度あったら素直に謝ろう


    ・・・・・・いや、もう無理かな・・・
    たぶん嫌われちゃっただろうし・・・




    ・・・・・・



    .....べ、別にいいやっ...しのぶがいなくたって俺にはケントさんがいる!
    だから何も怖くない!もう俺は一人じゃない!!



    そう自分を無理やり鼓舞しながら俺は映画館へと向かう



    ----------------------------------------------------------



    待ち合わせ時間より30分早めに着いてしまった

    やっぱりまだケントさん来ていないや・・・

    あと30分どうやって時間をつぶそうか・・・

    ・・・・暇つぶしにこのあたりを散策でもするか


    そう思って俺はぶらぶらと再び歩き始める。





    俺はいつの間にか、建物と建物の間の、日が当たらない人気の無い場所を歩いていた


    すると聞き覚えのある話し声が聞こえてきた

    この声はもしかして....!


    俺はその会話主を確かめるべく物陰に隠れ、そっとその人の顔を覗く



    け、ケントさんだあああああ!


    再び会えたことに対して俺の心は喜びの気持ちでいっぱいだった



    しかし、以前の彼とはどこか雰囲気が違う

    右手にタバコを持ち、左手に携帯を持ちながらゲラゲラと大きな声で話す姿は、前回会った時の彼とはまるで別人みたいだった

    一体何を話しているんだろう??


    俺はそっとその内容に耳を傾ける



    「・・・それでさァー、そのショタにたまたまぶつかちゃった後に応急手当してあげたらさァ、なんとそいつがなついてきたんだよ! なんてツイてる事かっ!(笑)
    んでその後に、そいつが親や学校の事で色々と抱えていたもんだから、ちょっと優しくしてあげたら見事にホイホイ釣れちゃってさ!! あははははは(笑)」




    ・・・・・え?



    ぶつかった?

    応急手当?

    親や学校の事で色々と抱えていた??



    これもしかして・・・・・・・俺の話???



    さらに彼の話は続く



    「んでさ、そん時の映像があるからよ、もし良かったら高値で買い取ってやってもいいぞ(笑)それかこの映像をどこかに売りさばくのもいいかもな!こりゃー儲けもんだぜ!(笑)」


    !???????????


    映像???売りさばく????


    ど、どういうこと.....???



    混乱していた俺はまだこの人の言っている意味がよく解らなかった


    頭を落ち着かせ、一つ一つを冷静に整理しなおす


    やがて俺は全てを悟り、この人に対して深い失望と怒り、そして深い悲しみの情が湧き上がってきた


    「今日もさァ、これからそいつと映画見に行くんだけどさァ、その後にまた誘ってヤる予定だからよ、うまく撮れたらついでにそれも見せてやるよっ あははっ(笑)
    じゃーなーっ楽しみにしてなー(笑)」


    彼は携帯電話を耳元から離した



    どうやら彼の通話が終わったみたいだ


    その瞬間、俺は隠れていた場所から起立し、自ら彼の前に無言で姿を現した


    「!!????
    や、やあ友くんじゃないかっ!ずいぶんと早い到着だねっっ!」


    さっきの話が俺に聞こえていたかもしれないと彼は思ったのであろうか?

    俺の姿を見た瞬間、不自然すぎるくらいおどけた声を上げる



    「ケントさん。さっきの通話の話、まる聞こえだったよ。
    とりあえず聞きたいことは山ほどあるんだけど........

    ......どういうことなんだよっ!!!!!!ちゃんと説明しろよ!!!!!!!!!!」


    俺が彼に向かって怒鳴ったその瞬間、彼はとっさに俺の首をつかみ、俺の口を手で封じた


    「・・・ッッ!!!!」


    「・・・・うるさいなー。静かにしろよこのガキ...周りに聞こえちまうだろーが...


    なぁ友くん。君の言いたいことはよーくわかるよ。
    要するに僕の君への愛情は嘘だったんじゃないかって事だろ???

    あはははははっ! その通りだよ!!!!!!出会ったときから最初ッから体目当てだったんだよ!!
    まんまと俺の作戦に引っかかってくれて有り難うっ!!!!
    まあ最初にお前が俺にぶつかってくれたのがきっかけだったがな(笑)」



    !!!!!!!!!!


    ・・・・・・・


    何だろうこの気持ちは・・・・・


    様々な負の感情が湧き上がりすぎて言葉に出来ない


    それに、、、、、



    俺は・・・・・・愛されていなかったんだな・・・




    「後は、金目当てかな。」

    そう言うと彼は自身の鞄の中から撮影用カメラを取り出した


    「実は前回ホテルに行った際に、君がシャワーを浴びている時にこっそり部屋に仕掛けて置いたんだよ。これが何を意味するか分かるよね.....?」


    「・・・ッッ!!!?????」


    「あーあ。ホントは映画を見た後に、良いムードにさせてまたホテルに誘うつもりだったのになぁー
    だがバレてしまった以上仕方が無い。作戦変更だな。
    今から俺と一緒にホテルに来い! さもなくばこの映像をネット上にばら撒く!!」


    「な、なんだと!???
    ふ、ふざけるな!! け、警察に通報するぞ!!」


    「いいのかな~そんなことしちゃって。もし警察に通報したら、俺みたいな見知らぬ男性と性的な関係を持ったことが、少なくとも君の友達、学校、そして海外のお母さんにも知られちゃうかもね~
    みんながそれを聞いたら一体どう思うんだろうね? 君の居場所、無くなっちゃうかもよ?(笑) あはははははっ!」

    「く、くそっ!!!」

    俺はケントに殴りにかかろうとした


    「おっとぉ!」


    俺の殴りをケントが軽々しく素手で受け止める

    そして次の瞬間、
    ケントの鋭い膝蹴りが俺のみぞおちに食らわす

    「うぐっあああっ!!」

    激しい痛みが体の神経を駆け巡る

    あまりの痛みに俺は地面に蹲ってしまった。


    「バカだなあ...! 子供が大人に勝てるわけ無いじゃん!!(笑)」


    激しい痛みのためか、視界がぐらつくような錯覚に陥ってきた

    く、苦しいっ.......


    「あきらめろっ! もうお前は俺に付いてくるしかないんだよっ!」


    ・・・・・・・


    ・・・あはは。まじかよ.....

    どの選択肢をとっても俺の人生終わりじゃん....

    もうどうすることも出来ないのか.....



    光が見えないほどのどん底に叩き落されたような気分だった


    あははは......もう....泣く気にもなれないや......



    次の瞬間、
    ケントの手が俺の胸グラを掴み、俺は無理やり起き上がらせられる


    だ、だれか.....助けて......


    ・・・・・・



    ...あれ....でも.....

    お父さんは死んじゃったし....

    お母さんは海外だし....

    しのぶは俺の事嫌いだし....

    学校のみんなは......



    あはははははっ....来るわけ無いか....



    そうじゃん.....俺には誰もいないじゃん....



    ・・・・・・・・



    もう....どうでもいいや....



    「さあ、おとなしく着いて来てもらおうか!!」


    既にもうどうでもよくなった俺は、意識が遠のいていく中、ケントのその声に応じようとしていた





    その時、




    「待てえええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!」



    !!?????



    いきなり第三者の声が響き渡った



    「友を放せっっ!!!!!!!友を傷つける奴は僕が絶対に許さないっっ!!!!!」



    朦朧とした意識の中俺はゆっくりとその声の方へと顔を向ける


    そしてその人の姿を見ようと懸命に目を開ける



    その姿を見た瞬間、俺の目から大量の雫が零れ落ちた


    それは俺の全ての感情が溢れ出るかのように溢れ出して、それは一向に止まる気配を見せない


    息を切らしながら必死で俺に向けてそう叫んだ彼



    ど、どうしてっっ・・・・・・

    どうして彼がここにっ・・・・

    どうして彼が俺なんかのためにっ・・・・



    そして俺の全ての思いを込め、嗚咽をあげながら彼の名前を全力で叫ぶ








    「しのぶううううううううううううううっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!」




    正義のヒーローの如く現れたしのぶの姿を見たケントが不快そうな声を上げる


    「君は友君の友達かぁ~?
    申し訳ないんだけど僕らは二人で大事な話をしているんだ。
    だから邪魔しないんで欲しいんだけどぉ!」

    「小学生をボロボロにした挙句胸グラを掴む事が大事な話なんですか?」

    「うるさい! とにかく君には関係ない。早く帰れ!!」

    「関係なくない!!
    お兄さん、いい加減友を放さないと、、、倒すよ?」

    「倒す!??? 君何言ってんの(笑)(笑)(笑)
    子供が大人に勝てるわけ無いでしょ!(笑)」

    「しのぶ、無茶だ! やめろおお!!」



    「友、大丈夫。心配しないで。僕が今すぐ助けるから。」


    しのぶはそう言って俺に微かに微笑みかける


    するとその刹那の間にしのぶはケントの真下にすばやく移動した

    「!!!???? こ、こいつっっ!!」

    そして、しのぶの小さい体からは想像もつかないような鋭い正拳突きをケントに食らわせる

    -----ズンッッ

    「ぐはああっっ!!」


    しのぶの鋭い突きによって、鈍い音と共にケントがうめき声を上げた


    す、すごい.....っ!!


    しのぶの空手の実力はよく耳にしていた

    県の大会で優勝を収めたという話も聞いたことがある

    しかしその実力を目の当たりにしたのは今回が初めてだった

    さっきの突きは素人の俺でも凄さが伝わってくるほどだった


    そしてさらにしのぶはそのまま大きく飛び上がり、ケントの後頭部に今度は強烈な回し蹴りを食らわせる

    「痛あああっ!!!」

    あまりの痛みと衝撃にケントは頭を抱え込み、地面に転げ落ちる。

    俺の胸グラを掴んでいたケントの手が離れた
    その瞬間に俺はとっさに彼の元から離れる

    そして俺は、俺の弱みがたっぷり詰まっているその撮影用カメラを彼から奪い取り、地面に叩きつけた上、粉々に踏み潰した


    よしっ!これでもう大丈夫だっ!!


    「!!!!??????
    き、きさまああああああああああああああ!!! よくもおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


    その一部始終を見ていたケントは、怒りの雄叫びを上げた

    そしてその矛先が、カメラをぶち壊した俺へと向く


    ケントは大きな握りこぶしを片手に、勢いよく俺に襲い掛かってきた


    よ、避けられないっっ!!!


    俺は必死で顔を伏せることしか出来なかった


    「と、友!!危ないっ!!!」




    -------バシッ!!!



    ・・・・・・


    ・・・・・あれ・・・? 当たっていないぞ・・・?


    奴のパンチは確かに俺の方を向いていたはずなのに...


    俺は伏せていた顔を恐る恐る上げる


    そこには衝撃の光景が広がっていた


    そのパンチで倒れこんだのは俺ではなかった



    しのぶだった


    「し、しのぶっっ!!!!!! 何してるんだよお前っっ!!! 何で俺なんか庇ってんだよっ!!!」

    彼は、俺が受けるはずだったパンチを自らを犠牲にして俺の代わりに受けていたのだ



    「........と、友はっ、、、、、、、、、僕が守るっっっ!!!!!!!」


    彼は傷つきながらも、そう叫ぶと同時にもう一度立ち上がった



    ....し、しのぶっ.......



    今確信できるのは、彼が、他の誰でもなく、

    俺を守ってくれているという事

    俺のために危険を顧みず闘ってくれているという事

    俺の事を本気で思ってくれているという事

    それだけで俺は嬉しかった




    俺は弱い。


    しのぶみたいに強くない。闘えない。

    そんな守られてばかりで何も出来ない自分に腹が立つ


    ......でも、そんな自分に今出来ること

    それは今俺の目の前にいるしのぶを応援してあげることだった


    俺は自分の全精力を振り絞りながら叫ぶ



    「しのぶうううううううううううううううううううううううっっ!!!!
    頑張れええええええええええええええええええええええっっ!!!!」


    俺のその叫びに反応したかのようにしのぶは、最後の力を振り絞って飛び上がる

    そして彼の最後の渾身のパンチをケントの顔面に打ち込む



    「ぐおおおおおっっ!?」


    ケントの体は大きく揺らぎ、再び彼は地面に倒れこんだ


    「....やっ....やったぁしのぶっっ!!!!」



    しばらくしてから、しのぶに敗れたケントは、

    「くそっっ!!! お前ら覚えていやがれっっ!!!」

    そう叫んでそのまま走って去っていった。



    彼が去っていったあと、俺の足は自然としのぶの方へと運んでいった


    そして、俺は彼の体を思いっきり抱きしめた


    「しのぶっっ!!!!ありがとうっっ!!!本当にありがとうっっ!!!」


    「と、友.......苦しい....
    でも......本当に良かった.....」


    しのぶに再び会えて安心したのか、難が去って緊張が解けて安心したのか、
    俺がその時再び嗚咽をあげていたというのは言うまでもない



    -----------------------------------------


    「それにしてもしのぶはよくこの場所が分かったねー」


    「・・・・・・・・・・

    ...友ごめん...
    実は僕、、、さっき友とマンションで別れた後、友の話を不審に思ってこっそり後を付けてきたんだ。でも途中で友を見失っちゃって、、、だからここに助けに来るのも少し遅れちゃったんだっ......本当にごめん!!
    それに......本当は僕がマンションでその話を聞いた時点で友を留まらせれば良かったんだ....もしそうしていれば友を傷つけずに済んだかもしれないのにっ.....!
    .....だけど、以前友が学校を飛び出した日に喧嘩した事を思い出しちゃって......そういう忠告だとか説教をするような事は今の友にとって良くないことだって思っちゃったんだ.....
    友!!本当にごめんなさいっ!!」



    ・・・・・・何でお前が謝ってんだよ・・・・・謝らなきゃいけないのは俺の方だってのにっ!!!


    「......何でしのぶが謝るのさ!!!!悪いのは全部俺だよっ!!!
    だってっ......だって俺はっっ.......!!!」



    俺は気持ちを抑えきれなくなって、しのぶに全てを話した


    今までずっと両親の事で悩んでいた事

    学校で嫌なことが重なった結果リュウを殴ってしまった事

    しのぶに嫌われたと思っていた事

    温もりが欲しかった故にケントと体の関係を持ってしまった事

    その際に動画を撮られ、不特定多数にばら撒かれそうになった事

    そして、
    自分は孤独な人間だと思っていた事
    自分に生きている価値などないと思っていた事


    その後何を言われようとそんなことは既にどうでも良かった
    別にまたいつものように説教されてもいい
    ただ俺はしのぶに話さずにはいられなくなったのだ


    俺は一つ一つをゆっくりと思い出しながら段階的に話していった
    人に説明するのが苦手な俺の話は、きっとどこかあいまいで、決して分かりやすいとはいえないものだったであろう。


    しかし、俺が全てを話し終える頃、今までそれを黙って聞いていたしのぶから鼻を何度もすする音が聞こえた

    すると次の瞬間、しのぶは俺の体を彼の方へ引き寄せ、自身の小さな腕を俺の背中へと回した。

    「ちょっ..!? し、しのぶっ!??」


    ・・・・・・これはデジャヴか?

    以前にもこのような事があったような気がする


    ・・・そうだ、ケントだ。
    ケントと初めて会った日に彼にこのようにされた記憶がある
    でも、今回のしのぶのこれは、
    偽りなんかじゃないと確信できる
    しのぶのそれは強く、優しくて、そしてすごく温かい....
    それは俺だからこそ分かるものだったのかもしれない



    突然の出来事に俺は驚きを隠せない


    「友.....そんなに沢山の辛い事.....ずっと一人で全部抱えていたの....?」


    「・・・・・・」


    彼の声は次第に嗚咽が混じるようになっていき、彼の瞳からは熱いものがキラリと光るのが見えた。


    「友、ごめんねっ....本当にごめんねっ...僕がもっと早く気づいてあげればよかった....それなのに僕っ......友の辛い気持ちなんて分かりもせずに、いつも友に説教じみた事ばかり言ってしまってた....それが友の為なんだとずっと思ってた......
    でも実際、僕は君に何もしてあげられなかったんだっっ!!むしろ僕は余計に君を苦しめていたんだっ!.....
    ごめん!ごめんね友っ!!本当にごめんねっ!!!」


    「何言ってんのさしのぶ......実際君はいつも俺を助けてくれたじゃん...」


    しのぶが泣きながら何度も俺に謝っているのを見て、俺はいたたまれない気持ちになり、いつの間にかもらい泣きをしてしまっていた。
    俺はしのぶと共に再び嗚咽を上げながら話していたんだ


    「でもね友っ...これだけは言っておきたい...
    ......何でも一人で抱え込まないでよっ!!! どーせ友のことだから、人に迷惑をかけたくないからとでも思っていたんでしょっ!
    言っておくけどっ、僕は友が辛そうにしている顔を見るのが一番辛いんだよっ!!
    友は僕にいくら迷惑かけてもらってもかまわないっ!!
    だから何でも僕に話してよっ!楽しいことも辛いことも悲しいこともっ!
    友は決して一人なんかじゃないっ! 友には僕がついてるっ!

    僕が友の生きる証になってみせるよっ!!!」



    し、しのぶっ...........



    ・・・・・・・



    何故だろう


    何故彼は今まで俺がずっと望んでいたであろう、欲していたであろうそんな言葉をかけてくれるのか

    そして、何故彼はその言葉を俺なんかのためにかけてくれるのか



    ・・・でも、今の俺にとってそんな解答など今更どうでもよかった


    俺は間違っていた
    一人で悩む必要など何処にもなかったんだ

    それに、
    俺は一人じゃなかった
    今まで近すぎて気づかなかった大切な存在がずっとそばにいたんだ

    喜びも悲しみもしのぶと共に分かち合っていく事
    これが俺の取るべき最良の選択だったのだ

    そして、徐々に込み上げてくる彼への感謝の気持ちが言葉になって表れる


    「・・・しのぶ、ありがとうっ! こんな俺で良ければ...これからもよろしくねっ!」

    「・・・何を今更...(笑) 僕たち親友でしょ。そんなの当たり前だよ。

    ・・・・・・・・・・・・これからもよろしくねっ。友っ。」


    俺たちはその後、談笑を交わしながら彼らの住むマンションへと帰宅していった




    その日、
    突如目の前に現れた小さくて大きなヒーローに、俺は救われたんだ




    ------------------------------------------------------




    彼が俺の心情を察してくれたのだろうか、
    その日、しのぶが俺の家に泊まりに来ることになった

    二人がマンションに着いたころには既に外は真っ暗になっていた

    俺たちが家に着いたとき、何故か家の中が明るかった

    不審に思った俺は恐る恐る玄関のドアを開け、中に入る

    すると中からは思いもよらない、そして懐かしい人が現れた



    ・・・・・・お母さんだった。


    俺の姿を見た彼女は、後ろにしのぶがいるにもかかわらず、何も言わずに帰ってきたばかりの俺を強く抱きしめた

    彼女は俺を抱きしめながら、何度も「ごめんね、友」を繰り返し、泣き叫んだ

    俺は暫くの間、彼女の懐かしく、そして暖かな温もりにしばらく浸っていた

    それにしても、何故お母さんが家にいるのだろうか?
    まだオーストリアでの演奏会の日程は全て終わっていないはずだ

    理由を尋ねると、どうやら学校の担任の先生から、オーストリアにいるお母さんの元に直接電話があったらしく、その内容を聞いたお母さんがまだ公演期間中だったにもかかわらず、オーストリアから一時的に急いで飛んで帰ってきたらしい
    どうやら先生はここ最近の俺の心情を察してくれていたらしく、お母さんに俺の事について相談してくれたらしい

    その夜俺は、しのぶも交えて久しぶりに母と夕食をとり、三人で様々な談笑を交わしながら、有意義で温かな楽しいひと時を過ごした


    ------------------------------------------------------------



    その日の夜



    俺としのぶは風呂に入り、パジャマに着替え、歯を磨き、俺の部屋で就寝しようとしていた

    俺は自分のベッドで、
    しのぶは俺のベッドの隣に布団を敷いて寝ようとしていた所だった




    「・・・・・ねえ、しのぶ・・・・」

    「・・・・ん?友どうした?」


    「・・・・・俺さ、お父さんが死んじゃってから、すごく悲しかったけど、それを乗り越えて強く生きなっきゃって思ってた。お母さんを守れるような強い男にならなきゃって思ってた。
    お母さんも仕事の関係で家にいなくなることが多いから、自分の事は何もかも自分でやれるようにならなきゃって思ってた。
    そのおかげで料理も洗濯も、家のことは全部自分で出来るようになった。
    だからもう俺は、心配ないって。全部自分で出来るんだって。お母さんもそんな俺を見て、安心して海外に行けるようになったらしくて、、、俺はそんな自分が誇らしかった。

    ・・・・・・でも


    ・・・・・・やっぱり俺は弱かった。
    一人が嫌い。一人が怖い。誰かがそばにいてほしい。本当は誰かに甘えたい。
    家に帰ってきた時、一人でこの暗い部屋にたどり着いてベッドに寝転ぶ、
    そんな瞬間が大嫌いだった。

    ・・・・・・でも
    そんな時いつもそばにいてくれたのはしのぶ、君だった」


    「・・・友っ・・・・・・」


    「・・・君は、毎朝俺の家まで俺をわざわざ迎えに来てくれた。
    君は、毎日俺の話し相手になってくれた。
    君は、俺が勉強に困っているときにはいつも優しく教えてくれた
    君は、俺が喜んでいるときにはいつも優しく微笑んでくれた
    君は、俺が過ちを犯したときにはいつも本気で怒ってくれた
    君は、俺が悲しんでいるときにはいつも親身になって一緒に悲しんでくれた

    ・・・・・・全部、しのぶだったんだ


    ・・・・・・・


    ・・・その、・・・・しのぶっ・・・・・・・



    ・・・・そ、そっちに行ってもいいかな・・・・?」


    「・・・・・うん・・・・」



    今俺の部屋を映しているのは、カーテンの隙間から差し込んでいる淡い月の光だけだった
    俺はそれだけを頼りに、今隣の布団で横になっているしのぶの存在を確認する
    そして、自分のベットから出し、しのぶが横になっている布団に身を寄せ、中に入る





    ・・・・・・


    俺たちはしばらく無言のまま暗闇の中、お互いの顔を見つめあう
    今まであまり気に留めていなかったが、こういう状況になってみて初めて彼の美しさに改めて気が付いた気がする
    月夜に照らされている彼の顔は、今までに見たことないほど綺麗だった


    「・・・し、・・しのぶっ・・・・・そ、そのっ・・・・・」



    次の瞬間、



    ----------ギュッ


    !??


    俺はしのぶに強く抱きしめられた



    「友.....こうしたらあたたかい......? 寂しくない......?」


    「・・・・う、うんっ//////」


    「そっか......よかった....」



    ・・・・・・・・・


    「.....あの.....しのぶ.....」


    「....ん?...なに?」


    「......今日は.....き、今日だけだからっ.....
    ......ず、ずっとこうしていてもいいかな.....?」


    「.....うん....いいよっ....」


    「.....ありがと....しのぶっ....
    すごくあったかいよ....
    もう.....俺は...寂しく....なんか....ない...やっ............」




    ・・・・・・・・・・



    ・・・・・・・・・・





    「..............おやすみっ.........友っ..........」









    次の日の朝、お母さんはオーストリアへとんぼ帰りしていった

    そして俺は、しばらく休んでいた小学校に再び行くことに決めた
    しのぶと二人で朝ごはんを食べた後、久々に二人で登校した

    久しぶりの学校に着くと、悪口を言ってきたリュウが俺に謝ってきた
    俺も彼を殴ってしまったことを彼に謝罪した

    宿題も今まで通り(大体)提出するようになった
    先生も元気を取り戻した俺を見て安心したようだ



    そして俺は今までどおりの生活に戻ろうとしていた




    -----------------------------------------------



    二年後





    「友っ!!!!!!!!まだ寝てるの!?
    早くしないと学校に遅れちゃうよっ!!!」



    スマートフォン越しにしのぶの怒鳴り声が鳴り響く


    「は、はいいいいっ!かしこかしこまりましたかしこおおおおっ~!!!!!」



    俺は飛び起き、急いで学校の支度をする



    俺は中学二年生になった

    今はしのぶと一緒に御咲学園という男子校に在学している
    友達も沢山でき、愉快な仲間たちに囲まれて幸せな日々を送っているところだ

    今もお母さんは仕事で家に居ない時が多いけど、もう大丈夫。
    俺にはしのぶもいるし、みんなもいる
    そんな大切な仲間たちがいるから、俺はもう寂しくなんてない


    しのぶ曰く、「友は昔と比べて本当に明るくなった」らしい(笑)
    昔の俺ってどんなんだったっけ?(笑)
    えへへっ でもなんか嬉しいな♪



    小学生の時と比べて道のりは遠くなれど、今日も俺はしのぶと一緒に登校する



    「.....あっ」


    歩いている途中俺は何かを思い出したように立ち止まる


    「...どうしたの友?」

    「.....ちょっと寄っていきたい所があるんだ....しのぶも来る?」


    俺はしのぶをつれてある場所へ向かう



    「......そっか......今日はその日だったね」


    「.....うん」


    目の前に佇む大きな墓に水を注ぎ、菊の花を添える

    そして、俺としのぶの二人は手を合わせ、目を閉じ、祈る


    その瞬間、爽やかなそよ風がすーっと僕らの前を心地よく通り抜ける


    ・・・・・・・



    「・・・・・さっ、行こっか。しのぶっ」


    「・・・・・うんっ」


    俺たちはその場を去り、足早に学校へと向かう





    ・・・・・・・・・・・・・・





    ・・・・・・俺は今幸せだよっ



    ・・・・・・ちゃんと見ててくれてる......?







    ・・・・・・ねっ?・・・・・・お父さんっ




    ----------------SCHOOL BOYS外伝 ~友 過去編~

    ----------------END.






    友くんの過去編という
    本編ではまだ明かされていない部分を
    蒼くんオリジナルで描いてくださいました!
    やさすぐれ友くん…。
    …それはそれでいいですね♪

    それにしても
    本編の中でもあまり素材がない中
    ここまでのお話を作り上げるなんて
    本当に凄いと思いました!

    蒼くん
    素敵な小説をどうもありがとうございましたっ!!!


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